解説
一度夢を追うことをあきらめた男が、ヒップホップを通じて自らの人生を振り返り、新しい道を歩んでいく感動のドラマ。ストリートでしがない裏稼業に励む男の自己実現の過程をリアルに描き出す。『クラッシュ』のテレンス・ハワードが吹き替えなしのラップ・シーンを披露し、その芸達者ぶりを見せつけた。超人気ラッパーのルダクリスもラッパー役で登場。夢と現実の間でもがく人々の姿が、胸にダイレクトに響いてくる。
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あらすじ
メンフィスのポン引きのDジェイ(テレンス・ハワード)にも、かつてラッパーになるという夢があった。ある日、彼は同郷の人気ラッパー、スキニー・ブラック(クリス・“ルダクリス”・ブリッジス)が凱旋公演をするといううわさを聞く。早速旧友のケイ(アンソニー・アンダーソン)らとデモ・テープ作りを始めるが……。
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映画レポート

「ハッスル&フロウ」南部の土壌と音楽の力が浮き彫りになった傑作
カーティス・ハンソンは「8Mile」で、エミネムの物語を語るだけではなく、デトロイトのインナーシティの日常をリアルに描き出した。ジム・シェリダンは「ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン」で、50セントの物語を語るだけではなく、アイルランド人としての自己の世界も描き出した。「ハッスル&フロウ」には、その2作品にはない生々しさと熱気がある。メンフィスに生き、メンフィスを舞台にした“Poor & Hungry”でデビューしたクレイグ・ブリュワーは、メンフィスという街の物語を語ることにこだわり、それをDジェイとその仲間、彼らの音楽に凝縮していく。
浮浪者から取り上げたキーボード、クーラーも使えないクルマのなかで紡ぎ出されるライム、卵のパックを壁に張った即席のスタジオ、Dジェイが抱える娼婦が身体を張って手に入れる高価なマイク、妊娠によってお荷物になった娼婦のコーラス。デモテープには、彼らのすべてが注ぎ込まれ、それゆえにDジェイをトラブルに巻き込むことにもなる。
ブリュワーがそんなドラマを通して浮き彫りにするのは、黒人と白人(ちなみにこの監督は白人である)、男と女、囚人と刑務所の看守を繋ぐ南部の土壌とそこから生まれる音楽の力なのだ。(大場正明)
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2006年8月10日 更新