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3.0点
尊厳死という深いテーマを扱った作品だが、ドラマに必要以上にお涙頂戴的な押し付けがなく、高らかな人生賛歌にまで昇華させている演出にアメナーバル監督の非凡さを感じる。 ハビエル・バルデム演じる主人公ラモンの周囲にいる愛にあふれた人たちとの交流が温かく描かれているせいか暗くて重い雰囲気は希薄で、鑑賞後に何故か爽やかな余韻すら残るから不思議だ。 緑豊かで湿潤なガリシア地方が舞台というのも作品のイメージに合っている。これがマドリードのような都会やアンダルシアのような乾いた土地が舞台ならば、作品の印象は全く違ったものになっていたと思う。 とにかく当時まだ35歳だったハビエル・バルデムの演技が絶品だ。老け顔はメイクだとしても、四肢が動かず、首から上だけの難しい演技が求められるこの役を豊かな表情だけで見事に演じている。本作を観れば、彼が世界屈指の演技派俳優であることを実感するだろう。 尊厳死をテーマにした作品であれば、踏み込みの深さで「ミリオンダラー・ベイビー」よりは断然本作を推したい。(見やすさは別としてだが)
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