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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 (2007)

監督
摩砂雪
鶴巻和哉
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3.67 / 評価:2499件

『大した事やってない、だから凄いんです』

  • zin***** さん
  • 2007年11月30日 20時18分
  • 閲覧数 372
  • 役立ち度 109
    • 総合評価
    • ★★★★★

12年前。
某月刊コミック誌で連載をしていた。
田舎から毎月原稿送って。
そして、新連載が行き詰まっていた。

見かねたのだろう、編集部の担当さんが、
『東京では、エヴァンゲリオンが流行りつつありますよ。』
と紹介してくれた。

アイデアが出ない時、
私がとにかくアニメを観まくって、何とかイマジネーションと
閃きをこじ開けていた事を知っていたのだろう。

『ちょっと、とっつき難い作品ですけどね、
好きな庵野さんが演ってますよ。』、そう付け加えてくれた。

その頃、レンタル屋さんには1と2巻が1本ずつ。
しかも借り手なし。 そんな頃もあったんだなぁ。

始めは、確かに庵野さんらしい、
凝った、また突き放した作品とは思ったが、
正直、『間口の狭い、暗く重い作品だ。』と思った。

そして…ついに、“ヤシマ作戦”に出遭った。

これまで、何処か堰に溜まっていた様な、
シンジという感情が全部伝わってきた。 驚いた。

綾波レイと云うキャラクターの威力だ。

レイの感情に圧し出されて、シンジが見えてきた
…そんな感じだった。
2人のなんと小っぽけな、なんと悲しそうな事か。

それが、あの壮大なオペレーション“ヤシマ”に、
織り込まれ、2人の生まれ出る感情と共になり、
見事な1つの作品になっていた。

『エヴァは大した事はやってませんよ。
でも、だから凄いんです。』
担当さんは、編集部の分析を聞かせてくれた。

話そのものは至って判り易い。
だからこそ、周りを思いっきり複雑で判り難く出来るし、している。
それによって、高尚さと探究心をくすぐった作品…だそうだ。

そして忘れてならないのは、エヴァは“説明をしない”事。

巨大兵器のパイロットに“資質”だけで選ばれる主人公。
強さも決断力もない。 あるのは繊細さとキレ易さ。
誰もが選ばれ得る事を彷彿させ、我々に擬似体験をさせ易くする。
時代に主人公を合わせただけで、
やってる事は、セオリー通り。

問題はその見せ方だ。
エヴァには、とてつもないバックグランドと、裏設定がある。
それはとても難しい…様に見える。
これがクセ物だ。

エヴァはそれらに軽く触れたり、臭わせたりするだけで、
ちゃんと説明する事はまずしない。
何故か?

一般論として聞いて欲しい。
設定を全て説明してしまうと、矛盾や嘘臭さ、
もっと言えば、大した設定でなく醒めてしまう事がある。
誰もが考えつかない設定は、そうそう出るものじゃない。

ならば逆に、説明せずに臭わすだけに留めては?
そして、謎の積み重ねによって、品格と世界観を保てば?
“説明は必要最小限で、あとは受け手の想像力を刺激する”

実際、【エヴァ】の謎の多くは解けなかった。
解く気などなかったかの様に。

普通ならこれで、12年も生き延びる訳がない。
しかし、エヴァはディティールとアクションのクオリティー、
その発想の大胆さ、天井知らずさがそれを打ち破った。

もう1つ。
嫌な言い方だが、とっつきの悪い作品には“エサ”が必要だ。
ミサト、レイ、アスカ…。
【トップをねらえ!】では“垢抜けない”と、
キャラがボツになった貞本さんが、
よくこれ程、線の細い美少女キャラを創ったものだ。

随分、苦労されたのだろう。
でなければ、自分の画を変える事など絶対出来ない。
各キャラの生きの良さと、身につまる感情感覚も逸品だ。

とにかく12年後にも【エヴァ】は甦った。
今回はTVのストーリーと同じだから当然だが、
“見せ方”はちっとも変ってなかった。

相変わらず、判り易いものはキチンと伝わり、
判り難いものは適当に放って置く。
凄いのは、その“見切り”の確かさ、
そしてその“見せ方”が今でも“新しい”事だ。

実際、エヴァを真似た作品(漫画も含め)も幾つか出たが、
形だけの真似で、この“見せ方”には出会わなかった。
誰もが出来る事ではない。
感性の成せる技だ。

今回、作画素材は基本的にテレビ時のものなので、
最初は、鈴木さんの作画に少々物足りなさを感じたが、
クライマックスはさすが。
松原さん、黄瀬さん…貞本さん、皆で作画を高めて、
見事にヤシマ作戦をリニューアルしてくれた。
(個人的には、本田雄さんのキャラが見たいのだが)

そして今回見事なのは、
シンジとレイが背負っているもの、求めているものが、
とても近いと云う事が、色濃く表現されている事だ。

これが“ヤシマ”だ。 描くべきものがここにある。
求めていた【エヴァ】がここにある。

ようやく、我が田舎でも公開が始まり、やっと観る事の出来た【エヴァ】。
勿論、エンドロールで席を立つ者などいない。
圧巻されているのだ。
それを信じて、皆と共に【破】を待つ。
これが【エヴァ】だ。 夢中にならずにいられない。

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