境界の裏で。
- 文字読み さん
- 2019年1月13日 0時11分
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2004年。テオ・アンゲロプロス監督。20世紀初頭、革命が起きたロシア領のオデッサからギリシャのテッサロニキに逃げてきた一家。一家の主は親を亡くした幼い少女を救うが、やがてその少女は主の息子と恋に落ちて妊娠。数年後、妻を亡くした主は事情を知らないまま成長した少女と結婚しようとするが、その少女(もはや立派な女性)は息子と駆け落ちしてしまい、、、という話から始まる50年余りの物語。
基底にギリシャ悲劇のような愛憎劇が流れつつ、男たちの死を通して、戦争に明け暮れたギリシャ近代史が描かれる。国際色豊かな「街」であるテッサロニキが次第にギリシャという「国家」になっていく。するとどうなるかというと、いたるところに境界ができる。アンゲロプロス監督はキャリアを通じて「境界」にこだわっている。それを余計な説明をほとんどせずに凝縮したエピソードと映像で、ときに寓話的な表現も交えて、テンポよく見せてしまう監督の手腕がすごい。セットにしては壮大で印象的な背景。圧倒的な水の量!!
境界ができていく過程において、その裏で、人間に何が起こるのか。この映画には川や海や雨がないカットは存在しないぐらいに水とともに存在しているが、水は人を隔て、そしてつなげる境界である。境界にこめた複雑な思いに感動できます。もちろん、何度も登場するひらひら揺れる白い布と轟音で走る汽車は映画の記憶としては欠かせません。
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