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僕の大事なコレクション (2005)

EVERYTHING IS ILLUMINATED

監督
リーヴ・シュレイバー
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4.13 / 評価:131件

初監督作品とは思えない出来ばえ

  • sop******** さん
  • 2019年10月20日 1時11分
  • 閲覧数 407
  • 役立ち度 7
    • 総合評価
    • ★★★★★

初監督作品とは思えない出来ばえ…やぶにらみ感想

 面白い作品でした。音楽なら前半が陽気でコミカルなリズム、転調があって後半は悲しくシリアスな感じ。構成や伏線など映画としての完成度が高くとても初の監督作品とは思えませんでした。レビューは年齢や体験によって感じるところが違っていて興味深く読みました。
 アウシュビッツ以外にもあったナチスによるユダヤ人の大量虐殺から反戦映画と受けとめる人。哲学的、霊的なものを感じる人など、さまざまでした。中でも、もう一人の主人公であるアレックス爺さんの自殺の理由が分からないという意見が多かったのもうなづけます。最後の空港の場面で旅で出会った人物が再び登場する意味は何なのか、という意見もありました。
 そこで、アレックス爺さんの年齢の設定(80歳前後)は筆者とたいして変わらないと思うので、老映画ファン(73歳)の個人的感想を書きます。若い映画ファンのご参考になればさいわいです。
 ストーリーは他のレビューを参考にしてください。時系列を整理すると、トラキルブロド村で1000人以上の大虐殺があったのが1942年。ベルリンの壁が崩壊したのが1989年、それによってウクライナが旧ソ連から独立したのが1991年、作者であるジョナサン・サフラン・フォアがアメリカから「祖父の命の恩人を探す旅」に出たのが1994年です。そして映画の公開が2005年。長いようで悠久の歴史に照らせばアッという間のできごとです。
 この作品にはユダヤ人の民族としての特性がよく表れています。そのテーマを中心に書いていきます。原題のeverything is illuminatedは「すべては解明される」というような意味と思います。それは収集した物品の記録で証明される、ユダヤ人の実証主義ともいえましょう。作者自身がコレクターとして収集するばかりではなく、村にひとり残った老婆はなんと、殺された村人たちが土に埋めた遺品を掘り出して家に山積みしています。
 死ぬのが分かっていながら、なぜ指輪を土に埋めたのかという疑問が浮上します。生きていた証拠、存在証明なのかという作家たちの問いに、老婆はこう答えます。「そうではなく、あなたたちが探しに来るのを待っていたのです。これらの遺品があなたたちを呼び寄せたのです」と。
 ユダヤ人は迫害の歴史を持つ民族。そして世界中に散らばっています。戦争に巻き込まれ何百年も生命の危機にさらされてきました。老婆が「戦争は終わったの?」と聞く場面がありました。いつも命の危機と隣り合わせの民族の象徴です。
 殺され離散しても、必ず子孫がルーツを探りだし共有することが民族の絆(きずな)なのです。時間を超越してつながっているのです。こうしてユダヤ人としてのアイデンティティを保っているのです。
 イスラエルという国家を建設したにもかかわらず、祖国に集中せず いまだに多くの国にまたがって暮らしているのは、分散したほうが絶滅を免れるとでも考えているのでしょうか。いずれにしても島国でほぼ単一民族の中で暮らし、「水に流す」という文化のある淡白な日本人には理解しにくい民族性でしょう。
 エンドロールで流れる歌「紫の服を着て」の歌詞は、その時間を超越した「一瞬で終わる人生のはかなさ」を意味していると思います。ここに時空を超越した民族のスピリチュアルな感じを受け止めたファンもいたでしょう。
 さて、分かりにくさ第一位のアレックス爺さんの自殺です。死んだふりをして自分だけ生き残ったことに後ろめたさもあったでしょう。そして何よりユダヤ人であることを隠し、都会に出て家庭を持ち観光業を営み、ユダヤ人を馬鹿にしてきたことに後悔の念があったに違いありません。死期を間近に控え、その痛切な後悔を清算したかったのではないでしょうか。高齢になるほど民族のアイデンティティを失うことは辛いのです。
 分かりにくさ第二位である、空港で知った顔に出会う場面です。これは世界中どこに行っても同胞が必ずいる。だから心配することはないという意味と考えました。
 老映画ファンの感想にお付きあいいただきましてありがとうございました。

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物語
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