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酔いどれ詩人になるまえに (2005)

FACTOTUM

監督
ベント・ハーメル
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3.68 / 評価:98件

解説

世界中でカルト的人気を誇るアメリカ文学界の異端児、チャールズ・ブコウスキーの本人の“作家修行時代”を映画化。飲んだくれでいい加減、仕事も長続きしない自称“作家”のさえない日常を、ドライな笑いを交えて描く。監督は、『キッチン・ストーリー』で一躍脚光を浴びたノルウェーの俊英ベント・ハーメル。ブコウスキーの分身ともいえる主人公を、『クラッシュ』でオスカー候補になったマット・ディロンが好演している。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

売れない詩や小説を出版社に送り続ける自称“詩人”のヘンリー・チナスキー(マット・ディロン)は、その場しのぎの仕事で食いつないでいた。ある日、バーで知り合った女ジャン(リリ・テイラー)と暮らし始めるが、酒とセックスばかりのさえない毎日。何をしても続かず、原稿依頼もこない中、彼女にも捨てられてしまう。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C) 2005 MARK HIGASHINO PHOTOGRAPHY, INC
(C) 2005 MARK HIGASHINO PHOTOGRAPHY, INC

「酔いどれ詩人になるまえに」野卑なのに知的、ぶっきらぼうなのに愛おしい

 人はドラマを見るモノサシとしてリアルという言葉を多用するが、本当にありのままの生き様という奴は、かなり醜悪でみっともない。剥き出しの人間を書き綴って伝説となった米国文学の無頼派チャールズ・ブコウスキーの作品は、活字でこそ成立しても映像化には不安もよぎった。荒ぶる魂には共鳴するが、社会に背を向けた呑んだくれの日常を見せられても、たいてい目を覆うばかりだから。しかし、元アウトサイダーな中年男マット・ディロンの無骨な身体と暴発寸前の演技が、愛すべき佳作へと導いてくれた。

 ブコウスキーが肉体労働しながら放浪していた日々をモチーフにした本作は、組織に耐えられず仕事を放り出し、金が底をつくまで酒と女とギャンブルの日々に溺れることの繰り返し。世の中に向かって心の底で「くそったれっ!」と叫びながら、ただ、自ら定めた表現の道“書くこと”だけは投げ出さない。自分の可能性を信じつつ、自堕落に生きるパンクな魂に惚れぼれする。野卑なのに知的、ぶっきらぼうなのに愛おしいのだ。

 彼のどん底人生を見て、社会不適応者として眉をひそめるか、人生を諦めなかった荒くれ者としてリスペクトするか、観る者の価値観が問われている。常識に染まらず、自己を保ちながら、絶望だけはしない前向きな現実逃避の日々。やってられない格差社会の荒波を積極的に生き抜く上でも、ブコウスキー・イズムは素晴らしき手本になるだろう。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2007年8月16日 更新

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