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スパイラル・バイオレンス (2006)

BOSQUE DE SOMBRAS/THE BACKWOODS

監督
コルド・セラ
  • みたいムービー 9
  • みたログ 35

2.36 / 評価:11件

真摯な暴力映画。「わらの犬」好き必見!

  • go_mad さん
  • 2007年10月4日 11時32分
  • 閲覧数 608
  • 役立ち度 17
    • 総合評価
    • ★★★★★

まったく知らずに観たけど、
これは完全に「わらの犬」のリメイクじゃないか!
(ちなみに「わらの犬」は私のだいっ好きな映画)

しかも換骨奪胎リメイクではなく、
あくまでも伝えたいのは
「わらの犬」のメッセージに対するオマージュだ
という意図が伝わるリメイク。

(リメイク、リメイクと書いているが、
パッケージ観ても予告編観ても
「わらの犬」との関連は見あたらない。
でも、「影響を受けた」というには
あまりにも似すぎているので、
あえてリメイクと書かせていただきます)

「わらの犬」との違いは
まず、主人公夫妻に対する友人夫婦の存在。
この友人夫婦の夫役が
ゲイリー・オールドマン。
人物設定も知名度的にも、
完全に他の登場人物を食ってしまっているし、
パッケージもこの人物をメインに据えているため、
当初この人物が主人公だと錯覚してしまう。
この夫は、非暴力的で弱々しい夫に対し、
判断力とサバイバル能力に長けた人物。
この「わらの犬」にはなかった存在が、
主人公との対比に使われている。

それから、「二十日鼠と人間」を思わせた
あの知恵遅れの青年に変わって、
監禁された少女が登場する。
この少女については
最後まで説明されないけど、
会話の中から推し量るに
村の有力者の男と、その妹の
近親相姦によって生まれた子供だ。
(少女は手に奇形がある)
「わらの犬」では、空気で表現されていた
“閉鎖的な村”をよりわかりやすく印象づける。

最も興味深い違いは、
オールドマン&主人公の変貌とその末路だろうと思う。
村人の暴力に対し、迷わず即暴力で反撃し
自らを守るオールドマンは、
物語中盤であえなく射殺されてしまう。
その時の彼は、静かで、諦めきった表情だ。
暴力を行使する男は、暴力を知っている。

対する主人公夫妻。
「わらの犬」のように、
夫が屋外で銃を担いでぼーっと岩に腰掛けている。
その隙に村人が家に押し入り、
妻をレイプしようとするが、
いざことに及ぼうとする瞬間に夫が帰ってくる。

夫は村人を撃ち殺す。

この非暴力主義者の最初の暴力は、
突発的で、本人にも自覚のないまま行われる。
ダスティン・ホフマンのように
追いつめられ、緊迫した状況の中で解き放たれていく
内なる暴力性の目覚めとは別質にのようにも思える。

 ちょっと話はそれるけど、
 その直後の夫妻と友人の妻の3人のシーンが好きだ。
 混沌とした雰囲気がなかなかリアルで面白い。

その後、夫は二人の女と監禁少女を連れて
雨の中を遠く離れた警察に向かい、
途中の民家で宿をとる。

ここまでの行程の中で、彼は自分が犯した殺人を
悔いているように見える。
だけど、実際は、暴力の余韻を
楽しんでいたのではないかと思う。
妻に蔑まれ、夫婦関係も冷めつつあった男が
体験した圧倒的な力の行使。
民家のベットに寝ころんで
「いいもんだ」だか「いいところだ」だか言うシーン。
彼はダスティン・ホフマンが
「帰り道がわからない」と言った場所に今いるのだろう。

それからの彼は陳腐なヒーローを気取る。
彼ら(少女)を追ってきた村人たち。
村人に忠実なだけで、悪意のかけらもない
頭の弱い青年までも問答無用で撃ち殺してしまう。
彼はゆがんだ正義をふりかざして
暴力に酔う殺人者と化してしまう。
村人との対決シーンで、
監禁少女は彼の元から逃げ、
村人(父親)の元へ走りしがみつく。
頼ってくれるはずの妻は必死で制止しようとする。
彼の中の狂った正義は崩壊し終焉を迎える。


ペキンパーの「わらの犬」は、傑作だった。
強烈で重苦しく、理解されづらいメッセージを、
少ない言葉や、ありふれた設定の中でも
くっきりと印象づける演出、出演者の演技が凄い。
「スパイラル・バイオレンス」は
質の高いリメイクだと思うけど、
やはり「わらの犬」にはある、あの緊迫感に欠ける。
どうせなら、もう少しオリジナルな設定にすれば
全く別の作品として評価できたのにな・・・。

詳細評価

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配役
演出
映像
音楽

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