ここから本文です

ハリウッドランド (2006)

HOLLYWOODLAND

監督
アレン・コールター
  • みたいムービー 115
  • みたログ 358

3.05 / 評価:82件

俳優からの旅立ち。キャリア分けた重要作!

  • gypsymoth666 さん
  • 2013年3月3日 20時31分
  • 閲覧数 1131
  • 役立ち度 10
    • 総合評価
    • ★★★★★

今年度アカデミー作品賞受賞した映画『アルゴ』。製作・監督・主演を務めたベン・アフレックは作品賞でプロデューサーとしてオスカー像を握り締め、空いた手で全身を使いながら瞳を赤らめ、緊張と興奮と喜びを溢れさながら感謝の言葉を述べた。そこには映画に夢を抱き続ける“少年”のようなやんちゃさ、ナイーブさが彼の空気感にはみてとれた。
今回、アフレックが演技者としてはじめて国際的に評価された同作を鑑賞しながら彼はこの中である意味、自分自身をある試みをもって演じていたことに気付かされる。

本意ではないスーパーヒーローとしての役どころを、大きな野心を抱えつつ性格俳優などとしては輝けない、50年代に活躍した元祖スーパーマン俳優、ジョージ・リーブスをアフレックが演じる。善良で愛され正義感あふれるスーパーヒーロー以外演技者としての幅が見出せない主人公をあえてアフレックが演じたことこそ、同作の大きな魅力であり奥行きを広げたと考えられる。なぜなら彼こそ『アルマゲドン』の主人公、マーベルコミックのヒーロー『デアデビル』であり、『トータル・フィアーズ』の三代目ジャック・ライアンと数々を彼は演じてきたからだ

しかし残念なことにそれらのヒーロー像もいずれもシリーズ化されるほどの印象を彼にはもたらさなかった。そんな中、引き受けたこのジョージ・リーブス役。彼の中では何か、今までとこれらからの分岐点として過去に生きた一人の悩み多き俳優に自分を託して演じているような雰囲気が伝わってくる。

1950年代のハリウッド。テレビシリーズ・スーパーマンの主演俳優であったリーブスがハリウッドの自宅で死亡。頭部には弾痕が残されておりロス市警は銃による自殺と断定。リーブスの母は息子の死を“自殺”と信じられず、私立探偵ルイス(エイドリアン・ブロディ)に捜査を依頼し真相に迫る。
「こんな青と赤の服なんて…」と子供しか見ていない番組の主人公を嫌い、もっと大人の鑑賞に堪えられるドラマの主演や監督などを目指していたリーブス。しかし根の優しさと素朴さこそが、彼がスーパーマンを演じる説得力であり、演技の幅が広げられない理由だった。また当時のテレビの影響は絶大であり本当にブラウン管の外でもリーブスは超人であると信じて疑わない子供は彼に銃を向け、それを恐れながら優しく危険性を呼びかけ、笑顔を子供たちに広げてしまうリーブス。実際にリーブスはそうだったのであろうと思わせるほど、アフレックは増量したと思われるレスラーのような体に垢抜けない表情で才能と素朴さと野心が絡み合い、ゆえにスターとしての本当の才能への疑惑と、スーパーマンのイメージの固定化に苦しむ。
ルイス演じるブロディは『戦場のピアニスト』でアカデミー主演男優賞を受賞してしまったが、あの極限まで戦場で追い詰められた骨と皮だけのピアニスト以上の役どころに今まで出会えていないように、今作でも一匹狼のワイルドな私立探偵はどこかいまひとつ貫禄乏しい。しかし私立探偵が一生をささげる、家庭を守りながらできる仕事なのか?という迷えるまなざしはさすがに、一級の演技をみせる。

この映画は主要な三人の登場人物に感情移入することはなかなか難しい。なぜならそれぞれに弱みや独りよがりがあらわになるほか、基本的に名誉欲、金銭欲、独占欲に満ちているからだ。しかしそれが疑いもないハリウッドという大陸の真実であることを、同作品は淡々と観客にこびることなく伝えてくる。

リーブスは自らの才能を信じ、金目的の若い女優との生活を始めながら監督としてのキャリアを模索する。髪に白いものが混じり始めても彼が信じる自分自身の才能に振り向いてくれる存在はなかった。その悲哀がどうしても俳優としての幅に惑う素朴さ漂うアフレックと見事に重なる。その果てにあったリーブスの寝室での一発の発砲音。それは事件の真相を追うルイスにとって本当に大切なものは名声や富ではなく、家庭であることへと気付かせる。観客にも本当の幸せとは何か?さまざまな欲望を追い続けても、本当にある幸せは隣にいる人々との穏やかな時間であることを静かに語りかけてくる。

同作でアフレックは、人生の皮肉や悲しさにも敏感なヴェネチア映画祭男優賞を受賞する。自身の歩みと彼が考える自らを総括しリーブスに重ね合わせた勇気こそに贈られたものと考える。結果、アフレックはリーブスのようにハリウッドで生きることに挫折し命を絶つ(とされる)ことは役柄に託し、監督としての歩み今年映画界の頂点に立つ。
そういう流れを踏まえると、この作品はアフレックの新たな一歩を踏み出すための、俳優としての過去を清算する、新たな出発点の一本と思えた。今後さらに飛躍するアフレックのキャリアには極めて重要な隠れた作品となるに違いない。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 笑える
  • 楽しい
  • 悲しい
  • ゴージャス
  • ロマンチック
  • 不思議
  • 不気味
  • 恐怖
  • 勇敢
  • 知的
  • 絶望的
  • 切ない
  • セクシー
  • かっこいい
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ