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イカとクジラ (2005)

THE SQUID AND THE WHALE

監督
ノア・バームバック
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  • みたログ 992

3.39 / 評価:212件

脚本の技巧に酔う

  • ぷっちん さん
  • 2011年2月11日 23時12分
  • 閲覧数 1213
  • 役立ち度 19
    • 総合評価
    • ★★★★★

共に作家である両親の離婚に振り回される兄弟の話です。

この作品は一度観て、胸に去来する共感、反発、同情をもう一度確認したくて、
続けて2度鑑賞しました。

最初の鑑賞での印象は、
ある意味、大変な物を観てしまったということでした。
ある一家を丸裸にしてしまい、
観たくない(見せたくない)ところまで見せている。

思い当るところが随所にあり、痛いです。
わたしは、異常のように見えるこの家族の断片が自分の日常にチラチラと見えて、
そのリアル感にゾッとしました。

しかし、本作はいろいろな賞で脚本賞を取った作品といった事前の情報がなくても、
やはり素晴らしい脚本だと思いました。

同じ内容を父、長男、次男に語らせ、その違いによって親子関係、性格を浮き彫りにしたり、
セリフのひとつひとつから人間関係、依存性、自立から家事に対する夫婦の考え方の相違点まで、気が付かせてくれます。

立ち止まって、あっ!そうかとその言葉の重みを堪能してしまいました。
まるで、繊細な1冊の本を読んで行くような濃厚な時間でしたね。
脚本は監督です。

そして、長男ウォルトは監督自身だそうですが、実体験でないと出てこないセリフ、行動の数々です。

でも、すごい家庭ですよね。
ナイフのように言葉でお互いに刺し違えている。
血だらけでまるで、S総出演です。

家庭の中で一番真っ当なのは次男のフランクだったようですが、
だから精神に異常を来たしたのでしょうね。

(あの「バーガーぐらいで何よ!」と笑いながら言った母の言葉の後の一瞬の間は、ゴックンでした。
リアルに怖かった。
大した仕事はしてませんが、仕事を持つ主婦ならばちょっと分かるような気がしますけどね。
詳しく書きたいのですが、ネタばれになるので)

ここからは、私自身の勝手な解釈で、監督(脚本)の意図とも違うかもしれません。

この作品の主人公は長男ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ )であり、大人(両親、家族)に依存していた少年が、
一人歩きを始める(始めるしかなかった)までの過程が話のメインのような気がしました。

ウォルトがカウンセリングで話す楽しかった思い出。
そこに父は登場しない。
「父はどこにいたのだろう?」
意外でした。
(このシーンのジェシー・アイゼンバーグの演技は圧巻です。
2度目の鑑賞では、ウォルトの心の傷に泣けてきました。)

ウォルトは落ち目の作家である父が現在評価されないのは世間に観る目がないからであり
父は才能のある人間だと盛んに強調します。
そして、父の言う事をオウム返しのように繰り返し、
父のように特権意識が表に出てくる。
反対に人気作家となった母を認めようとはしません。
それが、滑稽な程なんです。
なぜなんだろう?

そう思ってた時に、あのカウンセリングです。
ウォルトの行動は、家庭崩壊の危機がどこに起因しているか無意識に把握した行動だったのでは?
家族の崩壊を避けるために、父を支えるしかなかったような気がします。

母はというと、
この方の行動、セリフからみると大人には大人の世界があり、
子供といえども一線を引くという考え方のようですが、
(アメリカ的なのでしょうが)
父は反対に子供達に依存してます。

母の浮気云々のその背景にある事情はあまり語られてないので推測ですが、
この夫婦はかなり前に終わっていた様な気がします。(母からすれば)
ここまで引き延ばしたことが、子供のためには良策だったのでしょうか。

ウォルトは盛んに母を責めます。
「離婚しないと言ったじゃないか」云々

カウンセリングでの話からしても、
この家庭の構図は、親一人息子3人のような気がするんですよね。
だから、長男は母(親)を責めるのかな。
母である私は、ちょっと辛いですね。

ウォルトはラストに「イカとクジラ」と真正面から向き合う訳ですが、
子どもの時、母と見ても怖かったそれに一人で対峙する。
いまだに怖いのかを確認してるようです。
大人として、自立して両親と付き合って行こうとする気持が瞳に映っているように見えました。
それは両親の離婚、一家解散を受け入れる覚悟のようでもありました。


ちなみに、父にも自立を促してますね。
父との別れ際にその手をそっと離すシーンがアップで映るのが印象的でしたね。

父は愛してほしくて、母は愛したかったそんな家庭の崩壊逸話でした。


追記

あと、出演時間は短かったですが、カウンセリングの先生役のケン・レオン。
素敵な演技です。

詳細評価

物語
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