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明日への遺言 (2007)

監督
小泉堯史
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3.74 / 評価:333件

解説

第二次世界大戦終了後、B級戦犯裁判をたった一人で戦い抜いた岡田資(たすく)中将の誇り高き生涯を描く感動作。戦争文学の第一人者である大岡昇平の「ながい旅」を原作に、『博士の愛した数式』の小泉堯史監督が構想15年をかけて映画化。敗戦直後の混乱の中で自身の責任と信念を貫き通した岡田中将を、ベテラン藤田まことが熱演する。軍人の夫を愛情深く見守る妻に富司純子がふんするほか、西村雅彦、蒼井優ら多彩な顔ぶれが共演し、ナレーションを竹野内豊が担当していることでも話題。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

第二次世界大戦終了後、戦争末期に名古屋を空爆した米軍捕虜を処刑した責任を問われ、B級戦犯として裁判にかけられた岡田資中将(藤田まこと)。裁判で彼は「一般民衆への無差別爆撃の責任は誰が負うのか、命令により実行した部下の責任は誰が負うべきなのか」と堂々と信念を主張し、戦勝国アメリカによる法廷を戦い抜く。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C) 2007「明日への遺言」製作委員会
(C) 2007「明日への遺言」製作委員会

「明日への遺言」偉人の超人性ではなく、気高い精神を描いた秀作ドラマ

 極東軍事裁判でB級戦犯とされた軍人の法廷闘争――そんな表現で括ってしまえば、一方的に日本を裁いた戦勝国の不正を告発する作品のように思えてしまう。しかし本作は、政治や民族を超え、毅然とした人間の品格を真摯に描いた静かなる秀作ドラマだ。

 岡田中将とその部下は、無差別攻撃を行った米軍戦闘機搭乗員を処刑した罪に問われた。法で認められた「報復」であると証言すれば罪は軽減されただろうが、大量殺戮者の「処罰」は正当であると主張し、責任はすべて自分にあるという立場を岡田は貫く。感傷的な音楽と感情的なナレーションが、抑制の効いた演技との間に温度差を感じさせるのは演出の隙と言わざるを得ないが、理路整然と証言する岡田を小泉監督は殊更に謳い上げない。メディアは小泉堯史を師・黒澤明の継承という文脈で語りたがる。師弟関係というモチーフや緊張感みなぎるマルチカム撮影は、確かに黒澤映画を彷彿とさせる。だが、ギラついた全盛期の黒澤とは異なり、小泉は“鞘に収まった刀”のようだ。偉人を描いても、その超人性ではなく、気高い精神にこそにじり寄る。

 法で白黒をつけるという裁判というシステムも、岡田の前ではプリミティブに思える。対立軸で捉える価値観を、彼の高潔な魂が融かすのだ。戦時下を冷静に捉えた明晰な言葉と、次世代の平和のために命を投げ出す姿は、「真善美」が失われた時代を生きる我々の無様な在りようを見つめ直させる。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2008年2月28日 更新

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