素晴らしいです
- -1 さん
- 2009年2月19日 23時54分
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佐々木監督と、佐々木監督の表現上の触媒である「主人公」の若き僧侶、井上実直が否応なく直面していく世界のリアリティ。一切の説明なく、ただひたすら事実を追うカメラの、寡黙にして的確な「語り口」が見事です。クライマクス、グラウンドゼロでの祈祷を終え、パールハーバーでの祈祷に挫折した井上導師の元を訪れる被爆者の老人。彼が語る、絶望的な数の論理。「911・・・あんなものはたかだか数千人じゃないか。我々は、20万人殺されたんですよ」それでも老人は井上導師に祈祷されることを望み、井上導師は彼のために真剣に祈祷する。井上導師はその時、何を思い、祈り、何を断ち切ろうとしたのか。本当に深く考えさせられました。一切の説明も弁明もしない、というスタンスを貫き、自らが提示した全ての命題をを観るものの思考力にゆだねた姿勢は、ドキュメンタリーの作法としては、あまりにも観客を信じすぎているという点において、実は楽観的すぎるのかもしれません。しかし、少なくとも、この作品に横溢する作者の真摯さは、間違いなく観るものの心を打つでしょう。メジャーTV局映画ばかりが幅をきかせ、完成したけれど公開する機会がないという作品が700本以上もある(事実です)という絶望的な日本映画の状況の中、ここまでの硬派な作品をきちんと作りあげ劇場公開を果たした佐々木誠監督は、ほんとうに立派。日本映画界が世界に誇っていい人材だと思います。今後の活躍に期待。
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