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ぜんぶ、フィデルのせい
2008年1月19日公開

ぜんぶ、フィデルのせい

LA FAUTE A FIDEL!

992008年1月19日公開

やふたろう

4.0

ノンポリ+刹那主義にはまるで微分積分

難しかった。まず70年代フランスとスペインとチリの背景が上手く頭の中で繋がらない。別にそんなに深く理解しないでもアンナの行動だけを観ていれば感動できる作品なのだけれど、考えすぎたようだ。可愛い女の子が出ていて、わがまま三昧に両親を困らせてしまう話かと思って安易な気持ちで映画館に飛び込んだ。ぜんぶ、題名のせい。 鑑賞後の劇場の雰囲気を見ると、みんな復習が必要な顔で一目散にパンフレットやポスターや劇場に掲示してあるプレスシートに群がっていた。フランスの五月革命はまだしも、フェミニズム、ウーマンリブ運動、コミュニズム、アジェンデ政権・・・実は全然知識がない。チリで“9・11”といえば、アメリカ同時多発テロではなくアジェンデ暗殺をイメージするほどの大事件だったようですね。そんなこと全然知りませんでした。ぜんぶ、川崎先生(※)のせい。(※僕に70年代の世界情勢を教えてくれなかった中学時代の社会科の先生です) これから観る方への忠告ですが、できるだけパンフレットを読んだりプレスシートを読んで、ある程度の歴史的・政治的な事件を勉強してから鑑賞しましょう。そうすればかなり深くこの映画に浸ることが出来ますよ。この作品を配給し宣伝に関わった方々と、文句なく☆5.を与えているレビュアーの方を私は尊敬いたします。大変知的な方々なのでしょうね。すごい。 若手女流でありながら思想的なメッセージを子供を通じて映像に表現しきったこの監督さん、どんな方かと調べたら『Z』を撮りあげたコスタ=ガヴラス監督の愛娘ではないですか。アカデミー最優秀外国映画賞の作品であり、イヴ・モンタンが出ているからというだけで『Z』に挑戦。入れ替わり立ち替わり現れる諜報部員達の裏切りや寝返り(そう、まるで『ブラックブック』のようだ)で、当時中学生の私はブレインクラッシュ。知恵熱で3日寝込んだという曰く付きの作品である。 そして『Z』で思い出すのが、生意気にも中学生の頃に足しげく通った【新宿アートビレッジ】。懐かしい(涙)。新宿駅の現南口、木造の2階建ての小屋をこつこつと上がってたどり着く秘密結社の巣窟のようなミニシアター。16mmの映写機にミニスクリーン。ともすれば現代のホームシアターである。とにかく上映される作品は白黒ばかりで、時には無声映画も掛けられる。『恐怖の報酬』や『南海征服』、『市民ケーン』や『第三の男』の素晴らしさを、ここ新宿アートビレッジで知った。今ではDVD化され500円で買えてしまう作品だらけで、時代の趨勢で名画座が潰れていく。ぜんぶ、著作権のせい。 ということで途中睡眠も取ってしまったほどの映画だったけど、後で復習してみたらアンナちゃんの両親の行動が理解できた。政治的思想や宗教観のみならず、親の転勤や離婚でさえ、子供たちの人生は不可逆的に変えられていく。子供たちの視線に旨く立って難しい題材を描いた良い作品だ、ということに今、気がついた。ぜんぶ、フランソワ坊やのせい。 日本とは縁遠い南米や東欧、アラブ辺りの歴史物・政治物作品を上映する際は、“これでもか”という位に長い時間を取って流し続ける予告編の時間を削って、「サルでもわかる○○情勢」などというような本編に関わるミニガイドを2-3分流して欲しいですね。そんなサービスがあれば素敵な作品を100%味わうことが出来るのに。ぜんぶ、恵比寿ガーデンシネマのせい。

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