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墨攻 (2006)

A BATTLE OF WITS

監督
ジェイコブ・チャン
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3.53 / 評価:611件

原作も良いが、映画も良い。

  • sou***** さん
  • 2018年3月19日 18時25分
  • 閲覧数 1074
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

森秀樹の作品が好きだ。中でも、この映画の原作漫画が僕の一番のお気に入りだ。
中国古代史をテーマにした漫画では、昨今ならキングダムが人気だけれど、もっと昔にこの映画の原作が連載されていた。
漫画では映画化された籠城戦の後、革離は秦と秦を支援する墨家と対峙する事になる。映画でも描かれたが、革離は墨家の指示で梁国を守っていない。漫画の世界では、墨家は本来掲げていた思想から道を外してしまう。中華統一を目指す嬴政と暗躍する墨家、侵略に抵抗する国々、抵抗する国々を支援する墨家から離れた革離。壮大なスケールのテーマを、迫力ある劇画で堪能出来る作品だ。

蛇足だが、若いころに墨攻に触れた僕なので、秦に抗う物語の方がしっくりくる。その点で、キングダムよりも達人伝という漫画の方が面白く感じる。そもそもキングダムのような作風は疑問に感じる部分もある。まぁ、漫画なので議論する気もないけど、理由は後述する事柄を読んで頂ければ少しは汲み取って頂けるのでは。それに、墨攻は墨子、達人伝は荘子、と言った諸子百家の中の思想がベースにあり、古代の東洋哲学をなんとなく感じ取れる空気感が僕好みでもある。

映画では、原作と異なる演出があるけれど、僕はすんなり受け入れる事が出来た。世界観は壊されて無いと思う。平和とは何か戦争とは何かを問いかけ、非攻を掲げる墨家に属する革離の活躍を描いている。

革離は、私心無く、統治する者よりも統治される者を守る。神算鬼謀の策略で防衛戦を繰り広げるが、決して三国志演義の諸葛孔明のようには描かれない。
革離は一騎当千の英雄でもない。どちらかといえば職人肌のように思える。
主人公としては地味だが、そんな革離を描く映画も漫画も好感が持てる。

歴史上の武将と呼ばれる人々について、誰が有能な英雄であるかと語られるのをよく目にする。正直、その手の切り口は馬鹿らしいと思う。輪をかけて愚かに感じるのは、誰が最強か?みたいな切り口だ。
本当に有能ならば、戦争しなくて解決するのでは?と思うのだ。
当然、侵略に抵抗するという部分もあるわけで、その指揮を摂った人物を無能と言っているのではない。ましてや、為政者と軍人を同列にする事は出来ない。しかし、最高の戦果は死傷者を出さない事だと思う。
戦争が政治手段の一端ならば、回避出来るのが一番の上策だろう。そもそも、多くの犠牲者を出した上に成立つ称号が最強って何だろうと思うのだ。現代に生きる僕たちが、過去の著名な人物の功績を勝手気ままな議論した挙句、誰それが最強だと決めてどうなる。名を残す事なく命をおとした一兵卒や雑兵と呼ばれる者や、戦争に巻き込まれた犠牲者が存在した歴史の先に現代人がいる。名を残した人物だけが歴史を作ったのか?

墨攻は原作も映画も戦争の虚しさを描く。
勝ちも負けもない。正義も悪もない。そんなものは視点や切り口を変えれば逆にもなり得る。多くの者を犠牲にして勝利があるのだろうか。残された者の怨嗟を産む事が勝利なのか。今も残る民族紛争を見れば、一瞬の勝利など解決手段ではない事が明白だ。
為政者が戦争という政治判断をした場合、真っ先に戦場の最前線に出て行き武器を持つのか?為政者の代理で、誰かが戦場へ赴き命をかけるのだ。
見ず知らずの顔も名前も知らない相手を、為政者が決めた敵を、自分の敵として命をかけて戦う。
戦争は悲しく虚しいものだと思う。戦争を清く美しい英雄譚で語れるものだろうか?人を殺して正義とか笑わせる。人と人の繋がりにおける義は否定しないが、大義名分で頭に正を付けると胡散臭さを覚える。理想国家などと言われたら、いよいよ気味が悪い。

ましてや最強?笑わせやがる。

兼愛を説き。非攻。最後の手段として防衛戦。
その最終手段における革離の活躍を、華やかな戦争英雄として描かないところに墨攻の良さがある。

最後に俳優陣について。
アンディ・ラウの革離は男前過ぎると思うが、凛々しさが良い。
ヒロインのファン・ビンビンは美しい人だ。それはいい事だが、森秀樹の戦記漫画で登場するヒロインは、少しだけムチっとした肉感あるタイプが多く、モデル体型ではない。なんというか、女性が女性を思う美しさじゃなく、ちょっとだけぽっちゃりタイプ。ファン・ビンビンの演じた逸悦は映画オリジナルのキャラだが、原作漫画のムチッとした娘(にゃんと呼ぶ)のような女優さんが見たかった気がする。映画と漫画を重ね合わせても仕方ないが、漫画に登場する娘の活躍は萌えるってやつだ。女間者として活躍する娘の姿は、墨攻という漫画の見所の一つでもある。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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