2007年12月22日公開

ペルセポリス

PERSEPOLIS

952007年12月22日公開
ペルセポリス
3.8

/ 106

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26%
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作品情報上映スケジュールレビュー

作品レビュー(75件)


  • dkf********

    4.0

    アニメを観ない人でも観れる高い完成度

    形態こそ純然としたアニメ映画だが、内容は80年代のイラン近代史をテーマにしたバリバリ硬派な政治ドラマ。それと同時にこの激動の時代に青春を過ごした主人公マルジの成長譚でもあるのだが、このストーリーがなかなかに興味深い。自分はアニメは全く観ない(宮崎アニメも鬼滅も縁がない)のだが、本作においてはアニメ映画を観たという感覚があまりなく、これがアニメーションなのは見せ方の手法にすぎないと実感した。実のところ、これが実写だったらこんなに飽きることなく見ていられなかったかもしれない。 写実でなくヘタウマ系の画風なところも大人向きで味わい深く、カトリーヌ・ドヌーヴらが見事なアテレコでキャラクターに魂を吹き込み、マルジの視点から激動のイラン近代史がスッと腹に落ちて来た。やっぱり漫画やアニメの力は偉大だ。 それでも一般受けするような作品ではないし、他人に薦めたりはしないが、間違いなく映画として秀作。この★4つは通俗性ではなく、完成度の高さへの評価だ。

  • m_l********

    5.0

    ネタバレ今さらながら、キャッチコピーがひどい

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • cot********

    3.0

    主人公はなんで北朝鮮に行かないの

    ユーモアたっぷりに描いているせいか、はたまた主人公の強烈なキャラクターのせいか。ウィーンで「イラン人」として何かと冷遇される主人公だけど、東洋人の自分には彼女自身が「タチの悪いヨーロッパ女」にしか見えなかった。 あとお婆ちゃんが誰かさんのタバコと健康問題を、国家問題をブチ込みながら「関係ない」と言ってたような気がするが、そうまでしてタバコ吸い続けたいのかな・・・と思った。 一方でイラン人を取り巻く諸問題を提起したのは評価したい。離婚すると居場所がなくなるんですねえ。スカーフちゃんと被らないだけで、見知らぬオッサンからセクハラ・パワハラ受けちゃうんですね。それから異様に毒づくが、温かみも感じるお婆ちゃんも良かったと思う。 ただイランを脱出した主人公が、オーストリアだの、おフランスだの。資本主義国にばかり向かってるのがなんだかよく分からない。あれだけマルクスだなんだ言ってるんだから、キューバや北朝鮮にでも向かったら、話の流れとして筋は通ってると思うけど。やっぱり資本主義国でエンジョイしたいのかな? 重要な問題提起が数々ある作品なのですけど、主人公が強烈すぎて、私にはそちらが入ってきにくかった・・・・・。

  • agu********

    4.0

    アニメだが内容はヘビー。

    イランからフランスに留学したイラン人の女性の話。 祖国では紛争によって治安が悪化する中、親の計らいで 自分だけフランスという民主主義の国で留学することに 罪悪感と物足りなさを感じるという何ともリアルな話。 また、人種が違うとどうしても起こってしまう差別問題に 苦しみながらも何とか生活していかなければならないという辛さ。 とにかくこに映画にはアニメながらリアルな問題が沢山 詰まっていて非常に楽しめる作品である。

  • mya********

    3.0

    ネタバレ昔はもっと自由だったんだ…

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • bun********

    3.0

    ヒジャブに隠されたアイアン・メイデン

    『ぺルセポリス』は、イランのファール地方にある 世界遺産に登録されている遺跡である。 「ペルシャの街」と「街を破壊する」と言う意味を 掛け合わせたものが名前の由来であるように、 破壊されて廃虚になった後に名付けられたものとされている。 本作は、イランをペルセポリスに譬えて、 イラン・イスラーム革命、イラン・イラク戦争と 1970年から1990年代の混乱するイランの近代史を、 フランス在住のイラン人女流作家マルジャン・サトラピが、 自身の体験を基にして描いた同名グラフィック・ノベルを 映画化した作品である。 テヘランで育ったマルジャン自身の、 少女時代からの体験を基にした自伝的作品なので、 革命後のシャリーア(イスラーム法)による 女性に対する人権問題がメインになっているが、 主人公の反抗する姿がユーモラスに描かれており、 さらにアニメなので、現実がオブラードされて、 政治や宗教の問題を扱ってはいるが、暗さがなく、 誰が観ても分かりやすい作品に仕上がっている。 (ここからネタバレあり) 『恐れが人に良心を失わせる。              恐れが人を卑怯にもさせる。』 ラストシーンで、祖母の教えを胸に秘めたマルジャンは、 混乱するイランを脱出して、フランスに旅立つ。 空港に到着して拾ったタクシーの運転手に、 「何処から来たのか」と訪ねられ、 一言『イラン』と力強く答える。 そこには、ウィーンに留学していた時に、 イラン人であるがために差別を受け、 行き場を失くして隠遁していた彼女の姿は、何処にも無かった。 真の愛国心とか人間の尊厳とは何かを考えさせてくれる、 平和ボケした日本人に必見の映画。(65点)

  • victor

    5.0

    ルーツを見失わず生きていく事の大切さ。

    日本で「松本人志、カンヌへ」と連日報道されていた去年の春、カンヌでの上映作品リストの中にこの映画「ペルセポリス」の名前とマルジャン・サトラビの名前を見つけた時から、ずーっとずーっと私の中では観たい映画ベスト3でしたが、ようやく観る事が出来て本当によかったです。 それだけ原作の漫画の印象が記憶として心に残っているのですが、映画となってもやはり素晴らしさは漫画と同様か、もしくはそれ以上でした。 ★7つです。 ちなみに劇中に「アイ・オブ・ザ・タイガー」が使われていたので、僭越ながらロッキー作品の★で例えますと、ロッキー、ロッキー2は★5つ中の★8つ(=人生最高得点)。 私的には、それくらいに大満足の作品でした。 人間としての尊厳、女性としての尊厳…、片や男子としての哀しい性もあるでしょう、イラン人としての尊厳、家族の絆…様々な描写がありますが、彼女の半生、真実性の描き方は心に染み入るモノが多過ぎて、とてつもなく感銘を受けます。 人それぞれ捉え方はあるでしょうから、多くの鑑賞された方の意見はそれぞれだとは思いますが、私はマルジさんが伝えるモノが、ただの裕福なインテリの家庭に生まれたわがまま娘の自己主張だとは到底思えません。 彼女の思考の軸は頑強で、祖母や父、母達から教えられた「人として大切な事」を自分が出来る事、すべき事に置き換えて人間として成長し、社会で実践してみせたのです。 原作でも深く心に刻みましたが、お父さんの「自分が何者でどこから来たのか決して忘れるな」という言葉がとても重いです。 彼女は「インテリ家庭に生まれ育った事の理由」を悩み抜いて見い出し、国外での生活を通じて得た「自分が帰属すべきモノに対して背負う使命」を忠実に果たしたのだと思います。 私は平凡な日本人で決して裕福ではありませんが、普通に三度の飯を食べて、寝て、起きる事が出来ますから、その点ではマルジさんの生まれ育った環境とそんなには大きな違いはありません。 決定的に違う点は、私だってマルジさんと同様に周囲の大切な人達から幾度となく有り難い言葉を頂いて生きてきているはずなのに、自分の心の中にそれらの大切なメッセージがほとんど残っていないし、忘れないでいたとしてもほとんどが人生に活かされていない点です。 人生の指標に成り得た貴重な教えの数々を日々忘れ、ただ日々をやり過ごすように生きている…全く情けない限りです。 イランの国情の惨憺たるモノや男がつまらないくせに威張り散らしている社会が故に女子が被る被害を伝え、イランの情報を世界に向けて発信している事がこの映画の素晴らしい点である事はわかっていますが、マルジさんの人間としての成長とその成長を支え、成長を促したモノに目を向ければ、それはイランだけに存在する特殊な事情ではなく、世界中の人間すべてが持ち得るモノである事に気付きます。 それを大切に心に刻み、日々を過ごせば、人の手によって作られたような世の中の不幸であれば、根絶出来るような気が沸き起こってきます。 作風はティーンの時分に恥ずかしげもなく、「PUNK‘S NOT DEAD」のシャツに袖を通した事のある大人なら感慨深いモノがあり、自分と闘いながら社会に立ち向かい、アイデンティティを確立していく姿を悲惨な現実とハイセンスなユーモアを織り交ぜて描く今作、少しでも多くの平和な世の中に生きる方に観て欲しいものです。 今もそんなヤツ居るのかどうか知りませんが、パンク御三家やハードコア御三家、ちょっと遅れてグランジ御三家とかのシャツを着て、ツバを吐き散らしている若者が居るならば、是非見せたい映画です。

  • bla********

    5.0

    久しぶりに満足した映画

    イランの激動の70年代後半から90年代を淡々と描いている。というより主人公マルジャンの生きた時代がそうであったために、自然と描かれているといった方が良いのかもしれない。革命や戦争といったことにもいかにもな民族の愛国的な誇張など特に感じられず、ただただそこには現実がある。そういった激動の時代の中でただ普通に生きているマルジャンの様に、作品全体を通してよりリアルな印象を覚える。事実とはえてしてそういったものだろう。 ただ多少の知識があった方がよりこの映画の理解は深くなる。例えばマルクス主義の理解とは言わないまでも、コミュニスト、プロレタリアートぐらいの言葉の意味ぐらいは知っていないと登場人物の一人アヌーシュおじさんのことだけでさえ本質的には理解できないだろう。 しかしそういったことを知らなくとも、客観的且つ相対的に物事を見る目を持っているなら誰でも素敵な映画として見れると思います。 他のレビューで、バカな親とわがままなお嬢さん、あるいは自分勝手なお嬢さんの映画などといって批判しているものを見かけますが本質を理解しておらずあさはかとしか思えない、そういう人は単純明快なハリウッド超大作でも見て笑っていればいい。 見るべき人が見ればまちがいなく名画であると思う。

  • non********

    5.0

    すっと観たかったアニメーション

    過酷な環境の中で生きていくイラン人女性、この物語の作者「マルジ」の半生。 独特のアニメーションで描かれているので、悲劇的なことは緩和されているかもしれない。が、反対に、観ている私たちに「アニメではない悲惨な現実」への想像を委ねられているような。辛さを表現するのは恐ろしい映像ではなく、柔らかいアニメーションでも可能なのかもしれない。実際、戦闘映像では非常に痛んだ。 政治的な問題が次から次へマルジを襲う。普通に(?)生きることが許されない現実。 が、果たして日本に住む私などには関係がない状況でだろうか!? いや、きっと、誰しもがマルジと重なり、共感する部分があるのではないか? 人間が体験する、幼少期、青春、孤独、愛、挫折、夢、苦悩、逆境、病気、希望・・ 毎朝ジャスミンの葉を摘み下着にしのばせている、よい香りのする穏やかな祖母が、留学するマルジに語る。 「お説教は嫌いだけど一つだけ忠告するよ、これからたくさんの違いに出会うだろう、そいつらに傷つけられても、相手が愚かだからと思えばいい、そうすれば仕返しなんかせずに済む、この世で恨みや復讐ほど最悪なものはない、いつも毅然として、公明正大でいるんだよ」 体中に染み入るシーン、言葉であった。

  • ごぉ

    3.0

    イラン統制下。ひとりの少女の誇り。

    シャー専制。 この言葉だけを聞けばガンダムを想像しちゃうけど(当然、違う)。 どれだけ言論や自由を制限されようと。 どれだけヴェールで頭髪を隠すことを強要されようと。 踏みにじられるようなつらい思いをしながらも、 「アンタたちの方が間違ってる」 そう、云い続ける意思の強さ。 亡命したヨーロッパで、 「ワタシはイラン人だ」 胸を張って主張する決意。 その道を選ぶのは険しいよ。 偽って生きる方が楽。 他の人に同調した方が、目立たない。 心の奥底に、 「舐められないように」「負けないように」 負けん気を秘めて。 常に気を張って生きていく覚悟。 誇りだけは捨てることができず・・・ どの時代にも。 どの場所にも。 歴史に翻弄されながらも、誇りを守り抜こうするひとりの少女の物語。 ひとりの少女を通して見るからこそ、歴史はくっきり浮き彫りになるのです。 Rakuten rental DVD

  • kyu********

    5.0

    名作です

    フランス映画でアニメーションでこの絵なので シュールとかポップとかクールなものを多少期待しつつもそれだけでは面白かったで終わりになってしまうところなのでどうなのかな~と思って観てきましたが、そんなことはなくいい意味裏切られてかなり良かった! そんな上辺のことよりもイランのまさに進行している大変革の中にいる主人公の日常。 考えさせられることが多く途中アニメーションということは忘れて見てましたね。 人間というものは環境によって因るところは違うけど、根っこのところはそんなに違わないんだな~と思いました。 見終わった後、友達とイランの政治制度やアラブ諸国との違いなどなど色々と議論してしまいました。 ちなみにレビューなんてしたこともないしする気はなかったんですが他のレビューで この映画しか評価してないヤツばかりとか胡散臭いとか不正だとかあったので、この映画理解できないのかな~と思ってついつい反論の意味で初レビューを…。 あとアニメーションだからといって高をくくっていると子供はあんまり内容はわからんかもですよ。

  • pan********

    5.0

    イラン少女の半生記と勘違いしてはいけない

    オーソドックスでありながら斬新さいっぱい。 すてきなオープニング・クレジットから驚かされるだろう。 この作品を、マジルという名のイランの少女の半生記と勘違いしてはいけない。 ロックとお洒落が好きで、自由気ままな生活をおくっている金持ちの少女が、 都合が悪くなると留学したり引っ越したり、反抗的で自分勝手な人生の中で 時には反省もする。親はインテリではあるが、単なる親バカでしかない。 そう受けとった人にとっては、何を言っているのかわからない退屈なアニメだろう。 そうではないのだ。 マジルは、あくまでも語り部。狂言回しといっても良い。 いかにしてパーレビーが欧米の力を背景にして政権を奪取したか。 その腐敗政治の陰で、どれだけ多くの人々が辛酸をなめたのか。 そこでおこなわれた拷問が、実はCIAの伝授したものであること。 そんな体制を打ち倒すべく立ちあがった民衆は、やがてイスラム革命に吸収されていく。 台頭したイスラム政権によって、さらに多くの人の自由が奪われたこと。 イスラム革命の波及を怖れた欧米はイラクをたきつけ、イラン・イラク戦争に。 両国で何百万もの命が失われたが、映画ははっきり「無駄な死」と呼んでいる。 より良き社会をめざして倒れていった人たちがいたこと、今もいること、 そんな歴史と社会を、マジルの目を通して見せ、口を通して語らせているのだ。 私たち日本人にとって、イランもアラブ諸国も、およそ遠い存在でしかない。 学校でも習わないだろうし、そもそも興味だって、ふつうの人にはないだろう。 マルクス、バクーニン、フロイトらの著作を読む場面があるが、読んだことがない、 名前も聞いたことのない人にとっては、理解しにくいところだ。 だから、この映画を観たくなる人は、かなりの知性派か、あるいは異文化を 少しでも知ろうという気概のある人にちがいない。 もちろん、知ったところで役に立つことはほとんどないだろうし、 知らなくても何ら困らないことではある。 マジルの思考や行動、多少なりともイスラム社会を見てきた私には、ほんの少し だけわかる。しかし、ほんの少しだけなのだ。 私は男だから、女性の負っている不利益を、女性と同じだけ理解しているわけではない。 どんな音楽を聴こうと、どんな服装をしようと許される国に住んでいる私たちは、 自由の意味をイラクに住むマジルと同じようには感じていないだろう。 留学したマジルの立場は、日本国籍を有して日本に住む私たちにはピンと来ないだろう。 在日や外国人労働者に対する態度を見れば、それがよくわかる。 そして、自由を謳歌するこの社会と抑圧の世界が紙一重であること、いとも簡単に 変わってしまうこと。 イラクの可哀想な少女の物語ではなく、「あなたたちの問題」と言われているようにも 受け取れるのだ。戦争経験世代ならきっと理解してくれるだろう。 「いつも毅然と公明正大でいるんだよ」 おばあちゃんのう言葉は、ひとつひとつが真理を突いている。

  • ねみねみ

    4.0

    胸に咲く花を忘れてはいけない

    物語は1979年のイラン革命から始まり、1980年に勃発した イラン・イラク戦争という激動の時代を生きながら、 大人の女性へと成長した少女マルジの半生を描いた作品です。 現在はパリ在住のマルジャン・サトラピ監督が自身の半生を綴った 自伝的グラフィックノベル『ペルセポリス』を映画化したもの。 1970年から1990年代をイランとウィーンで過ごしたマルジは色んな事を経験します。 イランという不安定な情勢の国で育ち、ウィーンの異国文化の中で 時には悩み苦しみながらも、決して自分を見失わずに生き抜いてきた。 大切な人を失くし、恋愛も病気も経験し、本当の幸せとは何か、人にとっての痛みとは何か、 真のアイデンティティとは?ということを常にリアルに考えて生きてきた。 私がこれを観て感じたのは、イランの女性も世界中の女性達となんら変わりがないということでした。 多感な年頃にベールで髪を隠すことを強制され、女性の言い分など一切通らない不条理な現実にも 女性らしさや、強さ、逞しさ、個性、反抗心、生き方、希望や誇りというものをマルジは失ってはいなかった! そこが一番嬉しかった部分で、一番共感できたところでもありました。 そしてこれからの時代、こういう強くて逞しいイスラムの女性が どんどん世界に羽ばたいて活躍すれば、きっと何かが変わるんだろうなぁと考えながら・・・。 全体的に暗めではありますが、アニメーションという手法のお陰で 残酷で重くなりがちなお話しもわりと優しく観れたことや イランという国が身近に感じられたことも良かったと思います。 クスッと笑えるシーンもあり、ユーモアたっぷりな絵もとても可愛かったです。 エンドロールにはジャスミンの花びらがヒラヒラと舞い降りてきてちょっぴり切なかった。 『いつも毅然と公明正大でいるんだよ』と言っていたマルジのおばあちゃん。 下着の胸の部分にはいつもジャスミンの花びらが入っていて良い香りがするおばあちゃん。 いつも庭でミヤコワスレの花を手入れしていた、私のおばあちゃんの姿と重なって涙が溢れました。 わりと短いエンドロールに涙が乾かないまま映画館を後にしたのでした。 『全世界の女性の胸に可憐な花が咲きますように』 とても素敵で印象的なマルジャン・サトラピ監督の言葉です。

  • ********

    4.0

    一族の矜持

    2007年。フランス映画。主人公の女性が90年代にフランスに来るところで終っているのだから、彼女が作家となって綴り、アニメ化した物語ということになるのでしょう。イラン革命以降の知られざるイランの内情を一人の少女の成長過程に合わせてつづる。この少女がブルース・リーを愛し、パンクに命をかけるってのが面白い。 国王の時代も革命後の宗教的な時代も、ともに弾圧されてしまう「自由」という普遍的なテーマ。自分を預言者と思い込む少女時代からマスクスを読みあさる思春期まで、自らの「自由」とともに世界の「自由」も考える賢い女性。おじいちゃんが王族のひとりであり、叔父さんの一人は共産主義者として殺されるなど政治エリート一族でもあるから、「常に公明正大に生きなさい」というおばあちゃんの教訓は、そこらのご隠居さんのたわごとではなく、高貴なものの義務=ノブレス・オブリージュの匂いがします。 評価の高いアニメですが「知られざるイラン」ということが大きい(イラン・イラク戦争では、開明的なイラクに対して狂信的なイランという図式が流布していた。湾岸戦争とイラク戦争以後の現在ではちょっと想像しにくい)。アニメとしては驚くようなことはなかった。影絵的で動きも少ないし。それでもイスラムの女性の衣装やイランの暗ーい空気がモノクロで上手に表現されています。あ、途中で日本映画「ゴジラ」のシーンがありますけど、アメリカ文化も結構入っていたイランですが、特に日本との友好の歴史は長いのです。細かいけど、そーいう部分も含めて歴史教材にもってこいの映画です。

  • pin********

    5.0

    アニメーションの美しさを再認識。

    僕たちにとって未知の世界である、イスラム圏イランの内幕を知ることのできる映画、というよりもモノトーンのアニメーションに改めて美しさを感じる作品と言った方がよいでしょう。 作品の中心はイランという国に住む、等身大の若者の自画像です。 漫画家でもある、作者自身を描いた作品のようです。 僕にとってイランという国は、1980年代のイラン・イスラム革命以降認識されるようになった国。 だから、それまでの親米的なシャーによる統治のイランというのはイメージできません。 たぶん、僕だけでなく、同じ親米国家の日本国民としては、革命によって反米国家となったイランというのは、かつてブッシュが言っていたように「悪の枢軸」という認識の方が強いのではないでしょうか。 むろん、北朝鮮の脅威の方が身近な僕たち東アジアの住民にとっては、イランを脅威と感じるほどではなかったのですが、それでも、親しみのもてない、イスラム原理主義によるコチコチの宗教独裁国家というイメージが強いでしょう。 宗教独裁というものは、国家神道による宗教独裁に近い国家体制を経験した日本人からは、あまり好ましくないイメージを持たれるのではないでしょうか。 しかしながら、かの国がシャーを倒して、宗教国家を作ったのにはそれなりの理由があるのでしょう。 そのあたりの事情がこの作品の中で語られています。 なんと、ホメイニによる宗教革命の前にイランを治めていたシャーというのは、正統的な王族ではなく、クーデターで皇帝を名乗っていたと言うのです。 しかも、彼の背後にはまたしても欧米の陰。 『アラビアのロレンス』を思い出しました。 アラビアのロレンスの時代からのイランの歴史をもう一度学びなおして見ようかという気になりました。 シャーは近代化のために外に向かっては親欧米の立場をとり、国内では弾圧を繰り広げていたというわけで、シャーの独裁時代の人々の苦しみも描かれています。 そうした不満をたぶんうまくまとめあげたのがホメイニらの宗教革命かだったのだろう。 そして、そうした不満があったからこそ、宗教革命という近現代史の中では極めて珍しい、(少なくとも、僕たち日本人には理解しがたい)宗教革命などと言う物が成功したのでしょう。 もちろんその背後には、冷戦下、アメリカと覇権を争うソ連の思惑もあったのでしょう。 この作品では、イラン・イスラム革命前夜のソ連の影響も語られています。 やっとのことで達成されたイスラム国家の暗黒性にもがっかりさせられる。 女性は抑圧され、娯楽も圧殺されてしまい、人が人らしく生きることもできなくなってきます。 なぜ国民のための政府が作られなかったのでしょうか、何のためにシャーを倒したのでしょうか、革命とは常に裏切られる物なのなのでしょうか。 こうしたイランの歴史的事情にも大きく興味を引かれるが、なによりも、心を打つのは、そんな過酷な状況の中でも人は人らしく生きようとしているということです。 そんなことは当たり前だ、戦時下の日本だってそうだったではないかと言われるかもしれません。 しかし、まったく異質な世界と思われがちなイスラム国家イランです。 そこに住む人が僕たちと全く同じことを考えているなんてことが、驚きなのです。 漫画家らしく、このアニメーションのに中にも、何本かの映画が取り上げられていますが、その娯楽性に、この作品に描かれている人々の大衆性が見て取れます。 ブルース・リーに『ゴジラ』に『ターミネーター』、娯楽として一級のものばかり。 そう、そういう物を欲しているという点で僕らは同じ映画ファンなのです。 さまざまな困難の中でも、優しさと人間らしさを大切にし、いつも肌着にハーブを入れていたおばあさんの生き方に感動します。 描かれている人間のすばらしさとともに、モノトーンの絵の美しさが胸を打ちます。 色彩はもとより、中間色も排して、くっきりとした、まるで切り絵のような画面は、潔いほどにきっぱりとしており、主人公の生き方を象徴しているようでもあります。 アニメーションの命が動きとともに、絵の美しさでもあることを感じさせてくれます。

  • ell********

    4.0

    ネタバレモノクロなのに新しい、その画風に魅かれた

    このレビューにはネタバレが含まれています。
  • tom

    4.0

    イランのフランスのアニメのシネマ。

    亡命イラン人の手による、イランを舞台にした、フランス製アニメーション映画。 イランを「なんとなく怖い」と思っていた、私のような世界情勢に疎い人間に。 明るく楽しく、時に哀しく、イランって「ほんとに怖い」と教えてくれます。 あんまし救われない、鬱々とした物語ではありますが。 随所にユーモアが散りばめられてあるので、面白く観れました。 とにかく。 イランには“自由”が無い、ってお話。 民衆はそんななかでも、なんとかかんとかやってるけど。 なんとかいかない時は、残念だけど、殺されちゃうってお話。 そういうことが、ユーモアあふれるアニメなので、明るく楽しく、時に哀しく描かれている。 そんな。 ちょっと変わったアニメでした。 不幸すぎるわけではないのだけど。 だから、とくにこれって泣き所もないんだけれど。 その割に、ちょっと涙ぐんでしまいました。 相変わらず想うのは。 あ~~、日本に居るオレには何も出来やしない。 ということと。 あ~~、日本に生まれて良かったヨ。 ということと。 あ~~、日本だって案外おんなじだヨ。 と思いつつも。 あ~~、でも、日本人で良かったヨ。 とくりかえし。 あ~~、なんてひどいっ!!! といきどおり。 あ~~、でも、日本に居るオレは何もしやしないんだ。 そんでもって。 「知らないよりか、知ってるほうが、いっか。」 と、想うのでした。 そして、結論は、ありふれているのです。 「“自由”は、ほんと、とうとい。」ということ。 相変わらず、ありふれていることが、とうといのです。 と、想うのでした。

  • nya********

    4.0

    イラン知識、上流階層の恵まれた女性の場合

    たぶん、朝日ベストテンなら選ばれるような作品。 今(といっても舞台は90年代ぐらいまでか)を生きるイラン女性の考え方や生き方が見られて興味深かった。 これまでもイスラム社会の宗教や社会規範のくびきに苦しめられ、何とか逃れ自由になりたいともがく女性を描いた作品はあった。 この作品は、アニメという表現手段で笑いとポップさとを取り混ぜて若い世代にも、なじめるようになっていたと思う。 アニメの絵柄も普遍性があり、どの国、地域の人でも違和感がないのでは。 彼女は、庶民ではなく、知識階級、上流階層に属するわりと自由な思想の家庭で育っており、海外に脱出できるだけの経済的余裕があったようで、現在は、ヨーロッパ在住とか。 イスラム社会の人々の解放のためには、こういった恵まれた階層に属する人たちが、今後もっと何をかなすべきなんだろうな。

  • yas********

    2.0

    字幕が~

    予告を見て興味を持ち見に行ったのですが、モノクロの画面に白い字幕で非常に見辛かったです。英語ならまだ多少~と思うのですが、フランス語なのでわからない部分もかなり多く途中で失敗したなと思いました。 戦時下で大変な国にすんでいる娘なので何度も留学させてもらえる彼女の家では何を仕事にしているのだろうか~などと言う事が気になってしまいました。まわりではかなり大変な思いをしている人も多いだろうに自由を謳歌出来る身分にいる彼女って~それでこれから何をするんですか?

  • gac********

    5.0

    ネタバレ心の歴史

    このレビューにはネタバレが含まれています。
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