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ヒトラーの贋札
2008年1月19日公開

ヒトラーの贋札

DIE FALSCHER/THE COUNTERFEITER

962008年1月19日公開

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5.0

ベルンハルト作戦

ヒトラーの贋札(にせさつ)。いけない、どうしても「にせふだ」と読んでしまう……(笑) ナチスのユダヤ人を使った経済攻撃作戦の内幕を披露する物語。これ実話らしいです。あらすじを読むと、正義か生存かの極限の葛藤を描いているように思われがちの映画ですが、実はそこまででもありません。 ユダヤ人の強制収容所における悲惨な姿を軸に、ある種競技的な贋造作業と、ナチスの恐怖のもとで悪事に手を染めることのやるせなさを対比して描いていて、どうにもならない葛藤は描かれていない、というか、サボタージュをして贋造を止めようとするブルガーと、恐怖のために贋造に励むその他のひとびと、そして両者を繋ぎ合わせる役目をもった贋造プロ・ソロヴィッツがそれぞれ競合する概念を体現している、といったほうが正確で、そこにどうにもならないほどの葛藤を表現しようという意図は見当たらない。 ソロヴィッツと、ブルガーと、その他のひとびとが存在していることで、反発作用がだいぶ緩和されているからだ。これが個人の頭の中での出来事だったなら、それはもう恐ろしい葛藤となっただろう…… この映画はユダヤ人収容所の中でも特別な囚人たち、柔らかいベッドときちんとした身なりを与えられた作業員たちが、その代償に悪事と生存の葛藤の中へ放り込まれていくすがたを、その真実を描写しようとしたものである。 われわれはその葛藤をほとんど知ることがない。われわれはそれを外から見ているからである。だからだいぶマイルドな映画になっていると言っていいだろう。 演出面では大変よい。テンポがいいし、演技もいい。音楽もいい。悲惨さを緩和し、ドキュメンタリーチックな柔らかさがある。強烈さがないぶん、評価を下げる人もいるかもしれないが、ぼくは下げない。見やすくっていい映画だからだ。 白・青・黒、といった色調もいい。こういう目立たないところも気に入った。

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