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ありがとう
2006年11月25日公開

ありがとう

1252006年11月25日公開

wal********

5.0

不運を生きる。

震災とゴルフ。 一見無関係な二つが、「運」をめぐって重なり合う。 不運は、人の行いや思いなどお構いなしに、突然訪れる。 ひどい不運にあって、人はどのように生きられるのか。 震災、そしてゴルフを通してこう答える。 「しがみつくな。崖から手を放して、思い切り両手を振るんや」。 古市忠夫(赤井英和)渾身のリカバリーショット。 ゴルフ場の暗い森が震災の炎に包まれるシーンは圧巻だ。 「崖から手を放せ」。 それは運・不運が人生を変えてしまうことを、受け入れること。 その不条理を生きるため、自らが変わる決意をすること。 そのとき人は、運命に翻弄される存在から自らの運命を切り開く 存在へと生まれ変われる。 『ありがとう』と『接吻』。 結末は対照的だが、主人公はともに不運を生きる。 人智を超えた不運を受け入れる決意をし、全ての執着を捨てて、 自らの人生を精一杯生きる。その姿に畏怖を覚え、また励まされた。 赤井英和の演技、吉本芸人他コテコテの関西ノリ、そして前半の 震災から後半のゴルフへの強引な展開。どれも苦手なもののはず なのに、なぜかひどく愛おしく感じられた。それはひとえに、 映画全体を明確なテーマと緻密な構成が貫いているからであろう。 瓦屋根の上で男(豊川悦司)が身悶えるシーンが、いつまでも 頭から離れなかった。阪神・淡路大震災を遠い過去に追いやって いた自分に、気付かされた。 人生の不条理さ・残酷さを受け入れてなお、それを祝福する。 果敢に人間讃歌に挑む、万田監督から目が離せない。

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