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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
2008年3月15日公開

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

1902008年3月15日公開

yab********

4.0

勇気がなかったんだ

 世界革命戦争? 共産主義化?その意識がないなら自分を総括しろ?  ここまでくるとただ唖然とするのみ。  頭でっかちで、共産主義かぶれで、およそ運動が苦手な男女が、軍事訓練しようと山に篭る。  が、自分たちがやっていることが、結局はままごとにすぎないことを無意識に感じとってしまう。  それを認めることが、すなわち自己の全面否定につながることに焦り、パニックになっていく。  彼らの心には、底なしのコンプレックスがはびこっていた。  単純に勉強ばかりして、人間関係に不器用で、心身とも鍛えてこなかったということに。  そのコンプレックスが、榛名山のアジトでの集団殺人として噴出していく。  およそ世界革命戦争とか共産主義化からは程遠い、日常の些細な妬みが総括に通じる。  自分よりかわいいから。自分よりいい服着てるから。温泉につかっていたから・・・。  自分の弱さやコンプレックスを認めることに勇気を持てず、自己を顕示し、人を貶める。  連合赤軍のリーダーと言われた若者たちの、およそ人としてその片隅にもおけない愚行。  その内なる連合赤軍を暴き出した本作品は、今までの連合赤軍モノのはるかに上をいっている。  永田洋子に辱めを受けた、坂井真紀演じる遠山美枝子。  その変わり果てた顔を見れば、彼らの革命戦争とやらが、とても個人的で内向的で閉塞的な出来事に過ぎないことが明るみになる。  後戻りしようにも後戻りできない。  後戻りすれば自分がただの取るに足らないつまらない人間であることが剥き出しになる。  永田洋子も森恒夫もそれを怖れていた。  あさま山荘に立てこんだ連合赤軍のひとりはこう叫んだ。  「(僕たちには)勇気がなかったんだ」。  自分という人間を認める勇気がない人間は、自分のことしか関心がない。自分がかわいくてしょうがない。  だから、他人を認めることができない。他人に対する思いやりが完全にスポイルされる。  自分の世界観にぐるぐる巻きにされ、人間と人間との触れ合いを忘れてしまっては、その先には絶望と虚無しかない。  彼の叫びが、僕にはそう聞こえた。

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