藤沢周平の世界などに染まるものかって
- KSHue さん
- 2020年4月23日 10時51分
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山田洋次監督による藤沢周平三部作の最後を飾る作品。前二作は「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」。主演の真田広之、永瀬正敏がそれぞれ藤沢小説に描かれた武士の精神性を見事に表現した。その後だけに、木村拓哉がよく受けたなと感心した。
だが、鑑賞後に思うのは「ちがうだろ」、使ったほうが悪いということ。
キムタクの現代劇からそのまま持ち込んだ軽々しいニヒリズムがどうしても鼻につく。おそらく藤沢周平の小説など全く無視した俺流(もしかして読んでない)。なにせ彼は演技しているわけではないのだから。
その点、相方の檀れいにも伝染してしまっている。宮沢りえ・松たか子が演じた生き生きとした艶に対して彼女はお人形のような美女、そもそもこの人も金麦のCMが最高の演技なのだから(失礼)。惜しいかな、今回も松たか子が相方ならキムタクももう少し呼応して演技できたかも。
シナリオにも難があるように思う。妻の不貞というちょっとドロドロした題材は前二作のような ”清々しさ” がなくかなり不利。
そのうえ、失明してからの剣術の精進、妻や徳平の気配を感じるところなど時間の経過が表現されていない。いきなり座頭市が誕生してしまうのだ。この不自然さは役者のせいではなくシナリオのせい。
しかし盲目の剣士といえば、勝新の演じた「座頭市」以上のものは土台無理であり、その意味でもこの原作の選択は辛い。北野武はそれに挑戦したが、あくまで座頭市のリバイバルだった。
そんなこんなを忘れてしまって、キムタクの職業色々作品の一つとして鑑賞すればそれなりの出来栄え。徳平演じた笹野高史の軽快な掛け合いが主演の大スターをよく引き立てている。演技は兎も角キムタクの剣使いは堂に入っている。師匠役の緒形拳にも感謝。
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