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長い散歩 (2006)

監督
奥田瑛二
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3.76 / 評価:195件

解説

校長職を定年退職した初老の男と、母親から虐待を受けている少女の、魂の逃避行を描いたヒューマンドラマ。妻を亡くし、人生に対する贖罪(しょくざい)の旅に出る主人公に名優・緒形拳、心を閉ざした薄幸の少女に本作が映画デビューとなる杉浦花菜。監督は『少女~an adolescent』『るにん』に続く長編第3作目となる奥田瑛二。社会性の強いテーマを原案段階から練り上げ、静謐(せいひつ)な映像美で紡ぎ上げた奥田監督の一本気な演出が冴える。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

名古屋の高校の校長職を定年退職した安田松太郎(緒形拳)は、妻の葬式を済ませた後、これまでの人生を清算するかのように質素なアパートに移り住む。その部屋の隣には、母親に虐待されている幸(杉浦花菜)がいた。事情を知った松太郎は幸を連れて部屋を飛び出すが、松太郎は少女誘拐犯として指名手配されてしまう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2006「長い散歩」製作委員会
(C)2006「長い散歩」製作委員会

「長い散歩」徐々に狭まっていく心の距離を触覚的に演出

 これほど走る緒形拳を見るのはいつ以来だろう? 天使の羽根をつけた少女を追いかける最初のコンタクトから、緒形拳演じる老人は、少女との(心の)距離を接近させようとする。幼児虐待を受けた少女の心はちりぢりになっており、老人と子どもの散歩ならありふれた風景なのだが、なかなかお手々をつないで歩くことは許されない。その徐々に狭まっていく距離感を、すこぶる触覚的に見せていく奥田瑛二の演出には天性のものを感じる。

 また、ファミレスでアツアツの鉄板にのったハンバーグを「痛い」と言って拒否される最初の食事から、やがて温かい食べ物を受けつけるようになるまでのくだりは、脚本に心がほどけていくさまが周到に書き込まれていて、トリュフォーの「野生の少年」のようなピュアな感動を感じる。幼児虐待の忌まわしい事件は今年秋田で2件起こったが、小さな心をそこまで“非人間化”してしまうのか!

 緒形拳の圧倒的存在感、少女役の杉浦花菜の無垢な感受性がフィルムを通してひしひしと伝わってくる。母役の高岡早紀の色香、道すがら出会う青年役の松田翔太の豊かな感性が、この世の“けがれた心”を捨てに行く2人の道行きを彩る。ラストのUAの歌とともに、2人の美しいハグが瞼に焼き付くのだ。(佐藤睦雄)

映画.com(外部リンク)

2006年12月14日 更新

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