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エレニの旅 (2004)

TRILOGIA I: TO LIVADI POU DAKRYZEI

監督
テオ・アンゲロプロス
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4.19 / 評価:53件

解説

 1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群が東を目指して歩いている。少女エレニはオデッサで両親を失った孤児。彼女は一行を率いていたリーダー格の男スピロスに拾われ、家族の一員として育てられる。およそ10年後、スピロスたちは新たな土地に<ニューオデッサ>という村を築いていた。少女エレニはスピロスの息子アレクシスと恋に落ち、妊娠する。スピロスが知ればただでは済まない。エレニは、スピロスの妻ダナエの計らいで、秘かに出産し、生まれた双子を裕福な夫婦の養女に出すのだった…。

allcinema ONLINE (外部リンク)

映画レポート

「エレニの旅」ギリシャ現代史と神話的物語が鮮やかに交錯する

 赤軍にオデッサを追われ、帰国した難民たちは、新しい村を築く。そのニューオデッサが最初に姿を現す場面は、村が河の恵みを受けて発展したことを物語ると同時に、河を源とする神話的な物語の始まりを告げる。いや、物語はすでに始まっている。エレニと恋に落ちたアレクシスは、いつか河のはじまりを探しに行こうと囁くが、それは叶わぬ夢だ。エレニが密かに双子を出産し、小舟で戻ってきた時に、彼らの運命は決まっているからだ。

 アレクシスの父スピロス、アレクシス、そして彼のふたりの息子たちは、ライオス、オイディプス、エテオクレスとポリュネイケスに対応している。この映画では、ギリシャ現代史と神話的な物語が、妻であり母であるエレニの視点を通して鮮やかに描き出される。

 ホメロスが詠った河の神オケアノスは、万物の始まりにして、河や泉、海さえ生み出す壮大な流れだったが、エレニはそんな神に見離されたように水に翻弄される。ニューオデッサは大洪水で水没し、投獄を経験した彼女は、幻覚に囚われて看守に水を求めつづけ、内戦で敵味方となる運命を背負った息子たちは、河の辺や水没した家で息絶える。これはまさに、20世紀を描いたギリシャ悲劇なのだ。(大場正明)

映画.com(外部リンク)

2005年5月24日 更新

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