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歩いても 歩いても (2007)

STILL WALKING

監督
是枝裕和
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  • みたログ 2,955

4.03 / 評価:1,140件

会話の言霊が生み出す、底知れぬ奥行き感

  • Kurosawapapa さん
  • 2008年10月15日 20時47分
  • 閲覧数 1779
  • 役立ち度 63
    • 総合評価
    • ★★★★★

よく、静かな余白が、多くを語る作品がありますが、
この映画は、“家族の会話” が全てを語り、濃厚な味を醸し出しています。
それは、世間一般にある、ごく平凡な家族の会話。

ですから、この映画を御覧になる方は、
誰もが、この作品のどこかに、似たような自分を見つける事ができるでしょう。

なんとなく始まり、なんとなく終わる家族の情景の中で、
なぜ、こんなに普通の会話に引き込まれるのか、、、
とても不思議なものがあります。



長男の命日に、父母が住む実家に里帰りした、
次男(阿部寛)家族の3人と、長女(YOU)家族の4人。

この映画は、
自然に囲まれた静閑なたたずまいの中、3世代にわたる家族による、
夏の2日間を描いた作品です。



わずか114分間の上映時間ではあっても、
そこには、とても長く感じることのできる、時代の流れがあります。

家は古くなり、親は老い、
立派に育った子供達に代を譲り、
そしてまた子供も、親と同じ道を辿る。

時が経っていくのは、とても儚いものがあります。

私が、面白く感じたのは、
確執があり、父に抵抗のある息子(阿部寛)が、
「融通のきかないところは、父さんそっくり」と言われるところです。

年をとると、気嫌いする父親であっても、そんな父に似ていってしまう。
中年になった私自身も、最近よく言われる言葉です。
とても実感した一台詞でした。

時代は繰り返し、家族もまた繰り返しているかのよう。



また、
家族とは、とても大切なものだと十分わかっていても、
時に、辛かったり、煩わしかったり、悲しくなる時があります。

この映画で描かれたのは、家族ゆえの、ぎこちなさ。

・子連れの嫁をもらった次男。
・血の繋がりのない親子。
・嫁と姑。
・そして、老父と息子。


なぜ、家族なのに、どこか上手くかみ合わないのでしょう。
頑張って生きているのに、なぜ、辛いことの方が多かったりするのでしょう。

それは、おそらく、
家族の中にいると、

・沢山の思いやりが、余計なお世話になってしまったり、

・それぞれに、どうしてもこだわりたいものがあったり、

・上手く生きることができないコンプレックスがあったり、

・1人に対する愛情が、他人を傷つけてしまったり、

・頑張り過ぎて疲れてしまったり、

そんなところが、あるからだと思います。

人は、
“乗り越えるための人生を、生かされている”
 ということが、とてもよく伝わってきます。


だからこそ、
どこか拠り所を持ってしまう人の弱さと、
大切にしたいものの、ありがたみが見えてきます。

それは、
老父(元医師)にしてみれば、棚に並べた薬瓶であったり、
老母にしてみれば、小さなパチンコ玉。

そして最大の愛を注げるものは、
小さな子供にしてみれば、父であり母、
子を持った親にしてみれば、息子であり、娘です。

この映画は、
生きていく上での普遍性、
ぎこちなさ、煩わしさ、可笑しさ、悲しさを描きながら、
そこに、ほんのり見えてくる、家族の優しさを際立たせた作品です。

しかし、その優しさは、
やがて大きな家族愛となり、最後、見る側にどっと押し寄せてきます。

この作品での、
ありふれた会話は、大きな言霊を発し、
底知れぬ奥行き感を醸し出しています。

家族を、そして人生を凝縮した、まさに名作だと思います。

詳細評価

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