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トゥモロー・ワールド (2006)

CHILDREN OF MEN

監督
アルフォンソ・キュアロン
  • みたいムービー 735
  • みたログ 3,063

3.30 / 評価:1263件

命よりも大切なものはあるのか?

  • raz******** さん
  • 2020年6月1日 12時28分
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

子供が生まれなくなったという if 設定は良いが、
だから世界中で暴動が発生したという理屈がよくわからない。
だが、そこはスルーしてストーリーを考察してみる。



冒頭から、この映画はけっこうシニカルだった。世界最年少の少年が亡くなったニュースで涙を流す人たちを画面に映して命の大切さを観客に見せると同時に、移民排斥で命なんて捨てるほどあるかのような状況も見せている。

この対比は、命の価値(あるいは人間の価値)に差があると言っていることになる。

ただし世界最年少の少年は別に英国民ではなかったから英国民以外に生きる価値はないかというとそういうわけでもない。

ここでの命の価値の基準はたぶん「希少価値」。

たくさんいる移民は価値がなく、数が限られている英国民は価値を持ち、子供は(英国民でなくても)最大の価値を持つ。



この映画の主人公は、序盤では世界最年少の少年のことをクズと言ったりしていたので、主人公の価値観は他の人たちとはちょっと違っていた。

でも、キーが妊娠していると知った時に主人公の価値観に変化が起こったわけだ。

この価値観の変化は結構重要で、主人公は子供が希少価値を持つから尊いと考えているわけではないことがストーリーから読み取れる。

もし希少価値が重要なら「奪ってしまおう」と考えるのが普通だが、希少だから尊いわけではないのならば奪ってしまおうという考えは出てこない。

実際に奪ってしまおうと行動したのは、収容所で襲ってきたおっさん(シド?)だった。

そして終盤の戦車とかが登場する戦闘シーンでは、赤ちゃんを見た周りの人たちは手を出せずにまるで神を見るかのような表情を皆が浮かべていた。

なので、そのシーンこそが命の価値とは何なのかに対するこの映画の答えだったと思う。



ところで映画の前半、主人公は従兄弟の大臣の元に訪れた。そこでは意味深なダビデ像がでんと構えていた。これは命の価値の1つの例だったと思う。いわゆる美術的価値ってやつ。

そして、食事をするシーンでは大臣の息子アレックスが登場した。しかし息子には意思がなくまるでロボットのようだった。息子の体にはそこら中にタトゥーがあってとても親に従順だとは思えないが、アレックスは親に一切口答えをしなかったし、怒鳴られても表情ひとつ変えなかった。

このシーンも命の価値の1つの例だったと思う。アレックスはグローブ型VRデバイスを使ってコンピュータで何かを黙々と処理していた。ゲームには見えなかったので、仕事かあるいは勉強だろう。

ただそこにいればいいだけの美術品的価値とは違い、何かアウトプットを出す労働力としての価値だと思われる。大臣は薬を息子に飲ませていたが、意思を消して従順にするための薬だったのではないだろうか。



このように、この映画では子供に限らず命の価値あるいは人間の価値とは何なのかをストーリーの中に散りばめている。もちろん大臣のシーンは映画の前半ということもあり間違った例だった。

それでも、体制側であるあの大臣はそれこそが命の価値だという信念を抱いているから、その状態が継続しているのだ。

それに対して、反政府組織フィッシュの新リーダーであるルークは、命よりも大切なものがあるという信念を持っていた。まあ活動家だったり革命家はだいたいそういう思考になる。僕は昨日、フランス革命をモチーフにした映画を見た。そこでもやっぱり、自由と平等は命よりも大切だよねという話になっていた。

この映画はそういう革命的な思想を否定している珍しい作品になっている。



ここで最初の疑問に戻ってみる。なぜ世界中で暴動が発生したのかという疑問だ。

僕は「子供が生まれなくなったから暴動が発生した」というロジックを無条件に組み立ててしまったが、実際にはこの映画は「もしも命より大切なものがあるのならば暴動は収まらないよね」というロジックになっていることに、僕はここでようやく気付く。

かなり極論だけれども、命よりも大切ものを持つ者同士が争いあったら、片方が排除されるまで争いはなくならないのは論理としては正しい。

そうすると、この映画のスタート地点は「子供が生まれなくなったこと」ではないわけだ。本当のスタート地点は「命よりも大切ものがある」という前提だ。

森の中で隠居暮らししていたジャスパー爺さんが、神様は気まぐれで意地悪だみたいなことを遠回しに言っていたが、そのとおりで、この世界の神様は、「何?命よりも大切ものがある? じゃあ新しい命はボッシュートな!」ってことで新しい命を奪ってしまったのだろう。

主人公がもともと活動家だったのも大事な伏線。活動家ならば命よりも大切なものがあるわけで、だから主人公は自分の子供の命を神様に奪われちゃったんだよね。

・・・4000字制限に引っ掛かったw

詳細評価

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