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電車男
2005年6月4日公開

電車男

1012005年6月4日公開

cyborg_she_loves

4.0

実話だとは思わない方が

 最初に見た時は素朴に感動しました。  が、その後、この物語の実話性を疑問視する記事をあちこちで読んでから、もう一度見直すと、最初に見た時とはかなり違う見え方がするのに、自分でもちょっと驚きました。  そういう「引いた」目で見直したら、確かにこの話、ちょっと「できすぎ」ですよね。  友達いない、彼女いない、人と会話できない、人の顔が見れない、ディスプレイ(テレビやゲームやネット)の中だけがのびのびできる世界、というタイプの人って、要するに人間関係恐怖症なわけですね。  そういう人が、他人に暴力をふるってる酔っ払いを止めに入るという出発点自体がそもそも、ありえない話じゃないでしょうか。  だって、ここまでネクラじゃない普通の一般市民ですら、こういう酔っ払いを見かけた時に飛びかかってひっつかんで「やめなさい」と言える人って、ほとんどいないんじゃないですか? 大抵の人ができる最上の行為は、車掌に知らせることじゃないでしょうか。  それに、ここに登場する2ちゃんねるのスレッド住人たちが、(この映画でもまさに戦争になぞらえて描かれてますけど)まるで戦友のように強固な信頼関係で結ばれているのも、胡散臭く感じます。  インターネット掲示板があんなに盛り上がるのは、匿名性が保たれているからです。何を書いても自分が責任を問われることはないという安心感があるからです。信頼感とはおよそ正反対の感情で成り立っている空間で、こういう出来事が起こるとはちょっと考えにくい。  難癖つけるようなことばかり最初に書きましたけど、別にこの映画をけなしたいわけじゃない。今でも私はこれ、いい映画だと思っています。  私が文句を言っているのは、冒頭にある「A TRUE LOVE STORY」の一言に対して、です。  これ見て涙流す人のほとんどは、これが「実話」だという思いに後押しされて感動してるんじゃないかと私は思うんです。  映画が虚構であること自体は何も悪いことではない。というより、映画というのはそもそも虚構空間を作り出すメディアです。多くの作品で観客は、それが虚構だとわかった上で号泣します。それで十分なのに、それを実話だと称して映画の価値を高めようとしなくてもいいじゃないかと思った、という話です。  現実にありうるか否かを気にし始めたら、上に書いたような色々と胡散臭いところが目につくことになってしまいます。  虚構だと割り切って見た方が、かえって美しい、勇気ある純愛物語として楽しめます。  2ちゃんねるの書き込みに後押しされてではあれ、エルメスさんに対してこれだけ毅然とした態度が取れたのは、電車くんがもともと、自分でも気づかなかっただけで、じつは大変に勇気ある人だったからです。ネットの書き込みを励みにしながらではあれ、そういう自分をちゃんと自分で発掘した人の物語として、これはとても美しい物語だと思います。  主演の2人の演技は素晴らしいですね。山田孝之さんが、ネクラなダメ男なわりにハンサムすぎる、というのは随所で感じますが、ご本人の容貌にできる目一杯までダメ男を見事に演じておられて共感できます。

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