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死なない頭脳

死なない頭脳

THE BRAIN THAT WOULDN'T DIE/THE HEAD THAT WOULDN'T DIE

92

eig********

2.0

首だけ女と人造人間のゆるゆる復讐劇(笑)

シネマヴェーラのチラシ解説に「クレイジーでちょっとチープなSFホラー」とあって、おっかなびっくり観てきましたが、聞きしに勝るおまぬけ映画ぶりで、観てるこっちも思わずほっこり(笑)。 でも、ポリコレ汚染でゴミと化した『SW8』とか『アラジン』実写版とか、あるいは元作へのリスペクトゼロで全編怒りしかわかない『サスペリア』リメイク版みたいな、全編から腐臭の漂うサイテー映画と比べれば、罪もなければ毒もない、ただただゆるんゆるんの無害な映画。 むしろ、おバカさ加減が愛おしいくらいです。 首だけSFの代表作といえば、なんといってもアレクサンドル・ベリャーエフの『ドウエル教授の首』(短編小説、1925 )ですが、本作ではあらゆる移植手術と蘇生術を可能とする奇跡の血清を発明した天才マッドドクターが、生首美女をこしらえます。 長身イケメンのマッドドクター、ビル博士は、父親の手術中死んだ患者を脳への電気ショックで見事蘇生させて今日も意気軒高。そこに別宅の研究所の助手から「クローゼットのアレが暴れて大変なことに、急いで来てほしい」との連絡が。フィアンセのジャンに「そろそろ俺の秘密の研究施設見せてやるぜ、マジビビるぜハニー」とばかりに声をかけ、オープンカーに乗っけてやおら繰り出したはいいものの、良い気になってスピード出しすぎてノー減速で急カーブにつっこんだせいで大事故をひき起こし、自分は軽傷で済んだもののジャンは哀れ首を残して燃え尽きてしまいます。 ビルは、ジャケットに首を後生大事にくるんで近くの研究施設までひた走ります。ここで、ところどころ邪魔してくる「頭上の枝をよけながら」走るビルをえんえん映すんですが、これが本作でほぼ唯一のアクションシーンです(笑)。 速攻でジャンの首を蘇生させてから、その目覚めを待たずに、なぜかストリップバーへといそいそと出かけていくビル博士。別にむらむらしてるわけではなく、さっそくジャンの首に合う「身体」の物色にきているのです。 博士パートでは、物語そっちのけで観客向けのお色気サーヴィスが続きます。女どうしのキャットファイトや、水着ショー、女を車でストーキングする博士、変態たちのモデル撮影会など、よくもこんあ愚にもつかないシーンばっか……。一方、実験室ではジャンの首が目覚め、命を救われた恩など忘れたかのように唐突に博士への憎悪をたぎらせていました。ここのクローゼットには、もう一体肉を接ぎはいで作った人造人間が隠されていて(まさに「Monster in the closet」ですね!)、首だけになったことでなぜか「パワー」が使えるようになったジャンは、念波をつかってモンスターを手なずけ、博士と助手への復讐の機会を待ちます……。 たぶん、インディーズなんでしょうね。 とにかく演出がびっくりするくらい冗長で退屈。 役者のパントマイム頼りで冒頭の手術シーンや事故シーンを済ませてしまうので、なんだか観てて出演者が可哀想になってきます。 モンタージュも、しきりに実験室の中と外をうつしたりするんですが、控えの間にいる助手のほうに演技としてやることが何も与えられてなくて、場がもたなくて大変なことになっている(笑)。 首だけ美女も、そもそもどうやって肺もないのに声が出てるのかよくわからないですが、起きたら唐突に邪悪で恨みがましい人格に変わってるし(一方で自分の置かれてる立場の異常さは妙にするっと理解している)、パワーを手に入れたとかいってるけど、結局大声を上げたらクローゼットの中の人が内側から叩いて応答するってのを何度もリピートしてるだけだし。それにジャンの目覚めって、映画のイベントとしては最重要要素だと思うんですが、助手も博士もそれに気づいたときの反応が薄すぎて話の流れがおかしくなってる。終盤その正体が明らかになる「クローゼットの中のモンスター」も、造形・動き・出し方・扱い方ほか、すべてがダサい。 ラストシーンも……あえて言及しないけど、素っ頓狂すぎてまあびっくりするよね。 音楽(選曲)も本当にひどい。 ずっとなんでかお色気シーンで流れるようなアホ曲がえんえん流れてて、サスペンス感もへったくれもないうえ、とくに緊迫するシーンになると、今度は朝の目覚めのシーンで流れるみたいな爽やかで陽気な曲がリズミカルに流れてきて雰囲気をぶち壊しに。 しょうじき、エド・ウッドとどっこいの仕上がり。 製作側の志と技術が異次元レヴェルで低いわりに、演者はみなさんわりと一生懸命なので、観ててよけいにせつない。メインのアイディア自体はぶっ飛んでて楽しい分、カルト映画としてはそれなりに需要があるでしょうが、実際に観てがっかりせず、ぐっと上げていける人は、まあまあツワモノだと思います。 ま、あのメインビジュアルの生首のインパクト一本で、もう実質「勝ち」、なのかもしれませんが!

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