黒い男たちと同じ時代を生きる人たちへ
- 諸星大五郎 さん
- 2007年11月3日 1時07分
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私の親父たちの時代に鈴木清順の「けんかえれじい」があったように、私の時代に石井聰亙の「高校大パニック」があったように、2000年後半を生きる若い人たちに今「クローズ ZERO」がある。
私の歳で言えば、ヤクザの親分を演じた遠藤憲一に思い入れがある。私とほぼ同世代、61年生まれ。映画で言えば89年の「その男、凶暴につき」で初めて注目した人。一気に感情を爆発させる脆い男を演ずれば当時ピカイチの役者。
本作でも短い時間ながら、その存在感。
あれからもう20年近くたつが、彼の出た映画を私はいくつ観てきたのだろう。
「自虐の詩」でも感じたが、まったく良い役者さんになったなぁと感慨深い。
今の若い人たちはこの「クローズ ZERO」を演じた青年たちと、映画を通じて同時代を生きていく。
小栗旬、山田孝之、桐谷健太、高岡蒼甫。
こういう人たちがやがて30歳になり40歳になり、そして遠藤憲一の歳になる。
映画で成功する人、脇で終える人。それぞれの人生の岐路はあるだろうが、中年を過ぎ彼らはどんな役者になっていくのだろうか。
彼らが私の歳になるころまで、私は生きていられないだろうことが、少し淋しくて悔しい。
それほど「クローズ ZERO」の黒い学ランの男たちは眩しい。
クライマックスは蒼い画面にどしゃぶりの雨。
なんだか「七人の侍」のクライマックスを思う。
あの映画はモノクロだったが、本作の戦闘シーンの男どもも、黒づくめだ。
黒い傘を投げ出して、両陣営、いっせいに激突する。圧倒的なそのパワー。
ワイヤーアクションでもなく、GCアクションでもない。
殺陣さえもない、生の若い男どもの力のせめぎ合い。
ストーリーはまるで「三国志」のようだ。蜀の熱き劉備とその義兄弟たち、魏の冷徹な曹操と優秀な副官たち。本作のふたつの勢力は滝谷と芹沢。その盟友たちも含め、キャラが立っている。きっと誰もが、誰かを好きになる。
「誰もが誰かを好きになる」 これこそが、優秀なアクション映画の共通項。
定石をきっちり踏まえ、黒の世界のアクションを、生身の力として描いた三池監督にも私は拍手をおくる。
三池崇史も私と同世代の男。
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