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憑神(つきがみ) (2007)

監督
降旗康男
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3.02 / 評価:594件

人情時代劇で終わって欲しかったところ

  • 文芸サロン さん
  • 2009年10月10日 23時44分
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

 浅田次郎原作、巨匠降旗康男監督は「鉄道員(ぽっぽや)」でコンビを組んでいる。そのためもあってか、作品の仕上がりは安定している。降旗監督の手腕の確かさはいうまでもあるまい。
 物語は江戸末期の下級武士を主人公としたもの。妻夫木聡扮する別所彦四郎は、幕末の功臣榎本武揚と昵懇の仲。出世を望めばかなわない立場ではない。しかし彼は家風を重んじており、それが彼の生き様となっている。映画にはこのほかに、勝海舟も登場させていて、幕末・明治維新の時代背景が物語と絡んでくる。
 題名の「憑神」は主人公に取り付く三人の神様に由来する。神様といっても貧乏神、疫病神、死神とおよそ有難くないものの中の最悪の神々ばかり。それというのも主人公は傾きつつある家運を上向きにしようと、有名な稲荷神社に参拝する。ところがそれは目指す稲荷ではなく、厄災を呼び込む稲荷なのであった。
 最初に登場する貧乏神を演じる西田敏行の人を食った演技はなかなか笑える。飄々とした存在感は、厄災の神様の先鋒役としてうってつけであった。三人の神では一番格上の役者を起用した采配は見事といっていい。以降、疫病神には相撲取り姿の赤井英和、最後の死神には子役の森迫永依を配役している。
 それぞれに特徴のあるキャラクターだが、特に死神には古いオムニバス映画「世にも怪奇な物語」でイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニが演出したエピソードに登場する死神の少女の姿に重なる。明からにオマージュを感じさせる。
 神様たちは彦四郎に取り付くものの、彼の性格のよさ(くそ真面目さというべきか)に感化されて目標を達するに至らない。ここに作者の、誠実な一般人への思い入れが反映されている。彼の家系は元々影武者を輩出している。偶然にも彦四郎は徳川慶喜に生き写しであることから、彼の影武者となって維新政府軍と戦うこととなる。それは彼にとって死に場所を選ぶことでもある。
 途中までの江戸人情が、武家の死に様の描写へと変わるのは唐突に思える。作者の別の作品「壬生義士伝」にも通じる殉職精神なのだろうが、どうもこの悲壮さは物語の方向性として逸脱にはならないだろうか。
 江戸情緒を描いた是枝裕和監督の「花よりもなほ」のような、暴力否定という結末を導き出すことはできなかったのだろうか。少々腰が折られたような印象の結末である。

詳細評価

物語
配役
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