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コーラス
2005年4月9日公開

コーラス

LES CHORISTES/CHORISTS

972005年4月9日公開

kih********

5.0

良過ぎない良さ。立派過ぎない立派さ。

 良い映画だ。良過ぎないというところが良い。変な言い方だが、良く作ろうという思いが強すぎて、結果としてそれが鼻に付く、観ていて素直になれない、そういう良過ぎる作品が多いのだが、この映画にはそういう匂いがない。  正直に言って、この合唱はピカイチというほどのものではない。“天使の声”という評価であれば、誰もが知る有名な合唱団がある。それなのに、こちらを“天使の…”というのはかなり思い込みがあるからだ。善意の予断とでもいおうか、それがいいところだ。  正直に言って、マチュー先生も超一級の指導者ではない。コーラス指導にも、子ども理解にも、校長との交渉能力にも、普通のおっさん以上には感じられない。それなのに彼を応援したくなる。善意の予断とでもいおうか、それがいいところだ。  子どもたちにしても、特筆すべき“悪”もいない。校長も特段の“悪”でもない。どちらも、要領が悪くスマートさに欠ける普通の(単純で、未熟な)ワルでしかない。  映画のストーリーとしては盛り上がりに欠ける。ドラマチックでない。それでいていつまでも妙に気になる。それがいいところだ。並の映画だったら、―― コーラスが超立派にできて、→ あちこちから招待されて、→ 超有名になって、→ 子どもたちが見事に更生されて、→ 施設も生まれ変わり、→ 先生か子どもが超一流の音楽家になって …… ! と盛り上げたいところだが、―― この映画ではマチュー先生が解雇されてしまう。さしたる抵抗もなく引き下がってしまう。  どこかの小さな出来事として片付けてある。不幸な少年施設は『禁じられた遊び』、『ジェーン・エア』、『オリバーツウィスト』、などで考えさせられる。別に、『あしながおじさん』のような幸せな事例もある。足長さんとまではいかないまでも(そりゃそうだ、そんな金持ちは滅多にいない)、マチュー先生のような先生がいて欲しい。  必ずしも音楽の専門家でなくてもいい。スポーツでもいい。絵でも工作でもいい。畑仕事でもいい。子どもの心を開いてやってくれる理解者が居て欲しい。必ずしも、立派過ぎるような人でなくていい。立派過ぎる大人には子どもは親しみを感じない。立派過ぎる映画が共感を得るとは限らないのと同じだ。

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