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ヘアスプレー (2007)

HAIRSPRAY

監督
アダム・シャンクマン
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4.17 / 評価:2,155件

きっとこれは大丈夫。安心して観られるはず

試写会で観ましたが、とにかくハッピーな気分に浸りたいという人には自信を持ってお勧めします。難しいことは何も考えず、単純に楽しめる最高レベルのミュージカル映画です。多少重いテーマを扱ってはいますが、素晴らしい歌とダンスの連続で、観客に暗いムードを一切与えないパワーがみなぎっています。おそらく誰もが安心して観られる映画というのは、こういった映画のことをいうのではないかと思います。

なお、他の方も書かれていますが、1988年製作の同名映画『ヘアスプレー』のリメイク作品です。さらに言うと、そのオリジナル映画を基にした「ミュージカル」がブロードウェイでヒットしたために、再度映画化されることになったそうです。その意味では、最近多いミュージカルで成功した作品の映画化(『シカゴ』や『ドリームガールズ』など)と同じ範疇に入ると思います。

映画の内容は、当初予想していたようなおバカ一辺倒というわけではなく、人種差別の問題を織り交ぜてあり、かなり真面目な一面も持った、なかなか奥の深い映画です。たとえば、エルビス・プレスリーが黒人音楽(R&B)によって成長し、それがのちの成功の足掛かりとなったように、ダンスの世界でも黒人文化の影響が多大であった点などが忠実に描かれています。

ただし、人種問題を絡めているといっても、決してシリアスになりすぎず、かと言って軽すぎずといった程よい感じに仕上がっていますので、過剰な押し付けがましさはさほど感じないで観ることができるのではないでしょうか(ちなみに、そのあたりのさじ加減というか、差別反対のメッセージの盛り込み方がなかなか絶妙なので、おそらく米アカデミー賞の賞レースにも絡んでくることでしょう)。

あと、これも何人もの方が書かれていますが、キャスティングがとにかく最高です。1000人を超えるオーディションから選ばれたという主役の女の子(ニッキー・ブロンスキー)は、本当に「10年に1度の演技」と言っていいほどの怪演です。もともと太めとはいえ、おデブキャラを見事に、またなかなか可愛らしく演じきっています。

また、同じミュージカル映画『シカゴ』への出演オファーは断ったはずのジョン・トラボルタも、十分に米アカデミー助演女優賞(?)を狙えるだけの演技&ダンスでした。あとは、『ハイスクール・ミュージカル』で一躍脚光を浴びた、ザック・エフロンがなかなか良いと思いました。彼は今後大ブレイクの予感がします。

ところで、この映画の「1962年」という時代設定に加えて、「ボルチモア」(メリーランド州最大の都市です)という舞台設定がとても上手いと感じました。仮に映画の舞台が現代だとしたら、この映画の設定は、かなり胡散臭くみえてしまっていたことでしょう。以下は多少マニアックな話ですが、まず60年代の前半とは、アメリカの戦後黄金期の最終盤であるとともに、公民権運動が最高潮を迎えつつあるなど、まさにアメリカ的価値観の大転換が起こっていた時代でした。事実、キング牧師の「I have a dream.」という有名な演説を生んだワシントン大行進が起きたのは、翌1963年のことです。それゆえ、この映画でも、のちの公民権運動の高まりが上手く暗示されているわけです。

また、ボルチモアという土地柄については、ボルチモアのあるメリーランド州が、南北戦争中、南北の「境界州」であったことを比喩的に描いています。つまり、奴隷州ながらも北部「アメリカ合衆国」に留まったメリーランド州は、まさに人種問題の中間地点とも呼べる場所であって、公民権運動の賛成派と反対派の両者が入り乱れた状態を説明するにはぴったりの舞台だったわけです。実際、この映画では、国論が二分されていた当時の世相を、絶妙に表現できていたように思います(ちなみに、メリーランド州のすぐ下のバージニア州は南軍、逆にメリーランド州のすぐ上のペンシルベニア州は北軍でした)。

長くなったのでまとめますが、この作品に文句をつけるのはもはや無粋に思えるほど、突き抜けた気持ちよさや爽快感のある映画です。おそらくミュージカルに過大な芸術性を求めるという人や、コメディ調のミュージカルを体質的に受けつけないという人以外は大丈夫だろうと思います。もちろん、親子愛や夫婦愛、そして友情や恋といった、人生のすべてがハッピーでバラ色なわけがないと怒る人は中にはいるかもしれませんが、もともと映画というのは、人々に夢を与えるためのものでした。そう考えれば、たった2時間足らずの「つかの間の夢」を見るのもたまにはいいのではないでしょうか。

最後に、この手の映画は、できれば映画館で観て、多くの観客の皆さんと一緒に笑ったほうが断然楽しいと思います。冒頭にも書きましたが、とにかくハッピーな気分になりたい人には是非ともお勧めします。

詳細評価

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音楽

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