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ぜんぶ、フィデルのせい
2008年1月19日公開

ぜんぶ、フィデルのせい

LA FAUTE A FIDEL!

992008年1月19日公開

Kurosawapapa

4.0

少女目線で社会を描く

なんとも不思議な映画でした。 9歳の女の子が社会情勢の急激な変化の波にのまれていきます。 原作では、8歳から12歳に成長するまでの物語だそうですが、 それにしても、そんな大変な情況に対応していく主人公のアンナは、 かなり“おませさん”です。 この作品は、子供が革新的で大人は保守的という定石を覆し、保守的な子供と左翼活動家になってしまった両親との対比によって、政治的、社会的なテーマを描き出しています。 1968年の五月革命、フランコ独裁政権のスペイン、1970年のアジェンデ大統領の就任によるチリ社会主義政権成立などを背景に、アンナは社会的な立場をいろいろと考えさせられます。 また、パリにおけるフランスの反体制(共産主義や社会主義)運動に参加する父親との確執や、 さらには、母親が参加する人工妊娠中絶の権利を求めるフランスのウーマンリブ運動にも関与していきます。 しかし、アンナを演じたニナ・ケルヴェル(8歳)は、そんな難しい立場にも、負けず劣らずの演技を見せてくれました。 一生懸命考える姿は、大人顔負けですし、その大きく深い瞳に吸い込まれそうになります。 彼女の演技は、幼少時のテイタム・オニールを彷彿させる天才ぶりだったと思います。 アンナは子供らしく好奇心一杯に、難問に立ち向かいます。 「キョーサン主義って?」~赤くてヒゲをはやして引っ越しばかりしてる人らしい 「フィデルって?」~フィデル・カストロという悪い人がいるらしい 「ダンケツの精神って?」~みんな同じ行動をとることらしい 可愛いらしさと、笑いを含めながら、、、 いやいや、そんなことを言うと、アンナに失礼です。 アンナは必死です! そしてとても勇敢です。 ・以前の裕福な生活を失っても、 ・大好きな宗教の授業を禁じられても、 ・ミッキーマウスがファシストと言われても、 両親に、共産党員に、学校の先生に、自分の意志を持って質問し、話し合い、立ち向かっていきます。 そして徐々に、大人達の苦しみを知り、先祖の辛い過去を知り、 成長していくアンナがあります。 「元の生活に戻りたい!」と言っていたアンナが、 後半、葛藤しながらも、彼女なりに変化を受け止めようとするところは感動的です。 汚れていない純粋なアンナが学んだこと、、、 それは、見る事や知る事が、自分の孤独や恐怖を救ってくれる重要なモメントだということ、 そして、“協調”と“自由の尊重”だったと思います。 それは、主義や社会を越えた結論です。 社会の裏を知り汚れてしまった大人以上の心を、アンナは宿したのかもしれません。 この作品の主人公が子供でなければならない理由もそんなところにあったのではないでしょうか。 この映画は、子供と政治、子供と思想という難しい関係を、斬新な視点から、そう大きな違和感なく描いています。 アンナのファッションチェックもできますし、可愛らしい仕草や、コロコロと変わるキュートな表情も見逃せません。 ちょっと不思議な作品でしたが、私としてはかなり楽しめましたよ!

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