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エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?
2006年11月18日公開

エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか?

ENRON: THE SMARTEST GUYS IN THE ROOM

1102006年11月18日公開

cal********

4.0

さすがアメリカ、役者も悪者も超一流!

 一時は全米で第7位、世界で第16位の売上高を誇った、世界最大のエネルギー卸売会社が、粉飾決算が露呈して崩壊するまでの悪行三昧を忠実に追いかけたドキュメンタリーです。  金儲けだけがすべてで、全く倫理観も罪悪感もない経営者たちの野望から始まったこととはいえ、そこにトレーダーや大手銀行が荷担することによって、かくも大規模な不正がまかり通り、何十億円も儲けた連中がいるということ。その一方で、不正発覚後、エンロン社だけで300人が解雇され、エンロン社と共謀していた会計会社の社員8万5千人が失職したということ。その暴利と悲劇の落差に、ただただ驚かされます。  不正のやり口は、10年後に完成予定の発電所によってもたらされるであろう収益を現在の収支決算に計上したり、エンロン社の赤字分を、収支決算を公表する義務のない子会社(SPE)に付け替えたりして、自社の決算を(実は大赤字なのに)黒字に見せかけ、株価をどんどんつり上げるという、ただのマネーゲーム。何も生み出していないのに、なぜ、かくも収益が上がるのか?「Ask Why (疑問を持て!)」というエンロン社のキャッチコピーは、そんな不正を見抜けないエコノミストやアナリストを、あざ笑うためのものだったようです。  2001年1月に、カリフォルニアで大停電があり、当時は「同様のことは東京でもいつ起こってもおかしくない」と報じられましたが、何のことはない、この大停電も、エンロン社が、自主停電で電力危機をあおって電力価格をつり上げ、自社をボロ儲けさせるための偽装工作だったのだそうです。  ふんだんな記録映像と関係者へのインタビューをつないだだけの2時間ですが、ライブドア事件がガキのいたずらに思えてくるような大胆不敵なやり口と、不正を疑われてもマスコミの前で見事に白を切り通すCEOやCFOの演技(記録映画ですから、映像に出てくるのはすべて本人たちです!)に、「さすがアメリカ、役者も悪者も超一流!」と感嘆しつつも、怒りがこみ上げてきます。  ちなみに、役者といえば、2003年10月に、アーノルド・シュワルツェネッガーがカリフォルニア州知事になりましたが、これも実は、エンロンの破綻をめぐって前州知事がリコールされたことを受けての当選だったということ、そして、シュワルツェネッガー本人が、2001年の段階で、エンロン社のCEOであるケン・レイや別の大物投資家とホテルで密会する仲であったことなども暴露されています。このことも含め、エンロン社をめぐる20年の歴史が実に事細かに記されている「エンロン年表」の付いた、この映画のパンフレットも、なかなか読み応えがあり、おすすめです。

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