心に火が灯る
- marine_eruuu さん
- 2010年6月22日 20時10分
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- 役立ち度 8
- 総合評価
クローズZERO?での漆原凌、テレビドラマMotherでの虐待する母親の彼氏。
この二本を観た後に本作「Life」を観て、あまりの役柄の違いに驚きつつも元来綾野さんはこういった優しげな、儚げな役柄が似合うのでは(というより本人のお人柄が良く出ているような気が)とキャスティングに深く納得しました。
ストーリーは、のどかな町でキャンドルアーティストとして活動する勇が、高校の同窓会に呼ばれた東京での出来事を中心とした三日間のお話。
「対比」がとても分かりやすかったです。
キャンドルアーティストとして活動する本庄では勇はボタンのたくさんついた白いカーディガンに白いカットソー、色の薄いゆるっとしたジーンズを履いていますが、同窓会のために東京に出かけるときにはミリタリー調のジャケットで見事に「武装」しています。
(ちなみにスタイリングも綾野氏ご本人だそうで。あまりのセンスの良さにびっくりです)
さらに電車の中では酸素を取り込みやすくする「鼻テープ」まで。
帰りの電車から降りたときにはミリタリージャケットを脱いで白いシャツでした。
つまり勇にとって東京、同窓会というものは自分自身を武装しなければいけない心構えが必要だったわけですよね。
これってすごくリアルに分かります。
そして「キャンドル」は勇自身を表現しています。
恋人を亡くした女子高生
思い病を患う親友
結婚の報告をした元恋人
勇は彼らの傍にそっと寄り添い、心に小さな火を灯します。
でも火を灯すと、キャンドルは溶けてしまう。
「さようなら」「ありがとう」「電話する」
そして彼らは勇とは別々の方向へ、人生を歩んでいく。
勇は自分でも気がつかないのでしょうが彼らと向き合うことで確実に心が消耗していきます。
本庄での穏やかな笑顔はそこにはなく。
ホームに降り立った勇はくたびれ疲れ果ててベンチになだれ込み、嗚咽します。
この流れが素晴らしい。
痛いほどに勇の心情が伝わり、思わず涙ぐみました。
綾野さんの泣きの演技は役の心情がこちらがわにジワジワと伝わりますね、若手の俳優さんの中では一番いい「泣き」をするかも。(私の勝手な判断ですがw)
自分の心を消耗させてまで灯した明かりは、勇自身を灯してくれることはないように思えますが最後に何箇所か勇の心に火が灯る描写があります。
だから人っていいよね、人って優しいよね、あったかいよね。
そんなシンプルなメッセージが伝わる「Life」
エンディングの後の勇の後姿がすべてを物語っていました。
観終わった後誰かに優しくしたくなる、そんなステキな映画です。
映像、音楽(綾野氏は音楽監督も兼任しているらしい、多才だ…)、ストーリー、すべて無駄がなくいいですね、ミニシアター系の映画が好きな人にはぜひお勧めしたいなぁ。
次回作「シュアリー・サムデイ」ではちょっと軟派?な役柄だそうで。
綾野剛さん、注目しています。
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