4.0点
物語は1979年のイラン革命から始まり、1980年に勃発した イラン・イラク戦争という激動の時代を生きながら、 大人の女性へと成長した少女マルジの半生を描いた作品です。 現在はパリ在住のマルジャン・サトラピ監督が自身の半生を綴った 自伝的グラフィックノベル『ペルセポリス』を映画化したもの。 1970年から1990年代をイランとウィーンで過ごしたマルジは色んな事を経験します。 イランという不安定な情勢の国で育ち、ウィーンの異国文化の中で 時には悩み苦しみながらも、決して自分を見失わずに生き抜いてきた。 大切な人を失くし、恋愛も病気も経験し、本当の幸せとは何か、人にとっての痛みとは何か、 真のアイデンティティとは?ということを常にリアルに考えて生きてきた。 私がこれを観て感じたのは、イランの女性も世界中の女性達となんら変わりがないということでした。 多感な年頃にベールで髪を隠すことを強制され、女性の言い分など一切通らない不条理な現実にも 女性らしさや、強さ、逞しさ、個性、反抗心、生き方、希望や誇りというものをマルジは失ってはいなかった! そこが一番嬉しかった部分で、一番共感できたところでもありました。 そしてこれからの時代、こういう強くて逞しいイスラムの女性が どんどん世界に羽ばたいて活躍すれば、きっと何かが変わるんだろうなぁと考えながら・・・。 全体的に暗めではありますが、アニメーションという手法のお陰で 残酷で重くなりがちなお話しもわりと優しく観れたことや イランという国が身近に感じられたことも良かったと思います。 クスッと笑えるシーンもあり、ユーモアたっぷりな絵もとても可愛かったです。 エンドロールにはジャスミンの花びらがヒラヒラと舞い降りてきてちょっぴり切なかった。 『いつも毅然と公明正大でいるんだよ』と言っていたマルジのおばあちゃん。 下着の胸の部分にはいつもジャスミンの花びらが入っていて良い香りがするおばあちゃん。 いつも庭でミヤコワスレの花を手入れしていた、私のおばあちゃんの姿と重なって涙が溢れました。 わりと短いエンドロールに涙が乾かないまま映画館を後にしたのでした。 『全世界の女性の胸に可憐な花が咲きますように』 とても素敵で印象的なマルジャン・サトラピ監督の言葉です。