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蝉しぐれ
2005年10月1日公開

蝉しぐれ

1312005年10月1日公開

par********

3.0

美しい生き方とそれを取り巻く自然と

藤沢周平の映画の中でも、四季折々の日本の自然の美しさ、豊かさを散りばめ、それにマッチする情感豊かな音楽で描いている一作。  ストーリー自体は、それほど劇的な要素はない。むしろゆったりと時間が流れ、下級武士や農民の生活や理不尽な社会を、ていねいに描いている。  世の中の理不尽にも大騒ぎすることもなく、じっと耐え忍んで、強く生きていこうとする文四郎とふく。正しく、清く、美しい気持ちで繋がって生きていこうとする姿と、美しくも厳しい、そして豊かな自然とが重なって見える。  文四郎とふくは、添い遂げられなかったけれど、思いはずっと通じ合っていた。尼さんになる前に、文四郎と会うことを望み、お互いの名を呼びあう二人。  日本的な情感の様式美って言ったらいいのだろうか。生きていく中に流れる一本、芯が通っているようなもの。それが、藤沢周平の作品に感じる。

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