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海を飛ぶ夢
2005年4月16日公開

海を飛ぶ夢

MAR ADENTRO/THE SEA INSIDE

PG121252005年4月16日公開

一人旅

5.0

ハビエル・バルデム、珠玉の名演

第77回アカデミー賞外国語映画賞。 アレハンドロ・アメナーバル監督作。 安楽死を望む全身麻痺の男性ラモンと周囲の人々の関わりを描いた、実話を基にしたドラマ。 『次に私が殺される』(1996)『オープン・ユア・アイズ』(1997)『蝶の舌』(1999)の鬼才、アレハンドロ・アメナーバル監督による社会派ヒューマンドラマの傑作。 25歳の時に事故により全身麻痺に陥り、その後数十年にわたり自宅のベッドの上で静かに暮らしている男性ラモン。日常生活の全てを全面介助に頼るという尊厳のない生き方に終止符を打つため、自ら死ぬことを社会に認めさせるべく法に訴える…という“安楽死を望む男性の人生の最終章”を、彼の家族や知人との関わりと、彼自身が夢見る空想の中に描き出す。ちなみに、本作で扱われるのは厳密には尊厳死ではなく安楽死。尊厳死は、延命治療をせずにあくまで自然の成り行きに身を任せて死ぬこと。対して安楽死は薬物の投与等によって人為的に死に至らせること。本作の主人公ラモンは薬物による死を望んでいることから、尊厳死ではなく安楽死ということになる。 カトリックは安楽死・尊厳死に対して否定的態度を示しているが、カトリック教国のスペインでこのような作品が製作された事実に驚かされる。宗教的には許されない行為なのかもしれない。ただ、耐え難い状況下で生き続けなければならない人間の、生を放棄し死ぬ権利を認める必要もあるのではないか?と本作は問いかけている。生と死、生きる権利と死ぬ権利、そして法と宗教の関係性を深く考察した内容であり、人によって考え方・結論が分かれるでしょう。そうした社会的な側面のみならず、安楽死を望むラモンの人生に真っ向から向き合う人々の心の葛藤とラモンに対する限りない愛情に心揺さぶられる。 主演のハビエル・バルデムの珠玉の演技が圧巻。おそらく彼のキャリアの中で最高の名演でしょう。常にベッドの上という身動きの取れない中、生の苦しみと死の願いを表情と口調だけで見事表現してみせる。ラモンの弁護士フリアを演じた『永遠のこどもたち』(2007)のベレン・ルエダも素晴らしい演技。

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