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(2006)

監督
黒沢清
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2.84 / 評価:279件

解説

『LOFT ロフト』などの黒沢清監督と『呪怨』シリーズの一瀬隆重プロデューサーが初めて手を組んだ本格派ミステリー。ある連続殺人をきっかけに、過去と現在が入り乱れる迷宮に足を踏み入れる刑事の苦悶をあぶり出す。黒沢監督作品7作目の主演となる役所広司が主人公を熱演。『天使の卵』の小西真奈美や『ゆれる』のオダギリジョーら豪華共演陣も見逃せない。すでに世界配給も決定した想像を絶する物語に引き込まれる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

連続殺人犯を追う刑事の吉岡(役所広司)の頭に、ある日、ふと自分が犯人ではないかという疑問が浮かぶ。曖昧(あいまい)な自身の記憶にいら立ち、苦悩する彼を恋人の春江(小西真奈美)は静かに見つめている。吉岡は同僚の宮地(伊原剛志)の勧めに従い、精神科医の高木(オダギリジョー)の元でカウンセリング治療を始めるのだが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C) 2006「叫」製作委員会
(C) 2006「叫」製作委員会

「叫(さけび)」見捨てたことさえも忘れ去った「過去」の象徴こそが幽霊である

 図らずも涙腺が緩んでしまった。あの、心の琴線よりも脳の回路を刺激されることの多かった黒沢清作品に、である。これまでの彼の映画が、不穏な出来事を引き画で見つめる観察者のクールな視点だったとすれば、「叫」は明らかに、幽霊の執拗な出現に翻弄される役所広司のエモーショナルな視座から撮られている。

 舞台は東京の湾岸エリア。役所にとって、赤いドレスの幽霊は身に覚えがない。彼女を死に至らしめた記憶などなかった彼が、自分が殺したかもしれないという疑念に囚われていく過程に思わず引き込まれる。彼女を見た者たちは、相次いで「全部なしにしたい」と呟き、近しい者を殺す。相手の顔面を水に浸けて――。

 これは、我々が仕出かしてきたことに復讐される現代の怪談だ。海を埋め立て、繁栄という名の未来のために、あらゆる思いを切り捨ててきた人間が、過去から問い詰められる都市伝説だ。我々が見捨て、いや、見捨てたことさえも忘れ去った「過去」の象徴こそが幽霊である。希望だけがない都会の片隅で、捨象されてきた人間の根源的な想念が叫び声を上げる。傑作と呼ぶのは控えよう。本作は、黒沢映画が途轍もない完成度へ到達するための序章のような気がしてならない。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2007年2月23日 更新

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