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旅の贈りもの-0:00発
2006年10月7日公開

旅の贈りもの-0:00発

1092006年10月7日公開

taj********

3.0

ネタバレ風町-"風待ち"の映画。

 心の傷を負ったり人生に戸惑ったりした5人の旅人が、ミステリートレインで到着した「風町」で過ごし、新たな人生に踏み出すまでを描いた作品。  奇をてらう物語展開でもなく☆3が順当だと思いまずが、西日本の美しい風景が旅情を誘うので+1点としました。  恋人にふられたキャリアウーマン、自殺機を逸した女子高生、誰からも必要とされなくなった中年会社員、…が中心人物であるように、決して明るい導入ではありませんでした。それを象徴する、夜の幾分殺伐とした大阪の情景。  0:00大阪駅発、行き先不明の列車で一晩走るうちに光あふれる山陰の小さな漁村「風町」に着くことでその情景は一変します。都会人からみればお節介なまでのハートフルな町人に接していく(というよりも、町人からどんどん介入されていく)うちに彼らは癒され、切符の有効期限とともにまたもとの世界=都会/大阪にもどっていきます。このように、展開はいたってオーソドックス。  旅の古典的な定義=<日常からの逸脱>であるならば、大阪という<日常>と、風町という<非日常>は作品内において強調されることになります。先述の闇/光の対比はその代表です(蛇足ながら、ロケ地の一部は山陰側であるにも関わらず「光/陽」のイメージで描かれていました。とかく山陽より印象悪く語られることの多い当地にとって、これは収穫かも)。また、大量の金銭=大阪(華子に渡されるのは数枚の万札)と、数枚の硬貨の世界=風町(翔太少年が華子に払う逆上がりのレッスン料)の対照性。  そして「風町」つまり"風待ち"という音からも連想されるように、人生の吹き溜まり、荒波からの保護区-に留まって人間関係を充電してゆく主人公たちの姿は、大阪の場面でせわしく動き続けるそれとの強烈な対をなしています。  役者陣では、本作で映画デビューとなる多岐川華子さん(華子)が印象的。台詞が少ないなかで、寡黙で心を閉ざした影のある女性の雰囲気をうまく全身で表現していました。風町住民のなかではやはり大滝秀治さん(善作・元郵便局長)が圧倒的な存在感を見せています。前作「明日の記憶」でみせた演技を、"突き放すような温かさ(「生きてりゃいいんだよ…!」)"とすれば、本作では"包み込むような温かさ"と言えましょうか...  サントラは(なんと!!)浅倉大介さんが担当。冒頭(大阪シーン)の音楽は一発で彼のものと判るものでしたが、比べて風町のシーンで流れる大半の曲はそこまで印象に残るものは少なかった気がします。  風町の医者役で出演もしている徳永英明さんの歌う「時代」、エンドロールの中森明菜さん版「いい日旅立ち」は、まさにこの映画のために存在しているのではと思わせるほどマッチしていました。さすが名曲ですね(そもそも後者の曲は鉄道との親和性が高いですし)。  全体として平凡感は否定できない映画ですが、作中の牧歌的な風町をみるだけ(東京ならば銀座の映画館から…)でも癒されるのは確実です。観光地化されていない日本の町々を訪れてみたくなります。観て損はないでしょう。

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