2007年3月10日公開

約束の旅路

VA, VIS ET DEVIENS/GO, SEE, AND BECOME/LIVE AND BECOME

1492007年3月10日公開
約束の旅路
4.3

/ 81

48%
33%
16%
2%
0%
作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(50件)


  • ころりん

    3.0

    複雑な複雑な近代史

    イスラエル共和国の建設が、エチオピアのユダヤ人末裔「ファラシャ」のイスラエル「帰還」(モーセ作戦)や、アフリカの飢餓問題、そして、イスラエル内での差別意識などとからみあって、複雑な様相を呈した、という話。 そこに翻弄される若者、家族、ラビ、恋人、友人たち。 「戦争反対」とか「武力もやむなし」とか、そんな簡単に言い切れないほど、暴力的な対立って根深い。 母がすばらしい、っていうか、その正直さ、やさしさ、忍耐に、ありがとうっていいたくなる。 苦しい痛みと衝突をかかえながらも、血のつながりがない同志が、血よりも濃い家族になっていく姿は、ぼくにとって胸を打つナラティブ。

  • pan********

    5.0

    生きて「何か」になるために。

    1984年。 ファラシャと呼ばれる エチオピアに住むユダヤ人たちが 一斉にイスラエルへと移送された。 スーダンの難民キャンプにいた 9歳の少年はユダヤ人と偽り この大規模な移送作戦に紛れ込んだ。 無事にイスラエルへ到着し シュロモという新しい名を手に入れた少年。 しかし身寄りをなくした彼は 養子として引き取られ たった一人で見知らぬ国で生きることになる。 凄い映画を観た、というのが率直な感想でした。 2時間半という長さを全く感じませんでした。 それどころか、これほど壮大な物語を よくこの時間でまとめたなと思いました。 物語は主人公の運命を大きく変える 「モーセ作戦」から始まります。 難民キャンプから脱出するために 列を作るユダヤ人たち。 それを見て少年の母親は彼に言います。 「行きなさい。生きて、何かになりなさい。」 それは母親にとってギリギリの選択だったと思います。 出来ることなら育ててやりたい。 大きくなっていく姿をずっと見ていたい。 でも彼を生かすためには、別れるしかない。 その母親の気持ちが痛いほど伝わってきて 観ていて胸が張り裂けそうになりました。 無事にイスラエルへ到着し 初めて靴下を履き、初めてフォークを使い これから夢のような生活が 待っていると思っていた彼ら。 しかし、現実は違っていました。 イスラエルのユダヤ人たちの中には 肌の黒い彼らをユダヤ人だと 認めない人たちも多かったのです。 そして、豊かな暮らしを手に入れるため ユダヤ人であると嘘をついて 逃れてきたのではないかと いつも疑念の目で見られていたのです。 シュロモも、自分の抱える秘密と 周りからの差別に苦しんでいました。 そんな彼を支えたのは養母でした。 ある日養母が学校へシュロモを迎えに行くと 生徒たちの父母がシュロモを 快く思っていないことを聞かされます。 彼がいると成績が下がるという。 彼は誰よりも優秀なのに。 彼がいると伝染病が心配だという。 彼の吹き出物は差別によるストレスでできたのに。 そんな一方的な偏見を 吹き飛ばすように養母は叫びます。 「私の息子は世界で一番美しい!」 そんな養母の強い愛に守られて シュロモは成長していきます。 物語は、小さなシュロモが 立派な青年になるまでを追いかけます。 たくさんの困難とたくさんの葛藤と たくさんの孤独を乗り越えたシュロモは 母と約束したとおり「何か」になります。 養母をはじめ 彼を見守り続けてくれたたくさんの人の愛と なにより生かすために 自分を行かせてくれた母の愛があったから。 そして、そんな母との約束を守り その姿を母に見せたいという思いがあったから。 最初から泣きっぱなしでしたが 終わってからもなかなか 嗚咽をとめることができませんでした。 この映画はフィクションですが 監督が実際に「モーセ作戦」で 生き延びた人たちの話を聞いて この映画を作ろうと思ったのだそうです。 「モーセ」作戦はユダヤ人の同志たちを 飢餓や貧困から救うために行われたと言われていますが その一方で増え続けるパレスチナ人への対抗手段として 政治的理由で行われたとも言われています。 8000人のエチオピア系ユダヤ人が イスラエルへ移送されましたが 4000人がその途中で 飢えや襲撃により命を落としました。 この移送で生き延びた人もたくさんいるでしょう。 しかし、生き延びた人も命を落とした人も 政治や、時代の犠牲者であることには 変わりないと思います。 ラストシーンを観たとき この話はこの国の、この地球のほんの一部分に過ぎない という監督のメッセージが聞こえてきた気がしました。 その場所は世界の片隅なんだなと思いました。 そして、私の居るこの場所も世界の片隅。 世界に中心なんてない。 みんな、片隅なんだって思いました。 レンタルDVDにも特典映像として 監督と、シュロモを演じた俳優さんの インタビューが入っています。 これもぜひ観てほしい。 そして、そこで監督も言っているように 物事にはいろんな側面があり 私たちはあらゆる角度から 物事を見る必要があると思います。 映画も作品によって いろんな角度から撮られています。 例えば、私がこの作品と同じくらい衝撃的だった 「パラダイス・ナウ」 という作品があります。 この映画にはパレスチナ側から見た イスラエルが描かれています。 どちらもひとりでも多くの人に 観てもらいたい映画です。

  • oon********

    5.0

    言葉を失いました。

    ユダヤ人に関してはナチの迫害、イスラエルとパレスチナの問題くらいしかしりませんでした。エチオピア系ユダヤ人という方たちについての「モーゼの作戦」について恥ずかしながら初めて知りました。 日本人の一般的価値観には理解できない社会、価値観、感情があり、その中で生きるか死ぬかの狭間で生き抜く人たち、しかも主人公は本当のユダヤ人ではないというさらに複雑な内容でした。全く持って知らない世界で何が起こるか予測不能で緊張感をもって見ました。イスラエルにたどり着いてもユダヤではないとばれてエチオピアに強制送還されるのではという緊張感があり、秘密を持つが故の少年の孤独感と絶望感と怒りの織り交ざった 自閉的で凶暴な感じがとても表現できていました。 監督はこの作品は自分と世界の母親に捧げる作品だと言われていました。 この作品には3人の母親が出ていました。(でも主人公の奥さんを含めると4人になると思いますが)一人目は本当の母親、生きる希望の内世界で一筋の光を求めて子供と一生の別れを告げて送り出す母親。息子を亡くしたばかりで本当の子供と偽って亡命の手助けをしてくれたがイスラエルで病で倒れ主人公を心配しながら亡くなる母親。 そしてなれない土地で心を閉ざす主人公の心を強く温かく支える養母。それでも本当は受け入れることを反対していて葛藤があった事。どれも印象深かったです。 そして主人公の奥さんが白人でそのことでの人種差別問題。なんか語ることが多くて伝えきれない程の映画です。最後のエンディングの実の母親との再会での彼女の声が忘れる事ができません。私も嗚咽しそうになってしまいました。とりあえず余韻に浸りたいです。

  • いやよセブン

    5.0

    黒人のユダヤ人

    1984年、イスラエルはエチオピア在住のユダヤ人を、スーダンの難民キャンプから飛行機で脱出させ、イスラエルに受け入れる“モーゼ作戦”を実行した。 主人公のシュロモ少年は9歳、母親と二人で難民キャンプにいたが、母親は子供を亡くしたばかりのユダヤ人女性に頼み、シュロモをその女性の息子と偽って出国させる。 この母親の息子の将来を思う気持ちはせつない。 イスラエルに入って直ぐにその女性は亡くなり、「あなたはユダヤ人、決して本当のことを言ってはいけない」と言い残す。 この母親が2番目だが、亡くした息子とシュロモをかぶせるところが痛い。 そしてフランス系ユダヤ人夫妻に養子としてもらわれる。 実子として男女一人づつがいた。 この母親が3番目で、同じようにシュロモを守る姿が母という共通概念を思い起こさせる。 映画はシュロモがいろんなトラブルにまみれ、周囲の愛情あふれる支えにより成長していく姿を描く。 自分にとっての祖国とは?この問いかけに簡単に答えられる人は幸せだと思う。

  • tkj********

    5.0

    絆はどこにあるのか

    初めて書きますが、これは、多くの方に観て頂きたい作品だと思いました。 劇場で観た「オーケストラ!」にフルフルするほど感動し、 DVDで観てさらに震えが止まらず、 この監督の別な作品が観たくて検索し、この作品の鑑賞となりました。 本編の前にDVDの特典を観たのですが、そこで監督は 「この映画は、世界の母・女性に捧げるために制作した」 と語っておられて、 アレ?って感じがしました。 この映画って、民族問題がテーマだと思ってたからです。 でも、中盤になると納得してきました。 エチオピアの山中に何千年もの間、 ユダヤ教を信じ聖地へ戻ることを信じて生きてきた黒い肌のユダヤ人がいた。 飢餓と内政混乱に苦しむエチオピアから彼等のみを救出する作戦が 1984年から数回に分けイスラエルによって実行された。 この主人公シュロモは、キリスト教徒であったが、 母は、子供を亡くしたユダヤ教の女性にこの子を託す。 生きてほしいから。 この映画で取り上げてる惨劇、 それは、エチオピアにおいての飢餓とか脱出のための4000人に及ぶ犠牲 エチオピア内で異端者としての差別・迫害が主ではないと思えてきます。 その後のイスラエルにおける人種差別にポイントがあるようです。 安堵感と希望でやってきた国での失望です。 それに加えて、 ユダヤ人と偽って国を出たシュロモにとって 幼い時から秘密を抱えてきた苦しみと自分が何者なのか答えが見つからない苦しみがありました。 自分の国はどこ? 自分はナニ人? 自分はナニ? 主人公の20年以上の自問を自分に置き換えると、 民族ってナニ? 日本って? 日本人って? 自分の存在って? そこに、つながって行くような気がします。 主人公の母は、彼を生かしたかったのです。 寂しいとか、愛してるから傍に置きたいなどといった感情を遥かに超えたもの。 その実母の母の気持を、手を取って国から連れ出してくれた母も育ての母も越えられないことは 充分に分かっていたと思う。   サラが言ってました。 「わたしは、あなたが白人だろうと黒人であろうと、 そしてユダヤ人であろうと、そうでなかろうとかまわない。 シュロモ、あなたを愛したの」 むしろこの映画は綺麗過ぎで、理想を語ってるのかもしれない。 日本の隅っこで家族のことと仕事のことだけ考えてる自分には、 到底分からない民族、人種間の紛争での精神的苦痛、生死の危険にさらされてる人たちが沢山いると思う。 でも、そんな灰の中にある一粒の輝きをこの映画は、 さらに灰を掛けて葬り去ることはしない。 三人の母と妻の愛。 そして、自分の後に続く我が子への愛。 自分がナニ人であろうと、 自分を愛して生かしてくれ人たちと愛し育む小さな命との絆は確かに存在する。 最後の母の叫びは何だったのか? 私は、恨みでも政治に対する怒りでもないと思います。 「感謝」、「喜び」だったと思う。 だって、この母の願いがかなった瞬間なんですよ。(大泣き) ラデュ・ミヘイレアニュ監督、大好きな監督が増えました。 「オーケストラ!」でもそうでしたが、 民族問題の悲劇を伝承するだけではなく(もちろん、大切なことです) そういった悲惨な思いを救ってくれるものは何か? 悲劇を繰り返さないことも大切ですが、 起きてしまったことを治療してくれるものは何か? 問いかけてきます。 都会の片隅で膝を抱えている若者も、 あなたを必要としてる人があることを忘れないでほしい。 余談 民族問題を題材にした映画のレビューは、難しいです。 語っていいのだろうかと思う事もしばしばです。 この監督は、この映画で政治は語ってないと話してましたが、 私も、この映画に関しては、自分の立場で語れるような気がしました。 思い切って、投稿いたしました。

  • mil********

    4.0

    ネタバレただ生きるために

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • oak********

    2.0

    期待はずれの作り話

    娘婿がイスラエル人であり、強い興味を持って見た。 イスラエルには多様な内部対立があり、相当に混乱している。パレスチナの人口増加がイスラエルのそれを上回るという危機意識から、エチオピアのユダヤの末裔と思われる人々の移住を促し、国内では差別してきたことは知られた問題である。あるいは、この映画の主人公夫婦がしきりと「自分らは左派である」と繰返したように、税金も払わず徴兵にも行かない黒衣のユダヤ教盲信者から無宗教者、そしてヨーロッパ系、ロシア系、中東系等々、とても同じ民族には見えないユダヤ人が小さな国に混在している。極東の島国の住人の想像を超えた複雑な問題を抱えていることを多少は知っているだけに、この映画がハッピーエンディングになったことは大変な驚きであり、欺瞞に見えて仕方がない。前半の、やさしい配慮を受けているエチオピア少年の環境適応を過度に拒絶する態度もまったくリアルには見えない。 先日のイスラエル映画祭で上映されたキブツを全面的に否定する「甘い泥」など、本物のイスラエル人が制作した苦渋に満ちた優れた映画の方がはるかに正確に問題解決の困難さを描いている。本作はフランス人の制作したフランス礼賛の異文化ものに過ぎないのではないだろうか。

  • tom********

    3.0

    向学を兼ねて・・・

    日本人には馴染みのないネタだけに、重い内容とは言え「かわいそう」とか「酷い」とかチープな感想しか沸いてこないのが残念。 ストーリーの起伏や緊張感のあるシーも多く、割と観やすい映画なので、あらすじをみて興味がわけば向学を兼ねて観てみのもアリだとは思う。

  • 尾林彩子

    5.0

    母の愛

    9歳で母親以外の家族と死に別れ、その母親とも別れて宗教、習慣の違う見知らぬ国で暮らすことになったエチオピア人少年シュロモ。 出自を隠してユダヤ人と偽って生きなければならない苦悩と、実母とアフリカの大地への思慕の念に苦しみながら成長していく姿に引き込まれていきました。 自分は何者なのか… ルーマニアで育ち、のちにフランスへ渡ったユダヤ人のミヘイレアニュ監督自身の経験と感情がシュロモに投影されて、その苦しみが見る者に迫ってきます。 そして何よりも子を思う母の心。「行って。行きなさい」と、イスラエルに送り出した母の想い。養父の希望を蹴って自分の見つけた道に進むために旅立つ息子に養母は同じ言葉をかけます。「行って。行きなさい」母親たちのただただ息子を想い無事と幸せを願う心に胸を打たれました。 「生きて何かになりなさい」との実母の想いを胸にやっと生きる道をみつけ、自分の帰るべき場所を自覚した時、シュロモはやっと自分が何者なのかの想いから解き放たれたのだと思います。 「これまで自分のアイデンティティーとは何かといろいろ悩んできたけれど子供が出来たときはっきりとわかった。私の国は私の子供だと。私の家は私の子供だと」の監督の想いがシュロモと重なります。 複雑なイスラエルの事情とアフリカ難民の状況を背景に描き出された普遍的な人間愛に感動。

  • じぇろにも

    4.0

    ユダヤ人

    母の愛

  • yam********

    4.0

    エチオピア山中に隠れ住むユダヤ人

    世界の歴史で、驚かされることが山ほどあるけれど、このフランス映画『約束の旅路』でも、私のまったく知らなかった事実が展開されていて、149分間、非常に興味深く鑑賞できた。 まず、驚かされたのは、エチオピアの北部ゴンダールの山中に、数万人のユダヤ系の人々が存在していたこと。 『なぜ、アフリカの山中にユダヤ人の末裔が隠れ住んでいたのだろう?』 古代に、エジプト王が、エジプトからユダヤ人を追放した。 彼らは『十戒』で有名な預言者モーゼに連れられて、エジプトから逃れ、やがてヨーロッパを中心として、世界各国を放浪し、それぞれの国で定着していった。 エチオピアの山中に逃げたユダヤ人たちは、《ファラシャ》と呼ばれ、彼らの伝説ではソロモン王とシバの女王の末裔だと言われているが、ほとんど謎に包まれているようだ。 ただ、太古の昔から、彼らには先祖からの〔言い伝え〕があり、『いつの日にか、我々は聖地エルサレムに帰還できる』と夢見続けていたのだという。 今から24年前の1984年、突如として、《ファラシャ》たちの数千年の夢が叶う日が訪れた。イスラエル本国が、彼らをユダヤの末裔と承認し、本国への帰還を認めたのだ。 エチオピアは親ソ連政権であったため、彼らをスーダンまで呼び寄せた。そして、スーダンから輸送機でイスラエルまで空輸作戦〔モーセ作戦〕が展開されたという。 8000人がイスラエルの地を踏めたが、スーダンまで歩いていくうちに4000人が死亡した苛酷な旅だったらしい。 1991年には、再度作戦が実施され(ソロモン作戦)、10000人の《ファラシャ》がイスラエルに空輸されている。 この大胆きわまりない空輸作戦の背景には、イスラエルの天敵パレスチナの人口増加に対抗しようという思惑が大きかったのだろうが、 『出エジプト記』の記述にある、 『あなたがたを鷲の翼に乗せて私のところへ来させた』 という言葉が、気が遠くなるほどの年月を経て実現されたのも、事実である。 映画は、この空輸作戦のシーンから始まる。 実母の苦渋の愛、養父母たちの人道的な愛に包まれた、一人のエチオピア少年の波乱に満ちた人生を描いているが、日本とは縁の薄いイスラエルという国家を識るのにも役立つ映画だ。

  • Kurosawapapa

    5.0

    感動的一大叙情詩

    この映画は、主人公シュロモの、祖国エチオピア脱出から、イスラエルでの成長という、彼の半生を描いた一大叙情詩です。 これほどまでに、社会的、政治的問題と人間ドラマが合致した、見事な作品は見たことがありません。 それは、この映画はフィクションですが、そうとも言い切れない、史実に基づいたさまざまな問題を含んでいるからです。 ・内戦 ・飢餓 ・難民 ・人種差別 現在まで続くこの苦難の事実は、世界の人々にとっては周知の事実であり、あまりにも痛ましく堪え難いものです。 アフリカや世界に通じる、これらの問題は、近年さまざまな映画にも取り入れられていますが、見る度に、嫌悪感、無力感、そして人間の愚かさを感じ、胸を痛めます。 そして「誰が真のユダヤ人なのか?」というユダヤ民族内の問題。 エチオピア系、ロシア系、ドイツ系、スペイン系、それぞれの出身地ごとに独自の文化を持ち、対立も辞さないユダヤ人社会がこの作品の背景にあります。 シュロモが学生の時に、“赤い肌”を持つエチオピア系民族を差別から解放する宗教的議論を展開し、皆に賞賛されるシーン、 また、シュロモの祖父が、大きな木を見上げ、「あの木は我々の到着よりずっと以前からあった。土地は分かち合うべきなんだよ。」とシュロモに語りかけるシーンが、とても印象的です。 差別を否定し、平和な社会を求める、ラデュ・ミヘイレアニュ監督の強いメッセージが感じ取れます。 この作品では、主人公に更なる苦悩が加わります。 それはシュロモが、自分の出生を人に偽らなければならない、という苦しみです。 「なぜユダヤ人としてイスラエルに住まなければならないのか」「いったい自分は何者なのか」「自分の帰るべき場所はどこなのか」というアイデンティティーの欠如がシュロモを襲います。 幼年期、少年期、青年期と、3人の俳優が、主人公のシュロモを演じますが、特に幼年期演じたモシュ・アガザイ少年の、優しい、でもとても悲しい目が、心に焼き付いて離れません。 シュロモが、人目を忍んで靴を脱ぎ、裸足で歩く時の、解き放たれたような表情。 祖国の土の上を歩いているような感覚を得られるその時だけが、自分を取り戻せた瞬間だったのでしょう。 苦しみにもがく主人公、シュロモ。 この作品の見所の1つに、そんな彼を苦悩から救う、さまざまな賢者達が現れます。 宗教指導者のケス、生きる喜びを説く警察官、養家の祖父、など。 シュロモの前に次々と人情味溢れる人格者が現れ、つらい現実を乗り越えれるよう後押ししてくれます。 彼らのさり気なく喋る言葉の1つ1つに重みがあり、見る側の心に訴えかけます。 そして、シュロモを愛し、包み込む4人の女性達の存在。 生みの母親、脱出同行した偽の母ハナ、養母のヤエル、妻となるサラ。 4人に共通しているのは、気高さ、強さ、そして大きな慈愛です。 特に、養母となったヤエル(ヤエル・アベカシス)の演技は素晴らしく、実に感動的でした。 この映画は、苦難の道のりを描いたものですが、決して突き放したような作品ではありません。 終始どこかで、温かい目でシュロモは見守られているのです。 厳しい現実ゆえ、人の温もりや愛情の尊さを強く感じました。 ラストの、母親が全身を震わせて叫ぶシーンは圧巻! あの叫びは、皆さんどう捉えたでしょうか。 歓びに感極まった老母の声にもとれますが、「これほど苦しい人生に追いやられたのはなぜだ!」という怒りの声にも聞き取れます。 これは、ラデュ・ミヘイレアニュ監督の、社会に対する叫びでもあったのかもしれません。 この映画は、生きる厳しさ、社会的問題、自我の欠如など、心に突き刺さるほどの苦難が描かれています。 しかし、それを乗り越えれるだけの希望も、沢山溢れていました。 心揺さぶられるような感動無くして見れない作品です。 久しぶりに、名作を見た、という感じでした!

  • hi6********

    3.0

    宗教が同じでも、差別は無くならない

    エチオピアのユダヤ人のイスラエル収容を舞台に その政策によって、イスラエルに住む事になった 黒人少年の歴史をしっかりと語られる。 しかも、彼自身は、ユダヤではなく、それを隠した事もトラウマに なっているのも、皮肉で痛烈である。 一見、人道的に見えるイスラエルの難民受け入れも、 その他(ユダヤ教でない難民)は餞別するイスラエルの差別さ、 受け入れ後も、同じユダヤ教信者であるのに、 肌の色での差別、過去の国籍でまとまって生活を崩さずに 民族性は変わらない点での、差別がなくならない現状もしっかりと描けている。 自身の母国が不明であるマイノリティの問題と その弱者であるのに、差別され続ける現状をしっかりと描けています。

  • kos********

    5.0

    ネタバレたくさんのお母さんに愛されて・・

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • cor********

    3.0

    「僕は何処に帰ればいいの?」

    この作品の主なテーマは民族・宗教問題で少々話が難しいですが分からなくても主人公の成長を描いたヒューマンドラマとしても楽しめます。 時間は約2時間半ですが長さをあまり感じさせませんでした。 シュロモを演じた3人の俳優さん達の演技も素晴らしかったです。 この作品をもっと知ってもらいたいと同時にこういった難民が今でもたくさんいる現実を改めて思い知らされました。

  • tee********

    5.0

    世界中の母の愛が、世界を変えるかも知れな

    う~ん、すごいものを観たな、という気分。 なかなか政治的なバックボーンがわからなかったので、 解説も読んで、 さらに、理解。 イスラエルという国を、 僕は嫌いである。 そしてこの作品を観たからといって、 その評価が180度変わると言うことはない。 しかし、 知らないことを、知ったことで、 イスラエルという国も、 彼らなりの道理で、 真剣に生き抜こうとしていると言うことがわかった。 社会主義傾向の強かったアフリカの中でも、 エチオピアニは、 唯一と言われているユダヤ人がいる。 俗にエチオピア系ユダヤ人といわれる人々だ。 彼らは、ユダヤ人であることで差別を受けてきた。 その同胞を助けるために、 アメリカの助けを借りて、 イスラエルが行なった「モーゼ作戦」。 エチオピアからスーダンへ、 彼らは歩いた。 その途上、襲撃、拷問、飢えなどにより、 4,000人が命を失った。 しかし、生き残った中で8,000人が、 スーダンからイスラエルへの飛行機に乗ることができ、 命を救われた。 この物語は、 この「モーゼ作戦」で生き残った、 エチオピアの少年の物語。 彼は、 実の母親に生き残るために、 ユダヤ人であると偽り、 エチオピア系ユダヤ人の女に、 死んだ息子の変わりに連れ出してもらう。 少年は、 実の母からは手離されたと傷つき、 ユダヤ人と偽ることを課され、 黒人であることで差別を受けながらも、 イスラエル人である養父母に育てられた。 その、 何ともいえず複雑な境遇のなか、 あたたかい家族のおかげで、 成長していく。 このイスラエル人の両親が、 実に良い。 自分たちの中にある様々な意識や、 考え方を押し付けるのではなく、 彼を受け入れようとする。 その無償の愛に対して、 少しずつ心を開いていく。 しかし、 彼は忘れない。 故郷のこと。 実の母のこと。 エチオピアから連れ出してくれた義母のこと。 民族、 人種、 政治、 宗教、 戦争、 あらゆる世界が抱える問題が、 この映画には描かれている。 その根本は貧困と、差別だと思う。 それを乗り越えるのは、 やはり、 母の愛、だ。 全世界の母の愛が、 この溝を埋められる、と信じたい。 ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトは言った。 世界中の母親が革命化されれば、世界は変わる。 世界から、戦争、貧困、差別をなくすこと。 この果てしなく長い道のりこそ、 全ての宗教が望む、 約束の旅路であると信じたい。

  • p_m********

    5.0

    しっかり何かを感じさせる作品です

    歴史的背景をしっかり捉えたストーリーだからこそ 感動できるのでしょう。 でも、私自身このモーセ作戦は知らない。 そしてその中で沢山の命が失われた事実もその後の差別のことも 涙し悲しむだけでいいのだろうか・・・という思いと まずは知ることから、その先があるのではないかという思い。 そして伝えること、そういう歴史があったことを そしてまだ世界には、様々な悲しみがおこっているということを スーダンの難民キャンプにいた少年、 実の母と別れ、イスラエルへユダヤ人だと偽って脱出する。 シュロモという名に変え、温かい家庭に迎えられるが 社会は厳しく、差別と偏見の中で 義母の勇ましくも凛とした社会への抗議は心打たれました。 終盤で明かされる事実。 本当は義母はシュロモを引き取ることに最後まで反対していたという事 その秘密を聞くときのシュロモの優しい表情が とてもいいシーンだという印象を持ちました。 自分はユダヤ人ではない。自分が居るべき場所はどこ。 自分があるべき者は何。 キャンプから出るときの母の言葉 「行きなさい! 生きて、何者かになるのです」 その“何者”とはいったい何なのかと 葛藤と苦しみが、私ではとても計り知れないほどの 深い深いものであるのでしょう・・・・ ラストシーンで 医師となったシュロモが国境なき医師団の一員として 難民キャンプで出会ったのは、見つけたものは・・・ 沢山の人に何かを伝えられる とても素晴らしい作品だと思いました。

  • tsu********

    5.0

    狭間に生かされて

    知人から紹介されて、DVDを見てみることにした。 人間は、勝手に「身内」と「そうでない者」の間に境界を設け、争いを起こす。 そして、時にどちらでもない「狭間(はざま)」に生きざるを得ない人々を作り出す。 エチオピアのユダヤ人は、日本でいえば在日朝鮮人・韓国人と比べることができるかもしれない(あくまで、糸口として)。 モーセ作戦についても初めて知った。 イスラエルという国をユダヤ人側から見ることも初めてだ。 イスラエルもまた、一枚岩ではない。 しかし、そういうわたしにとって新規で異質な部分に驚きながらも、 一人の、狭間に生きざるを得ないがゆえに、傷つけられ、心にとげが残ってしまった子が、 周りの人に囲まれ、癒され、支えながら生き通して行く物語だ。 彼自身の苦悩もそうだが、支える周りの人の苦悩もよく描かれている。 養母と、師と、養祖父が素敵だ。 あの師や、養祖父のような歳の取り方がしたい。 ユダヤ人たちの宴もまた、実に楽しげだ。

  • bl2********

    5.0

    いい映画

    なんともいい映画でした。 夜中の4時から観て約2時間30分まったく集中してあっという間に魅了されたました。 それ程この映画は人を引き付けるものを持っています。

  • goo********

    4.0

    これぞ映画の存在価値

    エチオピアに黒人のユダヤ人がいたということからして知りませんが、そのユダヤ人をイスラエル情報機関が、イスラエルに移送したなんことも知りませんでした。“モーセ作戦”というらしい。8千人のユダヤ人が救出されたが行軍等で4千人が命を落したとのこと。 その中にいた少年の物語。その後養子となり人生を送ることとなる。激しいアイデンティティの喪失体験に襲われることになる。日本では考えにくい過酷な人生で、食事も喉を通らない精神的なダメージ、周囲のいじめ、エトランゼ感などこれでもかという不幸が襲う。 ただ、養子先のとりわけ養母の優しさや周囲にも彼を導く人々が現れる。このあたりは少し非現実的なほど優しい人たちを登場させるのがいいですね。過酷な運命VS優しい人々という対比がいい。厳しい現実と人間への希望というメッセージが伝わる。 主人公は三人の役者が演じていてどれも深い孤独感がにじみ出ていて存在感がある。 好きなシーンは恋人と抱き合いウォークマンのイヤホンを片方だけお互いに当てて踊るとこです。一方的に言い寄る恋人の存在もなかなか面白い。 志の高い映画で、これぞ映画の存在価値というような名作ですね。 あまりに立派すぎて満点はつけたくなくなりますが。

1 ページ/3 ページ中