ここから本文です

ミリオンダラー・ベイビー (2004)

MILLION DOLLAR BABY

監督
クリント・イーストウッド
  • みたいムービー 2,004
  • みたログ 9,818

3.97 / 評価:3053件

絶望から光を

  • cyami さん
  • 2006年12月12日 23時01分
  • 閲覧数 4301
  • 役立ち度 152
    • 総合評価
    • ★★★★★

マギーとフランキーを冷静に、時にはアドバイスをしたり、見守りながら温かい視線で語るモーガン・フリーマン。

この作品はマギーとフランキーの想いや行為を肯定も否定もせず、『海を飛ぶ夢』のように、登場人物をとおして「生と死とについて」「悔いのない人生とは」を観客自身に考えさせようとしている映画だと思いました。

マギーは13歳の時からウェトレスをしていて、貧しくてもボクシングを生きがいに前向きな人生を送っている。何度断られてもめげずに、フランキーを信じきっていて、ほかのマネージャーには見向きもしない頑固さ。果敢なチャレンジ精神と、フランキーを見る真っ直ぐな瞳。心無い家族にも家を買ってあげたり…。

前半で描かれているそんな彼女の懸命な生き方に惹きつけられます。

一方、フランキーはマギーとは対照的で、「タイトル戦はあと、2,3戦してから」「負けたらどうする」「自分と同じ過ちを冒してほしくない」「どんな時も自分を守れ」など、自らも守りに徹している考え方ですが、ある意味人間的で好感を持てました。

フランキーはマギーの生き方に引っ張られるように物語は進んでいくのですが、後半は一転、あの事故によって二人は絶望的状況に追い込まれる。

一生ベッドでの生活を余儀なくなれ、家族にも見放され、「自分にはボクシングしかない」という実直で一途な想い(悪く言えば執着、頑固さ)が、生きがいを失ってしまったことで、死へと向かわせてしまう。

「AがだめならBがある」「CからもDからも入り口がある」という柔軟な考え方にたち、フランキーが大学への進学を勧めたように、ボクシング以外にどんな小さなことでもいいので、希望を見い出し生き続けてくのが本当かもしれませんし、実際同じような状況にあっても頑張って生きている人も世の中にはいます。

そして、人は生かされているならば、自分から命を絶つ権利も、その手助けをする権利もないのかもしれません。

でも人は誰もが未熟で弱い。だからこそ、私たちは辛いことや苦しいことなど色々な経験をし、そこから学ぶために生きている。

「十分に世界を見て回った。欲しいものは全て手に入れた。」と言い、生きるすべを無くしてしまったマギーにとってはこれ以上闘うことはできなかったのですね。まるで、今まで強くぴんと張っていた糸がぷっつりと切れてしまったように。

フランキーはそんなマギーに呼吸器をはずして欲しいと頼まれ苦悩する。

「そんなことはできない」と言いながらも、娘のように想い、苦しんでいるマギーの気持ちを尊重したいという気持ちとの葛藤。それは想像を絶するものではないでしょうか。

舌を噛み切ってしまい、ついには鎮静剤を打たれ意識がもうろうとする彼女を見て決意する。

この時のマギーの顔を見て、去年の12月に亡くした最愛の父のことを思い出しました。

低酸素状態で酸素マスクをし、意識がもうろうとし、呼吸がとても苦しそうな父を見て、母は「早く逝かせてあげたい」と呟きましたが家族は黙ったままでした。

父はその翌日、私の手を握りながらあの世へと旅立っていきました。その時の母の言葉にあるのは愛だけでした。苦しんでいる父をなんとか早く楽にさせてあげたいという想いだけでした。

この映画の状況とは少し違うかもしれませんが、フランキーもマギーへの娘のような愛情からこのような過ち、行為に及んだとしても誰が責めることができるのでしょうか。全ては動機なのです。

そしてあの後、フランキーは「人の命を絶ってしまった」という十字架を背負って生きなければならない苦しみ。

想像力を働かせ、そんな二人の気持ちに寄り添って考えると、フランキーとマギーの想いや行為を批判することはどうしてもできないのです。

この映画によって改めて生と死について考えさせられ、自分の生き方について見つめていきたいと思い、人はいつ死ぬか解らないからこそ一日一日を大切に生きていきたいと思いました。

また、普段から自分に何かあった時の延命措置について、周りに意思表示をしていくことも大切なのではと思いました。



不満のエナジーは幸いを呼ぶことが出来ないのである。

「たとえ右腕を失っても、左腕があるではないか
たとえ足を失っても、手があるではないか
たとえ寝たきりになっても、声が出るではないか
たとえ声を失っても、祈ることができるではないか
たとえ死しても、永遠の命が与えられるではないか」

感謝のエナジーはいのちの輝きを生むのである。

これはとても難しいことですが、どんな絶望の中にも一筋の光を、希望を見つけて生きていけたら、と思いました。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • 勇敢
  • 切ない
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ