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放郷物語 THROES OUT MY HOMETOWN

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4.0

ネタバレ一歩踏み出す人の上に 桜は舞い散る

「彩恋」の飯塚健監督の長編第2作。と同時に、徳永えりの初出演初主演映画でもあります。ツタヤには置いてなくて、Yahoo!レンタルDVDにてようやく観れました。 「Wonderful Swim」(『ハヴァ・ナイスデイ』収録)や「彩恋」では、音楽の使い方に独特のセンスを感じていましたが、これらより前に制作されたこの作品では、全く逆でした。そこにあったのは「無音の効果」。昨日観た「かもめ食堂」よりもさらに洗練されていて、その威力をフルに活用した佳作です。夫婦が順調だったころの象徴である台所の音、幼なじみとその彼女の会話。それから逃れるために一方は耳を塞ぎ、一方はラックの扉の中に閉じ込めた。寂しさと切なさと一緒に。 あるところで、「飯塚健を読み解くキーワードは『言葉』だ」というのを目にしたことがあります。彼の舞台やノベライズを読んだことがないのでそこまではわかりませんが、少なくとも彼の作品を3つ観て感じた共通点は、ひとつの舞台にすこしずつ交差する4-5つの人間模様という名の毛糸。それを残り30分で一気に編み上げて小さい小さい手袋片方を仕上げる。そんなささやかな群像劇を作り続けてるんだなと。もう一方は観てるボクらにゆだねられているけれど、帰り道、気がつくとなかったはずのもう片方がちゃんと手の中にある、そんな感じです。 ちゃんとのちの2作品の原型を見ることが出来ます。つまり、彼は1作ごとにちゃんとupdateされているってことです。次回作も期待大です。 この直後の作品「フラガール」の早苗役で、日本一田舎娘が似合う女優の称号(?)をゲットした徳永えり。それってあながち嘘じゃないかなっというところは、すでにこの作品からも観て取れます。(まあ、後出しですが。) 窓枠1つ分の幼なじみ哲平との埋められない距離、聞こえない振りして家具を探してるけど耐えきれずに(上記の通り)ラックの扉の中に音を閉じ込めてみたり、ラストシーンの桜の木を見上げるときの微妙な表情の変化。どれを取っても素晴らしかったです.極めつけは、暗がりの中、自転車を返した後、歩いて帰るところを哲平に呼び止められたシーン。顔は一切映らない。暗いししかも遠映し。それでも、彼女が演じた愛子の爆発寸前の切ない空気はそのたたずまいや少ないセリフから十分伝わりました。 早苗の元気のよさとはウラオモテ。ちゃんとその両方をしっかり押えられているんですね。やっぱりこの子は将来伸びますね。 でも、この作品のMVPは山田辰夫さん。娘とバスの中で再会して、ハンドルを握りながらボロボロ涙をこぼす演技は鳥肌ものです。これまで、チンピラや悪役、刑事などちょっとクールな役柄を多く見てきただけにすごく意外でした。一流の役者さんだったんですね(←超失礼)。 終盤、交差していたそれぞれのストーリーがそれぞれの場所に着地します。その度ごとに、彼らの上には桜の花びらが舞い降ります。一歩踏み出す勇気は、きっと何かを変える力になるのかな。

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