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エレクション (2005)

ELECTION/黒社會

監督
ジョニー・トー
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3.86 / 評価:73件

解説

香港屈指の鬼才監督ジョニー・トーによるノワールサスペンス。香港最大の裏組織で行われる会長選挙を背景に、ナンバーワンを狙う男たちのし烈な闘いを描く。主演は『PTU』のサイモン・ヤムと、『天上の恋歌』のレオン・カーフェイ。共演には『柔道龍虎房』のルイス・クーのほか、ラム・シューやニック・チョンなど、ジョニー・トー作品の常連が名を連ねる。権力をめぐる男たちの息詰まるような駆け引きを、ストイックに演出した手腕が見事。

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あらすじ

香港最大の裏組織「和連勝会」で行われる会長選挙で、候補者をめぐり意見が割れていた。候補は冷静で先輩を敬うロク(サイモン・ヤム)と、短気で荒っぽいが金儲けにたけたディー(レオン・カーフェイ)。選挙の結果ロクが選ばれるがディーは承服せず、会長になった者だけが手にできる「竜頭棍」をめぐり、激しい争奪戦が始まる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

「エレクション」香港映画界の名匠ジョニー・トーが描く「マフィア×選挙」に銃声は響かず

 香港映画界の名匠ジョニー・トーが、2005年に紡いだ本作は「マフィア映画」であり「選挙映画」だ。香港国家安全維持法が成立した20年、この物語はフィクションを通じた警告から、未来の予言という意味合いを強めていた。

 ドキュメンタリー「あくなき挑戦 ジョニー・トーが見た映画の世界」において、トー監督はこんな発言をしている。「最も描きたかったのは、香港が選挙の混乱を招いた1997年(香港返還)以降、直接選挙がなくなったこと」。現実社会を反映すべく題材としたのは、2年に一度行われる香港最大のマフィア・和連勝会の会長選挙戦。会長だけが手にすることが出来るという“竜頭棍”の争奪戦が描かれている。

 本作では、マフィアの世界を扱っているにも関わらず、銃声が一度も鳴り響かない。続編「エレクション 死の報復」に至っては「撃つな」というセリフで、銃が懐へ舞い戻るという徹底ぶり。代わりに強調されるのは、身体、精神に対しての責め苦。無論、結果としての死はある。だが、権力奪取を目的とする選挙では、亡者よりも、生者の“痛み”の方が利用価値が高い。登場人物は、銃で即座に死ぬことも許されず、闘争に利用されていく。冷徹ともいえる「瞬間的な死」の排除が、ただひたすらに恐ろしい。

 同胞への裏切りを許さない和連勝会。しかし、その掟は完全に形骸化。「組織のため」という理念が都合よく解釈され、掟を順守する者を傷つけていく。全てが「見せかけ」なのだ。狡猾な者ほど、これを上手く利用してしまう。温和な笑みは、必ずしも内面を表すものではない。この「見せかけ」が剥ぎ取られた時、そこに表出するのは“怨”の感情。壮絶な出来事に茫然自失とするはずだ。

 冒頭から約15分、全てに「食」が介在している点にも注目してほしい。集う人々の目的は、食べることではない。あくまで対話の構築にある。飲食物は、その場に滞在するための道具なのだ。興味深いのは、冒頭以降、和やかな食卓が一切描かれないということ。一部食事の光景は挟まれるが、乱入者によって場は荒らされる。「対話が不可能になった」という状況が、「食」の喪失によって表現されている。

 そして、中国本土に権力者の証“竜頭棍”が安置されているという設定は、今となってはあまりにも意味深い。「エレクション 死の報復」では、本作の2年後を舞台に新たな会長選挙戦が展開し、中国の実質的支配が加速していく。先人たちの思い、流れた血、消えた命――全てを背負った者に待ち受ける運命には、思わず言葉を失う。2作続けての鑑賞を、強く勧めたい。(岡田寛司)

映画.com(外部リンク)

2020年7月23日 更新

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