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ミルコのひかり
2007年9月8日公開

ミルコのひかり

ROSSO COME IL CIELO

1002007年9月8日公開

Kurosawapapa

5.0

視力がなくても無限の “想像力” がある

主人公の少年ミルコは不慮の事故で視力を失ってしまい、暗闇での生活を余儀なくされます。 この映画は、現在イタリア映画界の第一線でサウンド・デザイナーとして活躍するミルコ・メンカッチ氏の少年時代の体験をもとにした作品です。 盲目の少年がいかにして“音”と出会い、理解者に支えられながら希望を取り戻していったかが、感動的に描かれています。 当たり前として備わっているものが、ある瞬間から無くなってしまう、 そんな世界は想像を絶します。 しかし本作は、 視力を失い厳しい情況に立たされたミルコを、 悲観的ではなく、最後までポジティブに希望を絶やすことなく描いています。 生まれた時から目の見えない友人がミルコに質問します。 「色ってどんなもの?」 「きれいだよ!」 「青ってどんな色?」 「自転車を飛ばした時に顔にあたる風の色さ」 生まれながらに目の見えない人は “色” さえ知らない、 そんなところは、とてもいたたまれませんが、 本作で描いているのは、むしろ彼らの前向きな “想像力” です。 ミルコは「視力」を失っても、より優れた「聴力」と、無限に広がる「想像力」をもって、 新しい世界を切り開いていきます。 この作品の中には、盲学校の生徒達が映画館に行くのを楽しみにするシーンがあります。 生徒達のほとんどは、実際に目の不自由な子供達をキャスティングしたそうですが、 彼らの希望に満ちた明るい演技には、とても心打たれるものがあります。 映画館に行った彼らは、とても楽しそうにはしゃぎます。 生き生きとした彼らの顔、顔、顔。 音だけの世界に生きていても、無限の “想像力” をもってすれば、 世界は果てしなく広がっていく、 そんなシーンに思わず感動してしまいます。 また本作は、 目の見えない子供達を取り囲む大人の世界を絡めながら、 障害者の “自由” と “可能性” というテーマにアプローチしています。 障害者を保護するための “制約” と、障害者の “自由” については、 多くを論じられるところでしょう。 その間に線引きはできずとも、 この映画では、夢や希望だけは決して奪ってはいけない、 そんなことが語られています。 最後に、 “想像力” に目覚めた子供達は、観衆に目隠しをしてもらい音響劇を披露します。 感動のクライマックスへ、一歩ずつ登り詰めていくような流れです。 この作品を鑑賞していると、 当たり前のことが、当たり前でない特別なものになってくる感覚があります。 聞こえるということ、 触れるということ、  そして親子の絆や、 人の優しさ、 思いやり、 目が見えていた時でさえ見えなかったものが、ミルコには見えてきたのでしょう。 この映画は、 いつしか当たり前になっていたことが、いかに大切なことかを、 実感させてくれる作品。 そして、彼らの果てしない “想像力” に、 多々心奪われてしまいました。

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