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シルヴィア (2003)

SYLVIA

監督
クリスティン・ジェフズ
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3.16 / 評価:37件

“女優”グウィネスに心酔できる一作

  • gypsymoth666 さん
  • 2013年4月26日 15時26分
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

 天才女性詩人として活躍するも、夭折したシルヴィア・プラスと、夫で詩人のテッド・ヒューズの出会いから死までの物語は、ただ静かな一組みの夫婦の創作と裏切りと迷いに彩られる。
 詩人のシルヴィア、または作品をよく知る方々はその一生を“激しい人生”と見るようだが、少なくともこの映画に描かれることが彼女の人生の“あらすじ”とするなら、ある市井の一組みの夫婦の物語としても違和感はない。そこに詩と死があったか否かにかかわるだけだ。それでは詩があったらば偉大なドラマティックな人生になるのか?私はそうは思わない。そして若くして死を選ぶことだけが激しい生き様となるのか?私はそうは思わない。よってこの映画はシルヴィアの創作した世界がいかに偉大かを事前に知っておかないと、彼女の偉大さは伝わってこない作品だ。だからこそ国を越え、一組みのカップルが結婚し、子どもをつくり、才能に蓋をして家事に追われる女性の痛々しさが浮かび上がる。

 同作ではシルヴィアと夫のテッドの創作者としてよきライバルのはずが夫を支え、その夫が成功するとともに群がる女性と浮気を続け、予想通りの別居となり、一人になってから本格的な創作をはじめていく。映画は抒情的な美しいイギリスの自然や町並みとともに、人の心は静かにリアリスティックに描かれるが、夫と妻の心情は深くはセリフでは語られない。なぜ夫のテッドが浮気に走ったのか?現代のシャーマンである詩人ゆえに放蕩と自己破壊の末にしか、創作の光を見出せないのか?シルヴィアは夫に何を求めていたのか?明確にされない。
 詩の数々がセリフ以上に状況を伝えるために引用されるわけでもない。しかし確かに身勝手な理由で登場人物たちが動き、そこに至る根本的な動機が触れられない。共感的な行動に反することこそ人間であり、その矛盾に苦悩することこそ詩人である。そんな側面の象徴なのか?ならばその一言だけでも2人の討論の中に入れて、徹底した実存主義で描ききってほしい。結果、どちらにも振りきれない。

テッド役は007前夜のダニエル・クレイグ。金髪を黒髪に染め、整った顔立ちに謙虚な微笑みの地味な装いとは異なり女性たちと交わるごとに見せる見事な逆三角形の肉体が詩人のイメージからは程遠い。しかしこの見た目の地味さと脱いだ後の肉体の落差こそが、秘めた情熱の象徴なのか?よってこの映画はシルヴィアを演じた主演のグウィネス・パルトローの演技と美しさを見定める映画といえる。叫んだり取り乱したりする力技ではなく、夫の裏切りの手紙を胸に抱き握りつぶし、目を閉じ、夫との久々の交わりの後、一人全裸で空を見つめる様に演技力がにじむ。

 最も印象的なのは映画の中盤、夫テッドとも共通の知人であった編集者とグウィネスが向き合うシーンだ。
タバコを抜き出し、足を組みつつ慣れない動きで指先に挟み「火、ある?」と編集者の男性に尋ねる。「えっ?」一瞬、編集者の男性はうろたえつつ「君が吸うとは思わなかったから…」と戸惑いつつ火をつけてあげる。「自分の幅を広げようと思って、やったことのないことをしようと思うの」そのひとつが喫煙だったわけだが、それは本来の目的の小道具といえた。「愛人を持つとか…」編集者は「例えば誰を愛人にするの?」と問われると、シルヴィアはじっと編集者を見つめる。その空白の数秒。金髪ではなく黄金色と呼ぶにふさわしいカールしたロングヘアが冬眠から覚めて空腹に瞳をぎらつかせる獣のように見え始める。それまでは少女のような横顔に見る見る妖艶さが漂い出す。それを察したように話をはぐらかした編集者はシルヴィア同様、若い時に睡眠薬自殺を図った経験を話しだす。シルヴィアもあまりになすがままその会話に移り、「全く人生に暗黒だったらどうする?私は内側ががらんどうで、瞳が写真のネガになっている気がするのよ…」シルヴィアはタバコを挟みながらか薬指と小指の指先で唇を前歯をタップさせながら空を見つめる。今にも泣きだしそうな瞳だが、涙もこぼれない。すでに彼女は遠い世界に歩みだしてしまっている。少しでも現生に足を止めていく動機こそが今までと異なる性の匂いを放つ女性になろうとする彼女と、ひきつけられる愛人との交わりにあった…。
 昨日も、今年40歳にして世界で最も美しい女性に選出されたパルトロー。もちろんスクリーンを離れての家庭人として生活スタイルなどもあるのだろうが、いかにいくつもの女性の魅惑的な表情を自然に演じわけられるかという女として優れた存在、女優であるかがにじんでいる。
 
 パルトローの魅力とともに確信できるのは、真っ暗な世界が永遠に続くとしたら?とシルヴィアに尋ねられた際の編集者一言だけだ。「どんなに真っ暗な世界であっても生きていく。ただそれだけだ」

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