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ハーフネルソン (2006)

HALF NELSON

監督
ライアン・フレック
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3.18 / 評価:215件

愚行権とパターナリズムの話かな?

  • raz******** さん
  • 2021年4月25日 14時11分
  • 閲覧数 121
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

セリフが少ない映画。
なので登場人物の心情を想像するのがすごく大変。
個人的にはそういう映画は大好物。

なのだけれども、そういう映画ではたいてい判りやすいキーアイテムやキーワードを登場させてそこから何か類推させるとか工夫があるものなんだけど、この映画は出てくるキーワードが難しくて正直なところちょっと話についていけないw



この映画の主人公は、中学校で歴史を教えるイケメン教師で生徒からも人気があるんだけど、しかし、麻薬依存のジャンキー。

彼はリベラル思想の持ち主であり、さらには東洋の陰陽思想を持ちだして西洋的な正義と悪の二元論を否定する。映画の中では彼の思想信条が何度も語られているが、その思想を追求すると必然的に彼の思想は愚行権の肯定につながると僕は思う。

愚行権はジョン・スチュアート・ミルの「自由論」に出てくる概念で、ソクラテス以来の「善く生きる」倫理観と対立するものであり、麻薬とか明らかに愚行と考えられるものでも、その人の自己決定にゆだねるべきだという思想らしい、wikiによるとw

この映画の主人公がジャンキーだってのも愚行権の行使に思えるが、しかし、主人公自身が映画の中盤において授業中に生徒たちに語ったように、その愚行は自身によって制御可能でなければいけないだろう。平たく言えば酒は飲んでも飲まれるなということ。

主人公の同僚の先生から「防弾チョッキをナイフで刺した」という珍事件の話があったが、それはまさに愚行権の行使といえる。



愚行権を話題にするときに欠かせないのがパターナリズムで、国家とか専門家とか分別のある偉い人たちが愚かなことをする愚かな人たちに対して介入や干渉をしてその愚かな行為を辞めさせることをいう。法律で麻薬を禁止にして辞めさせることもパターナリズムの一つ。

この映画を見ると、”主人公は麻薬を断つべきだ”と誰だって普通に思うはず。主人公自身も自分の生徒が麻薬ディーラーに近づくことを嫌悪した。そして、ディーラーに対して”あの子に近づくな”と警告した。

ところが、主人公がディーラーに”もっとまともな職に就け”と言うと、ディーラーが”白人はいつだって正義を振りかざす”と応戦したため主人公は何も言えなくなってしまった。主人公は陰陽思想に感化されていて、正義と悪の二元論を否定している。それゆえ何も言えなくなった。

ただし、生徒は未成年であるからして、パターナリズムによって守られるべき対象であるから、生徒を守るのは先生としての義務であり、”あの子に近づくな”という主張は正当性を持ち、それについてはディーラー側もまともに反論ができなかった。

なので冷静に見ると、両者の口論は引き分けに終わったと個人的には思う。

ここで重要なのはパターナリズムには限界があるということ。ただし、かなりアメリカ的な考え方ではある。国家であっても間違いを起こす可能性はゼロではないことに起因していると思われる。

主人公の同僚の先生が”コンピューターエラーのせいで大量に落第者が出た”という話をしていた。人間は完ぺきではないという趣旨のことを主人公が授業で語った直後でのシーンだった。



このように愚行権とパターナリズムがこの映画の中心命題になっていると僕は思う。

結局、主人公はラストシーンにおいて自身の生徒に救われた。
それは立場の弱いものが立場の強いものを救う形になっており、
パターナリズムが逆転している。

パターナリズム(父権主義)の対義語はマターナリズム(母性主義)というらしい。wikiには「相手の同意を得て、寄り添いつつ進む道を決定していくという方針」と書かれている。

主人公のことを救った生徒ドレイは、父親が家族を顧みない人物で、いつも家にいなかった。この映画を見ている最中は、ドレイは主人公に父親代わりになってほしかったように見えたが、主人公も主人公で”母”を欲していたのかなと、パターナリズムとマターナリズムの違いから類推してしまうようなエンディングだったように思う。

ラストシーンでは、主人公がドレイにジョークを言っていた。”knock knock the interrupting cow”というアメリカでは有名なジョークらしい。相手の話を遮って Mooo と干渉するジョーク。

パターナリズムは相手に干渉していくという意味だから、そのジョークから主人公の心情が読み取れる。



ここまで書いて、どっと疲れたw
でも悪くはない疲労感。こういう映画もあるんだね。

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