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約束の旅路 (2005)

VA, VIS ET DEVIENS/GO, SEE, AND BECOME/LIVE AND BECOME

監督
ラデュ・ミヘイレアニュ
  • みたいムービー 231
  • みたログ 271

4.26 / 評価:81件

生きて「何か」になるために。

  • pan******** さん
  • 2013年6月24日 19時54分
  • 閲覧数 997
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

1984年。

ファラシャと呼ばれる
エチオピアに住むユダヤ人たちが
一斉にイスラエルへと移送された。

スーダンの難民キャンプにいた
9歳の少年はユダヤ人と偽り
この大規模な移送作戦に紛れ込んだ。

無事にイスラエルへ到着し
シュロモという新しい名を手に入れた少年。

しかし身寄りをなくした彼は
養子として引き取られ
たった一人で見知らぬ国で生きることになる。


凄い映画を観た、というのが率直な感想でした。
2時間半という長さを全く感じませんでした。

それどころか、これほど壮大な物語を
よくこの時間でまとめたなと思いました。


物語は主人公の運命を大きく変える
「モーセ作戦」から始まります。

難民キャンプから脱出するために
列を作るユダヤ人たち。

それを見て少年の母親は彼に言います。

「行きなさい。生きて、何かになりなさい。」

それは母親にとってギリギリの選択だったと思います。

出来ることなら育ててやりたい。
大きくなっていく姿をずっと見ていたい。

でも彼を生かすためには、別れるしかない。

その母親の気持ちが痛いほど伝わってきて
観ていて胸が張り裂けそうになりました。


無事にイスラエルへ到着し
初めて靴下を履き、初めてフォークを使い
これから夢のような生活が
待っていると思っていた彼ら。

しかし、現実は違っていました。

イスラエルのユダヤ人たちの中には
肌の黒い彼らをユダヤ人だと
認めない人たちも多かったのです。

そして、豊かな暮らしを手に入れるため
ユダヤ人であると嘘をついて
逃れてきたのではないかと
いつも疑念の目で見られていたのです。

シュロモも、自分の抱える秘密と
周りからの差別に苦しんでいました。

そんな彼を支えたのは養母でした。

ある日養母が学校へシュロモを迎えに行くと
生徒たちの父母がシュロモを
快く思っていないことを聞かされます。

彼がいると成績が下がるという。
彼は誰よりも優秀なのに。

彼がいると伝染病が心配だという。
彼の吹き出物は差別によるストレスでできたのに。

そんな一方的な偏見を
吹き飛ばすように養母は叫びます。

「私の息子は世界で一番美しい!」

そんな養母の強い愛に守られて
シュロモは成長していきます。


物語は、小さなシュロモが
立派な青年になるまでを追いかけます。

たくさんの困難とたくさんの葛藤と
たくさんの孤独を乗り越えたシュロモは
母と約束したとおり「何か」になります。

養母をはじめ
彼を見守り続けてくれたたくさんの人の愛と
なにより生かすために
自分を行かせてくれた母の愛があったから。

そして、そんな母との約束を守り
その姿を母に見せたいという思いがあったから。

最初から泣きっぱなしでしたが
終わってからもなかなか
嗚咽をとめることができませんでした。


この映画はフィクションですが
監督が実際に「モーセ作戦」で
生き延びた人たちの話を聞いて
この映画を作ろうと思ったのだそうです。

「モーセ」作戦はユダヤ人の同志たちを
飢餓や貧困から救うために行われたと言われていますが
その一方で増え続けるパレスチナ人への対抗手段として
政治的理由で行われたとも言われています。

8000人のエチオピア系ユダヤ人が
イスラエルへ移送されましたが
4000人がその途中で
飢えや襲撃により命を落としました。

この移送で生き延びた人もたくさんいるでしょう。

しかし、生き延びた人も命を落とした人も
政治や、時代の犠牲者であることには
変わりないと思います。

ラストシーンを観たとき
この話はこの国の、この地球のほんの一部分に過ぎない
という監督のメッセージが聞こえてきた気がしました。

その場所は世界の片隅なんだなと思いました。
そして、私の居るこの場所も世界の片隅。

世界に中心なんてない。
みんな、片隅なんだって思いました。


レンタルDVDにも特典映像として
監督と、シュロモを演じた俳優さんの
インタビューが入っています。

これもぜひ観てほしい。

そして、そこで監督も言っているように
物事にはいろんな側面があり
私たちはあらゆる角度から
物事を見る必要があると思います。

映画も作品によって
いろんな角度から撮られています。

例えば、私がこの作品と同じくらい衝撃的だった
「パラダイス・ナウ」 という作品があります。

この映画にはパレスチナ側から見た
イスラエルが描かれています。

どちらもひとりでも多くの人に
観てもらいたい映画です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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