料理は、食べる側の環境も重要です。
- かんじゅーす さん
- 2006年11月1日 0時30分
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- 役立ち度 14
- 総合評価
同じ「一日」であっても、過ごしかたは各人各様。大抵は互いにそれを知らないというのも、意識してみれば不思議なことだったりします。カメラの向こう(役者)とこっち(制作陣)、スクリーンの向こうとこっち(観客)が交錯しながら、しかもひとつの「一日」を見つめているのは、自然でいてなにか不思議な感覚でした。
「おとな」になってしまったり(「初恋のてんまつ」)、なったはずなのに存在薄だったり(「birthday girl」)、花嫁衣裳を纏う結婚もあれば(「大安吉日」)、突如フツーでないお嫁さんがあらわれもして(「世田谷リンダちゃん」)。煙突に泣きつかれるほど悲しまれる死の光景(「風見鶏と煙突男」)がある一方で、まさに肉親が死のうとしているときすら周囲は無関心だったりします(「ピンポンッ」)。なのに、無関心どころか無関係の通行人を指差して文句を垂れればガンもあら全快!な事件(「世界でいちばん身体にいいこと」)も人知れず発生してるとあれば、おちおち道も歩けないよ…(?)と。
18篇の「一日」の記録は、ニュースにならなくともその人の中では豊かな一日―まさに"ナイスデー"。でも互いに"ナイス"なさまを知ることもなく時間は過ぎるわけです。故遠藤周作さんが似たこと言ってたな…
閑話休題。
各作品はここに書ききれないほど個性豊かでしたので、印象に残ったのをかいつまんで感想を。SIDE Aに関しては数日前の記憶なので信用しないように(笑)
「プリーズ、ウェイク・アップ」(山内健司監督)
夢中夢という謎の設定ながら、古館寛治さんの強烈キャラ炸裂! 18編中最も劇場が笑っていた作品でした。ついでに監督のキャラもなかなか…
「風見鶏と煙突男」(富永まい監督)
舞台は人生最後にお世話になる、あの煙突。当然セットですが。男が情けなく叫んで風見鶏がぐるぐる回るだけで笑えるなんて、意外な収穫でした。ちなみに僕の第一印象は「死ぬのも悪くないな」、と。
「お別れのバラード」(本田隆一監督)
最後の歌シーン自体はなんでもないけれど、そのとき重大なツッコミどころに気づけばあなたも勝ち組です。
「全速力海岸」(中野裕之監督)
18品目フルコースの〆にしてはボリューム感たっぷり、お買い得(褒め言葉です)。海岸を全速力で走るだけのお話が爽快感あり。音楽も全速力。
「W A I T E R」(日向朝子監督)
職業としてのウェイターと、「待ち人」の意をかけてあるのですね。ちょっと湿った感じの画面が鑑賞後のコーヒー欲を誘います(?)。しかしながら小山田サユリさん、若い。
余談ながら福岡で撮影された3作品(「橘くんのバカ。」「その山を崩せ」「ピンポンッ」)で、かなりのロケ地が特定できたのはかなりツボにきました。知っている場所が映画になると、嬉しいばかりかそこを見る視点も変わるから不思議なものです。
「ハヴァ、ナイスデー」は元来ネット配信向けに制作されたとのこと。公式ブログにあった通りネットは視聴者側に降りる権利があり、ゆえに型破りな視角の映画も作りやすいようです(結果もシビアですが)。料理でいえばビュフェ形式かな。それを100分少々のコース料理に仕立てて供するのが今回の劇場公開ですから、食べる側=僕たちの好き嫌いにそぐわない危険は充分に察知されていたとおもいます。僕自身も、何篇か"味覚"に合わない料理がありました。それを「料理長(=プロデューサーさん)が悪い」と言うのは簡単でしょう。しかし、いかんせん料理の好き好みは各人の生いたちを反映するものですから、こればかりは"自分でコースを食べないとわからない"。
僕は田舎育ちなので"高級料理"になじめず減点1で☆4つ、の評価にします。
こういう理由で、劇場公開期間は短いのですが、ぜひ映画館で観て自身で判断されることをお勧めします。他人が書いた食べもののレビューが参考にならないのと同じくらいに。
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