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パンズ・ラビリンス (2006)

EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH

監督
ギレルモ・デル・トロ
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3.84 / 評価:2459件

少女に突きつけられた苛酷な現実

  • 月光の【sonata】 さん
  • 2007年10月18日 5時26分
  • 閲覧数 7110
  • 役立ち度 203
    • 総合評価
    • ★★★★★

映画を観るとき、ぼくの好みなのですが【地に足が着いた】作品を自然と選んでしまいます。少年のときの夢が遠ざかっていくようで、淋しくもありますが、趣向というものだけは、どうしようもありません。たとえ、片足でもいいんです。地に足が着いているって感じられたら…。

この『パンズ・ラビリンス』は、迷宮や魔物、牧神が登場する作品で、明らかにぼくの範疇から外れています。では、なぜ、劇場へ足を運んだのか?

理由は以下の3つでした。

◆昨年の賞レースの段階から、批評家の評価が高かったこと

◆その後、実際に、ぼくが評価している賞を受賞していること。たとえば、全米映画批評家協会賞では、スペイン映画ながら「最優秀作品賞」を受賞しています。英国アカデミー賞や、ボストン映画批評家協会賞、ワシントンDC映画批評家協会賞などでは「外国語映画賞」を受賞しました。
アカデミー賞の「外国語映画賞」部門では、名作の『善き人のためのソナタ』に破れはしましたが、「撮影賞」など3部門を獲得しました。

◆映画の歴史的背景が1944年のスペインで、日本ではあまり知られていない興味深い時代である、という点。

さて、この作品、オフェリアという名の少女が地下の迷宮に迷い込んでゆくファンタジーなのですが、勿論ただの夢見るファンタジーではありませんでした。オフェリアの運命の背景には当時のスペインの苛酷な現実があり、その現実がひとりの童話好きの平凡な少女に、残酷な結末を突きつけるのです。
その酷さには、思わず目を背けてしまいますが、悲劇に終わらせない、聖なる【救い】が、ラストで用意されていて、観る者の気持ちをも救ってくれます。
ファンタジーに弱いぼくでさえ、物語の迷宮にどんどん引き摺り込まれてしまいました。息を呑む展開で、観る者を片時も飽きさせません。


少女と牧神パンズと迷宮のことは、あえて触れません。みなさんの愉しみを邪魔したくないからです。
ただ、観終わって、強く感じたのは、この作品の背景を知っておけば、面白みも倍増するだろうな、ということです。

映画の舞台は、スペインのピレーネ山脈の、とある山村です。
少女と臨月の母親が兵隊に護衛されて山村の屋敷に到着するところから、この物語は展開します。屋敷には、オフェリアの義理の父親であるビダル大尉と50人ほどの部隊が駐屯しています。なぜ、こんな山中に軍隊が? と、不思議に思います。

ビダル大尉は自分の手もとで出産させるために、臨月の妻たちをわざわざ呼び寄せたのでした。

大尉は見るからに冷酷な、完璧主義者の軍人で、オフェリアはこの義理の父親が、身震いするほど嫌いです。

物語の中で、幾度も幾度も、軍隊とゲリラの残虐な戦いが繰り返されます。

このゲリラ、いったい何者たちだろう?

何のために戦っているんだろう? 

と、スペインとは縁の薄いぼくたちには釈然としない背景です。

そこで、ごく、簡略に喋らせていただきます。


1944年。日本ではアメリカ軍の爆撃機による空襲が激化する一方です。
フランスでは連合国軍がノルマンディーに上陸し、ドイツ軍の敗退が始まりました。ちょうどそんな大変な時期、第2次世界大戦を尻目に、スペインでは、フランコという将軍の軍事独裁政権が国内を掌握していました。

1936年、フランコ将軍がクーデターを起しファシスト政権を立ち上げましたが、その後、軍事政権に反対して、民衆が立ち上がり、『スペイン内乱』と呼ばれる戦争が続きました。

ヘミングウェーの有名な小説『誰がために鐘は鳴る』は、この内乱が舞台です。世界各国から4万人もの義勇兵がスペイン民衆のために駆けつけ、3年近い戦闘が続きましたが、ヒトラーやムッソリーニの力を借りたフランコ政権側が、10万人以上の民衆を虐殺して、完全にスペインを制圧しました。
ピカソはこのときの虐殺を有名な『ゲルニカ』として描いています。

『パンズ・ラビリンス』は、この内乱の【後】の物語なのです。

フランスとの国境に近いピレーネ山中に、わずかな反政府軍の残党がゲリラとして立て籠もっていました。
オフェリアの義父ビダル大尉は、その反政府ゲリラ掃討を命じられて山村に駐屯したのでした。

義父に呼び寄せられた無垢な少女オフェリアは、冷酷無比の義父がゲリラたちを虐殺していく地獄絵を見せつけられることになります。

その一方で、彼女には迷宮の牧神パンズから与えられた3つの困難な使命がありました。

苛酷な運命と、困難な使命に、勇気を振り絞って立ち向かっていくオフェリアを応援せずにはおれない作品です。

詳細評価

物語
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