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ある子供 (2005)

L' ENFAN/THE CHILD

監督
ジャン=ピエール・ダルデンヌ
リュック・ダルデンヌ
  • みたいムービー 205
  • みたログ 956

3.69 / 評価:213件

大人になるということ

  • melrose1004 さん
  • 2009年1月15日 2時02分
  • 閲覧数 585
  • 役立ち度 25
    • 総合評価
    • ★★★★★

勝手にパルムドール祭り開催中(タコさん、ごめん)。
またひとつ、地味な映画をご紹介させていただきましょう。

そう、地味です、これは。
なんといっても、一切音楽が使われない。なんじゃ、こりゃ。
テーマ曲さえないので、エンディングは、無音のうちにクレジットがロールされていく。
しかし、だからこそラストシーンの余韻が心に響く。
レーダーチャートの「サウンド」は5点にしておきましょう。


そのラストシーン。
この映画は、この一瞬のためにあるといって過言ではありません。

はっきり言って、本編を見るのは苦痛です。95分は限界ギリギリでしょう。
主人公の男ブリュノに苛立たない人はいないはず。
しかし、それに耐えたことが報われたと思えるのも、このラストシーンがあるからこそなのです。


「ある子供」
それは、身体は大人でも、心は未熟なままの主人公ブリュノのこと。

ハロワの行列に並ぶブリュノとソニア。
時間がかかりそうなので、ソニアはブリュノに、二人の間に生まれたばかりのジミーを散歩に連れてってくれと頼む。

気前よく請合い、乳母車を押していくブリュノ。
なんかきな臭いなと思って観ていると、案の定、道行く人に息子を見せては小銭をせびっている。
しかし、そんなのは序の口。
この後、彼は驚くべき行動に出る。
なんと、わが子ジミーを闇のブローカーに売り渡してしまうのだ!

ソニアがそれを知って失神するのも当然のこと。
なんとか赤ん坊を取り返しはするが、この後のブリュノは泥沼の一途。
ソニアには愛想をつかされ、ブローカーには金を巻き上げられ、ついには、金に困ってひったくりを犯し、逮捕されてしまう・・・。


ラストシーンは、一筋の希望の光。
どん底まで落ちることで、ブリュノはようやく大人になれたのですね。
この作品の監督の、救いの手のぬくもりを感じます。

しかし、同時に、無音のうちに流れるエンドクレジットを観ながら思うのです。
ブリュノを苛立たしく観ていた私たち観客こそ本当に大人なのかと。
私は大人だと胸を張れるのかと。

豊かな生活に恵まれて育ち、学歴も高く、順風満帆に人生を歩めている人ほど、人として大事なこともできないまま年を取って、大人になった気になっていないか。

心は子供のまま、子を持ってしまったブリュノは、こうして痛い目に遭ったけれど、彼はまだまだ若い。
これほどまでではないにしても、同じような痛い記憶を持って、今を生きている人もいるのでしょう。

なんだか羨ましくもあり、自分が情けなくも思えてくるのです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 切ない
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