解説
『サマリア』『弓』などで知られる韓国映画界屈指の鬼才、キム・ギドク監督が放つ究極のラブストーリー。世界有数の整形大国といわれる韓国の整形事情を背景に、愛の不安から自分の顔を整形した女性と恋人の激しい愛を描く。顔を作り変えてまで永遠の愛を求めるヒロインに『女は男の未来だ』のソン・ヒョナ。相手役を『許されざる者』で数々の新人男優賞に輝いたハ・ジョンウが熱演。観る者の予想を超えた独創的なストーリーに圧倒される。
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あらすじ
交際2年になる恋人ジウ(ハ・ジョンウ)と深く愛し合いながら、彼が自分に飽きてしまうのではないかと不安にかられるセヒ(パク・チヨン)。彼女は顔を整形することを決意し、ジウの前から姿を消す。半年後、セヒを忘れられず苦悩していたジウは謎めいた美女スェヒ(ソン・ヒョナ)と出会い、次第にスェヒにひかれてゆく。
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映画レポート

「絶対の愛」キム・キドクによる痛烈でグロテスクな愛の寓話
恋人に飽きられることを恐れて、女は美容整形で別人に変身し、名前まで少し変えて別人になる。すると、男も美容整形して顔も名前も変えてしまう。なんたる意趣返し。原題の「Time」に込められたのは、循環性のあるパラドックスだ。永久不変の愛などない、とキム・キドク監督の高笑いが聞こえるようなグロテスクな寓話だ。“絶対の愛”を求め過ぎた男女は、互いに愛を見失ってしまう!
ヒッチコック監督の「めまい」で、愛する女を失った男は街で彼女とそっくりな女(実は同一人物)と出会い、髪型や衣装を外見上過去の女と同じように変えさせる場面があるが。この映画も悲痛さにおいて同じに感じる。
愛において外見はまぼろしでしかない。まるで洋服でも変えるように、美容整形外科へと走る、外見を着飾る人たちへのキドク監督らしいシニカルな苦笑が見てとれる。
セックスをモチーフにした彫刻や女の仮面(ゾッとする)など、シンボリックな“記号”を随所に配した、いつもながらの小気味いい話術に舌を巻く。映画では性器を整形していないので、セックスすれば相手が分かろうというものだが、ロアルド・ダールの短編小説のような超一級のブラックユーモアを味わえるだけに、突っ込まないでおこう。(佐藤睦雄)
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2007年3月8日 更新