レビュー一覧に戻る
タッチ・オブ・スパイス
2005年2月5日公開

タッチ・オブ・スパイス

A TOUCH OF SPICE

1072005年2月5日公開

yad********

3.0

ちょっと塩が足りなかったです・・・

表層部分は万人にうける作品だと思います。 料理を、人生観を、スパイスに例えて教えてくれた祖父と その孫とのヒューマンドラマを、軽妙な伏線を沢山敷いて、 コミカルに、感動的に仕上げられた小気味良い作品です。 幼馴染の女の子との切ない恋物語をスパイスで味付けして。 でもテーマは深層部分にあります。 それは“ノスタルジー”です。 キーワードの台詞1つと、上澄み部分を抜きとった 深層部分にある2つのポイントを挙げて、 星三つの理由を書きます。そう・・・この作品は・・・ もっと世間に知られれば、あるいは口コミで評判になり、 評価が上がるタイプの作品だと思いますが、 僕にはちょっとしっくりこなかったのです。。。 ポイント1 “トルコ・ギリシャの歴史に翻弄される家族” 両国の関係悪化に伴ってイスタンブールに住むギリシャ人たちに暗い影が忍び寄ります。 その募る不安感、そしてついに国外へ強制退去させられる時の悲しみ、苦悩。 ギリシャに戻ったはいいが、そこでもトルコ系ということで肩身の狭い思いをする苦労。 追い討ちをかけるかのように、クーデターによって軍事政権(ギリシャ)となってしまい、 益々住みにくくなる主人公の家族たち。 こういった国際情勢によって翻弄され人生を狂わされる様子を、 コミカルな展開の行間に滲ませたり、本音をしゃべるというサウナ風呂での会話で、 はっきりと語られてました。 ポイント2 “古都イスタンブールへの郷愁” 僕が見た感じ、イスタンブールにあるスパイス店周辺の風景はセットでした。 遠景はCG、あるいは書割・・・これでは古都の魅力が伝わりません。 話は1959年から始まるので、その頃の雰囲気を残した良いロケーションが残ってなかったのかな・・・ よってこの地に固執する登場人物たちの強い郷愁、ポイント1の苦悩も霞んでしまいました。 「イスタンブールは特別な街だ。世界一美しい街だ。誰だって離れたくない・・・」 この台詞、気丈な父が涙ながらに語るのです。 そしてネタバレになるのでこの続きは伏せますが、退去勧告の時に家族には聞こえないように、 トルコの役人から耳打ちされた衝撃的な内容と、その時の悪夢の5秒間を家族に明かします。 悪夢の5秒間・・・そんなにも愛しているのか・・・イスタンブールを・・・・(滝涙) と、なるはずの、テーマが郷愁であることを示すキーワードなのですが、 これはちょっと色々な理由で伝わりにくいです。 伝わり難い理由もまた、ネタバレしてしまう・・・ 今、手元に無いのでうる憶えですが、『深夜特急』という本に、イスタンブールをこう表現していました。 「北に黒海を挟んでロシア、南にアフリカ大陸、東にアジア、西にヨーロッパ、これら異なる文化が十字にクロスする街。」 かなり昔に読んでそれきりなので、極めて不正確です(苦笑)。 あるいは、大沢たかお主演のドラマでのオリジナル台詞だったかも・・・ そしてイスラム教圏とキリスト教圏とが国境を接する場所でもあり、世界史に疎い僕でも、 色々根深い遺恨はあるだろうことは容易に推測できます。 この作品は、こういった地理的、歴史的な背景をもっと詳しく知っていれば、作品の奥行きが広がって、 もっと感慨深い作品になったかもしれません。 そのためにも、この古都が秘めた明暗の魅力を、もっと強烈に描きこんで欲しかったです。

閲覧数565