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マリー・アントワネット
2007年1月20日公開

マリー・アントワネット

MARIE ANTOINETTE

1232007年1月20日公開

yab********

4.0

マリー・アントワネットの実像に迫る快作

 マリー・アントワネットの生き様をまともに描こうとすれば、とてもシリアスなものにならざるをえない。ルイ16世の頃に国家の財政は破綻し、国民の反感は沸騰点に達した。「首飾り事件」というマリー・アントワネットの評判を失墜させる事件も起こり、バスチーユの襲撃、フランス革命と続けば、ただの贅沢で無知なマリー・アントワネットのなれの果てしか描くことができないであろう。  だから、どんなに識者から批判を受けようが、ソフィア・コッポラ の少女趣味であどけない、人間マリー・アントワネットを描く試みは、ある意味斬新だ。  女性らしい色彩の豊かさで、ヴェルサイユ宮殿内を表現し、その豪華絢爛に適応したマリー・アントワネットの贅沢三昧をコメディタッチに描き切る。お菓子とケーキとシャンパンを連写していく映像はあどけない少女の世界そのものだ。  だって少女なのだ。14歳でルイ16世に嫁いだのだ。最初はルイ16世の性的淡白に戸惑い、少女心にお世継ぎを産まなければならないというプレッシャーにさいなまれていたのだ。  マリー・アントワネット役のキルステン・ダンストが、天真爛漫な少女の部分と時折みせる女の部分を自然に使いわけ、映像にアクセントをつけているところが見事だ。  マリー・アントワネットは、国民の反感が高かったため、ギロチンにかけられる時に刃が見えるように仰向けにさせられたそうだ。ソフィア・コッポラ は、そういった周知の残酷な事実を安易に利用したくなかったのだろう。  彼女は、どんなに世間知らずのお嬢さんが描いた作品と思われようとも、そのへんの女子高生とさして変わらない、マリー・アントワネットの真の私生活を描きたかったのだろう。  彼女はそこを描くことによって、王政、もしくは封建制の終末を、真に女性らしい視点で捉えたと言える。  その視点の奥には、マリー・アントワネットの挫折は、奢れるものは久しからずではなく、ただ時代の必然がもたらしたものにすぎない、という彼女の首尾一貫した姿勢が覗えるのだ。

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